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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ミミ村編
22/64

No.020 風呂場のテンプレと意外な展開


"ザバーーー!!"



 そんな音を立て頭からお湯を被っているのは、今作の主人公である、旭ユウだ。ユウがなぜこんなことをしているのかというと、



「一週間以上も身体洗ってないんだろ?(訳:クセーからさっさと身体洗ってこい)」



と、ジルトから言われたため、現在ユウが暫く厄介になる "ゲートルト兄妹" の家にある、湯浴み場にて身体を洗っていたのだ。ちなみに上下水道設備はこの世界に存在しているが、ガルシオ曰く、



「こんな辺境の村に、んな上等のもんはねぇよ。あるとしたら精々、国の中心部かその周辺の豊かな地域ぐらいだな。」



と、苦笑いしながらも、現在の生活の不満はないようであった。実際、魔法である程度のことは出来るし、そもそも水自体が魔法で生成してあるので、本来ならば特別な設備がなくとも、それなりに衛生面では問題がないのだ。


 それでも、魔法の行使は体力も集中力も使うため、大勢の人々が住むような地域では、人工の設備や魔具による施設が必要となってくるのだ。そんな理由からこのミミ村には、魔法や魔具による生活補助がされているが、自動の設備は殆ど存在していないのだ。


 

(しかし国も、そんな辺境の村に自分たちの騎士の一部を送るなんて、この世界の国々は比較的平和なところが多いのか?) 「ハァ...、ハァ...。」



 そんな感想を抱いてユウは、自身が日本にいたときに読んだことのある異世界転生ものの小説を思い出していた。その小説の中では国同士がいがみ合い、そんな状態で戦争になれば、戦力の乏しい辺境の村など直ぐに貧しくなって、生活が困難になるのだ。さらには、兵力として村の若者を連れて行くような法律まであり、これは昔の日本でも実際にあったことでもある。


 それに比べたら、逆に自分たちお抱えの騎士達を村の防衛に回しているところを見る限り、戦争や紛争などが盛んではないことが予想された。

 


(まぁそれも、この後連れて行ってもらえるところで分かるか。...最悪、ジルトさんやガルシオに聞けばいいしな。セリアは......今は考えないでおこう...。) 「ハァ...、ハァ...。」



 そんなことを考えながら、ユウは自身の身体についている汚れを洗っていた。身体自体は、一週間の内に何回か自分で作ったお湯などで流していたが、所詮はお湯のみであり、こうやって石鹸?のようなもので身体を洗うのは日本に生まれた者として嬉しいことであった。


 さらに、同時進行でユウの服を"あの"セリアが洗ってくれているのだ。......まぁ、本人は凄まじく嫌そうな顔をしていたが、一緒にいたガルシオの薄い笑みを前にしてはどうやら大人しいようで、素直に(それでもユウには渋々といった感じに見えたが)引き受けたのだ。


 そんなこともあり、ユウとしてはセリアに頼むのが正直気が引けているのだった。



「しかし「ハァ...、ハァ...。」暫く一緒に生活する上で「ハァ...、ハァ...。」このままじゃ、流石にだめだよなぁ。「ハァ...、ハァ...」......って、リンはいつまでそこで息を荒げてんだ?もうそろそろ着替えるためにも、セリアのこと呼びたいんだけど。」



 そう言ってユウは、今の今まで "仕方ないか" と思って、特に何も言わなかったリンの行動に、流石に呆れたのか、そう言ってやめるように言った。しかし、



「ハァ...、ハァ...あ、あと十分...いえ!あと一分だけでもいいですから!ど、どうか主の裸体を眺めさせてください!な、なんでしたら!...ボクも脱いで、一緒に...。」



と、また暴走しているかのように見えて、いつも通りな反応を見せていたリンが、そんなことを言ってきた。相変わらずだが、今回は少しだけ自律しているのか、一分に縮めていた。......その後の発言は、聞かなかったことにしよう。


 とまぁいつもなら、そんなリンのことを放っておいても別に問題はないのだが、今は別だ。特に時間は言っていなかったが、あまり湯浴みが長すぎると、セリア辺りが "遅い!" とか言って声をかけてくr



「遅い!いつまで待たせるつもりだ、さっさと出てこい!...それとも強制的に出して欲しいか、あ?」



 ......まぁ、噂をすればなんとやら、だ(※正確には"噂をすれば影が差す")。そんな声とともに、セリアが扉の向こうから叫んでいた。

 ユウとしては、そこまで長く居たつもりはなかったが、それでも今は泊めて貰ってる身であるし、そもそも書物のある場所への案内はセリアが引き受けた(と言うかせざるを得なかった)のだ。だからこそユウは、少し急いでいたのだが、



「ほらリン、さっさと戻れ。」

「なっ!?も、もう少し!後ほんの少しだけでいいですから、どうか、お願いしますよ、主!!」

「い・い・か・ら...戻れ!」

「あ!あああぁぁ...。」



と言って、駄々をこねるリンを強制的に自身の身体へと同化させ、ユウは湯浴みを終えた。



"ガチャ"



「...すみません。幾分久しぶりなもので、長くなってしまいました。」

「なっ!?き、急に出てくるな!」

「えっ?でも、服がないと流石に外を出歩けないので...。」



 そう言ってユウは、セリアに答えた。......ほぼほぼ全裸で。



「そ、そんなの知っている!だからこうして替えの服を持ってきたのだ。さ、さっさと着ろ!いつまでもそんな姿、私に見せるな!」

「へ?......っ!?し、失礼しました!!」



 ユウはセリアの言ってることを直ぐに理解し、自分が今どんな姿だったのか冷静に思い直して、セリアが持ってきた服を手に取り、すぐさま扉を閉めた。さっきまでリンを相手にしていたこともあって、自分の姿に何の疑問も抱かなかったユウは、すべてではないが、セリアの前に全裸を晒していた。リーズでも、そんな姿見せたことはなかったのに、だ。


 そんな、女性の前で全裸を見せた経験など一度もないユウは、文字通り純情系男子であったため、凄まじい恥ずかしさに襲われていた。



(っていうか、こういうのは立場逆の方が多いだろ!......って何考えてんだ、俺。そんなことやったら、セリア二度と俺の半径二十メートル以内に近づかねぇっての。)



 そんな自分で考え、自分で突っ込みを入れるボケを心の中でかましていたユウは、一先ず落ち着こうと深呼吸をした。そして、冷静になったことを自身で感じ取り、扉を開けて出てきた。



〈きぃーーー!!何なんですかあの女は!主の裸体を見ておいて"そんな姿"などと!主の身体はですねぇ!主の...身体...は......あぁ~~~♪主の身体は、ほんっとうに、さいっこぅ~~~なんですからぁ~~~~~///〉



 ユウの脳内にはそんな声を響かせながら、怒っているのか悶えているのか、よく分からない感情をぶちまけながら叫んでいるリンが居た。......本当に、その部分だけでも抑えてもらえると、可愛らしくていいものの。......残念なボクっ娘であった。


 そんなリンのことは放っておいて、ユウは先ほどの失態を謝るべくセリアの姿を探した。すると、セリアはその場を動いていなかったようで、最初の位置に居た。......頭を壁に打ち付けながら。



「...えっと、何をしているんですか、セリアさん?」

「"ガン!ガン!"ん?なにって"ガン!ガン!"......ふぅ、これでいいか......というわけで、漸く出てきたか不審者。」

「......この際その行動と、不審者呼びはいいとして...先ほどはすみませんでした。」



 そう言ってユウは、先ほど自身が見せた失態を詫びた。たとえ不可抗力だとしても、ユウに非がある場合は直ぐに謝っていた方がいいのだ。それは、地球に居たときいつも心がけていたことであり、意識せずともやってしまうことであった。しかしセリアは、



「ん?...何のことだ?」



と、何のことか分からないとでも言うかのように、自然と首をかしげていた。



「えっ?......ですから、先ほど俺のからd」

「だ・か・ら、...何の話だ。私は貴様の替えの服を持ってきただけで、そのときに貴様とはなにも問題は起こっていない。...そうだよな?というかそういうことで納得しろ、...い・い・な?」

「...分かりましたよ。」



 そんなセリアからの強引な言葉に、ユウは先ほどのセリアの行動を含め、どういう事情か察したらしく特になにも言い返さなかった。女性の立場からしたら、嫌っている相手の裸を見るなど、直ぐにでも忘れたいことなのだろう。そんなことを思いながら、ユウ自身もこの話題が直ぐにでも流れることを望んでいた。

 

 ユウにとしても、家族以外の女性に裸を見られるなど、先ほども言ったように経験がなく、早々に忘れてしまいたいことであったのだ。もし立場が違っていたらと考えると......考える前から気が重くなる。



「...とりあえず、終わったのならさっさと行くぞ。これから向かう"トルマーク戦闘・探索合同組合"ではジルト隊長やガルシオ殿が、貴様が来ることに対して取り次いでくれている。感謝しろ。」

「それは...そうですね。では、向こうに着いたら直ぐにでもお礼を言うことにします。」

「あぁ、そうしろ。」



 そうしてユウは、ちょっとした騒動があったものの、漸く書物のあるという"トルマーク戦闘組合"に向かって、出発した。いよいよこの世界で初めての"未知"が待っている。



 セリアの案内で、ユウが組合のある村の中心部辺りに向かっている最中、唐突にユウが、



「ところでセリアさん。失礼ですが、貴方の年齢を教えてくれませんか?」



と、藪から棒に大胆なことを聞いてきた。現在のセリアとの関係を考えると "なぜこのタイミングでそんなことを聞いているのだ、このバカは" と、誰もが思うようなことを、ユウはしていた。


 敢えて理由を言うとすると、ユウとしてはセリアに対する接し方を考えていたが、年齢を聞いた方が対応を確立出来ると思い、思いつきで聞いてきたのだ。実際、年下ならば少し砕けた話し方の方が相手もそんなに警戒しないと考えたのだ。だが、



「は?なに、馴れ馴れしく聞いてきているんだ。そんなことわざわざ教える必要ないだろうが、この不審者が。」



と、すっぱり切って捨てた。


 "まぁ当然か" とユウが諦めようとした瞬間、道の先から誰かが向かってきて、突然ユウ達(というかセリア)の前で止まり、こう言った。



「セ、セリア!今日こそ頷いて貰うぞ!...どうか、俺と結婚してくれ!」

「なっ!?」

「へ?」



 そんなことを言って、目の前の人物(革の鎧を着た男)はセリアに向かって愛の告白をしてきた。そんな突然の事態にユウは驚いていたが、それ以上にセリアの方が驚いていた。まぁ、当事者なのだから当然と言えば当然なのだが、...男の発言から今回が初めてではないようだし、過剰反応ではないかと感じられる。


 そんな反応を示したセリアは、暫く呆然としていたが、一度大きなため息をついて男の言葉に応えた。



「はぁ~...ザルバ殿。そのことは以前お断りしたはずです。それに、こんな往来の場で突然話すなど、相手に失礼だとは思わないのですか?」

「うっ...だ、だが!お前は来月には十八となると聞いたのだ!それなら、直ぐにでも婚約を認めて貰いたいと思って...。」



 そんな二人の会話を聞きながらユウは、



(セリアさん...というかセリアって、十八...というかまだ十七歳かよ!...三つも年下の奴にさんざん不審者なんて言われて、最初に至っては命令されてたのか......。いくら仕事の上とは言え、酷いだろ。途中で俺の方が年上だと気づいたのに、それでも直さないとか......腹立つな。)



と、心の中で憤慨していた。そんなユウの思いなど知るわけもなく、セリアと(ザルバ)の会話は続く。



「なっ!?そんなこと誰から聞いたんですか!」

「えっ...誰って、お前の兄貴のガルシオからだけど?この前一緒に酒を飲んでたら、ガルシオの奴が


 "来月漸く妹が十八になるんだよ。...はぁ~、あんな性格だからこの歳まで恋人の一人も連れてこねえし...、もうこの際ザルバでもいいや。セリアの奴に告白して、少しでも脈ありならそのままいっちまえ!"


 って言ってたからよ。だから、どうか俺の嫁になってくれないか?もし無理なら、恋人からでもいいから!」



 そんなことを言って男は、セリアに向かって再び告白してきた。まさに、(おとこ)であった。しかし、



「......申し訳ありません、ザルバ殿。私はまだまだ騎士として未熟者であります故、色恋などをしているわけにはいかないのです。お気持ちは本当に嬉しいのですが、お断りさせていただきます。すみません...。」



と、非常に心苦しい声でセリアはその申し出を断った。実際、ザルバのことはそこまで嫌っているわけではないのだが、恋愛対象としてみることは出来なく、あくまで知り合いの男性の範疇であったのだ。......まぁ、そうそう上手くいくほど恋愛(今回は片想い)は簡単ではない。



「...そっか。...いや、俺も突然だったのに、こんなことを言い出して悪かった。...すまん、今日のことは忘れてくれ。」

「...本当に、申し訳ない。」

「いいって、気にするなよ。......それならさ、こんな感じになっちまったけど、これからも話しかけていいか?」

「はい、こちらこそ良き友人として、これからもよろしくおねがいします!」

「...友人、か......そうだな!...そんじゃ、邪魔したな。そっちのガキも突然悪かったな。」



 そんな、青春の一ページを抜き取ったかのような会話がユウの目の前で繰り広げられ、こんな恋愛など物語の中でしか知らなかったユウは、感動していた。......が、最後のザルバの一言により、



(......だ・か・ら!俺はガキじゃねぇーーーーーーーーーー!!)



と、毎度の如く憤慨していた。...あぁ、悲しきかな"低身長&童顔コンボ"。


 まぁ、ユウのそんな心の叫びはともかくとして、ザルバと別れたセリアは、



「全くもう、兄さんたらっ!何でもかんでも言いふらさないでよ...毎回毎回自分のことと合わせて、私のことまで喋るんだから...。」



と、ガルシオに対して日々の不満をブツブツと呟いていた。実際ガルシオは、騎士でありながら村の人々との交友関係が広く、こんな性格であるセリアのために、こうやって自身の話題と合わせてセリアのことを出して、村の中でのコミュニティを形成していたのだ。実際、先ほどのセリアとザルバの様子を見ていった村の人々は、にやにやと笑みを浮かべていた。


 まぁ、そんなことを知らないセリアにとっては、ただガルシオが勝手なことをしているだけに見えているのだが...。



「...しかし、セリアの歳は十七か...俺より下だね。」

「...だからなんだ。貴様に至っては、そんな姿で年齢を偽って...正直言って"無理がある"ぞ。それより口調はともかく、私としては貴様から名前を呼び捨てされるのは非常に不愉快なのだが?」

「うっ...だったら、せめて不審者呼びは止めてくれないかな?流石に、もうそろそろ名前で呼んでくれてもいいじゃないか...。」

「ふむ...まぁ、そのくらいはいいか。では、アサヒ。私個人としては、貴様の年齢など特別気にする必要が無いと思っている。それを踏まえた上で、今こうして接している事は頭に入れておけ。」



 そう言ってセリアは再び歩み始め、前へと進んでいった。その後をユウは、 "まぁ、少しは近づけたかな?" と、少しだけ嬉しい気持ちになっていた。

 やっぱり誰でも、女の子から冷たい態度を取られるよりもこうして、素っ気ないがちゃんと相手をしてくれる方が喜ぶというものなのだ。それにセリアは、客観的に見ても綺麗だと感じられるほど、容姿に関してはレベルが高い。


 肩まである金髪を一纏めに縛っており、言うなれば短めのポニーテールである。瞳はサファイアのような蒼色で、性格故か少し勝ち気な感じの目つきである。

 身長はユウと同じくらい高く、スタイルは戦うようには見えないほどに女の子であった。胸は......本人が気にしていないのならば、別に良いけどね...。



〈う~!あの女、主がこんなにも頼んでいるのに、一切口調を直さないなんて!...主、ボクだったら既に準備は出来ていますので、堪えられなくなったら、いつでもどうぞ///♪〉

(......あ~、うん。ソウダネェ...。)



 そんなリンとの脳内コントをしながら、ユウはセリアの後をついて行った。











 "ニヤニヤ、ヒソヒソ"


「~~~っ!!」

「...セリア、そんなに恥ずかしいなら無理して案内しなくてもいいよ...?」

「っ!だ、黙れ!こ、このくらいの視線、なんともないわ!」

「......そっか。」(温かい目)

「な、なんだその目は!うぅ...、兄さんのばかぁ...。」(小声)





〈...なんだかこの人、かわいそうに見えてきました...。〉

〈...まぁ、なんだ...彼女には強く生きて欲しいな...。〉



何だかセリアが段々ヒロイン化してきましたが......今のところ、今後の出番はかなり微妙です...

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