No.016 一時停止&再生の能力と魔核
前回の疑問点は、今話で分かる仕様となっています。では、どうぞ。
先ほどまでユウは、自身の失態(まぁ、致し方なかったのだが)によって怒らせてしまった"丘陵蜥蜴"による攻撃を躱しながら、丘陵蜥蜴に接近していた。
そんな中、ユウの言葉で悶えだしたリンとのやり取りはあったものの、リンはまじめモードになると、リモコンによる能力行使をユウに促した。
現在その能力『映像世界』の"一時停止"によって、ユウ達以外のすべてがその動きを停止していた。
周囲の岩などは、重力を感じさせず空中にその動きを止めて、まるで空間に貼り付けにでもされているかのような錯覚を見せていた。
そんなとんでもない光景を目の前で見せられたユウは、
「ははっ...すげぇ」
と、呆れと感心が7:3ぐらいの割合で存在する気持ちのまま、そんな感想を抱いた。
〈さぁ主!早くあの魔物倒しちゃいましょうよ!〉
「いや、先にこの状況を説明して欲しいんだが...」
〈あぁ~、そうしたいのは山々なんですが...。実はこの状態、いつまでも続くわけではないので、出来れば説明は後ほど行いたいのですが...〉
そうリンが言った。
「そっか...じゃあまずはあいつ倒しちまうか...」
〈はい、お願いします〉
そんな簡単なやり取りを終え、ユウは動きを完全に止めている丘陵蜥蜴に向かって、
「"フレアバースt」
と魔法を発動しようとしたが、
〈あっ!ちょ、ちょっと待ってください、主!い、いったんストップ、ストップ!〉
と、リンが慌てた様子で止めに入った。
「ん?どうしたんだリン?手っ取り早く"業火砲"で焼き尽くそうとしたのに...」
〈そ、その~...この状態だと魔法の行使をしても、現象として発動しないんですよ...〉
「?何でだ?」
〈そ、それは後ほどお話しするつもりなんですが......とりあえず今は、単純な物理攻撃のみで倒して貰ってもいいですか?〉
そう言って、リンは申し訳なさそうにユウに頼み込んだ。
「...まぁ、そういうことなら仕方ないか。...後でちゃんと教えろよ?」
〈了解です!〉
「...それじゃあ、少し本気出しますかねぇ...」
そうしてユウは、未だに動かないでいる丘陵蜥蜴に向かって進んでいった。
「"憂さ晴らし"、発動」
ユウがそう呟くと、ユウの赤い魔力のオーラが身体の周囲を覆い、そしてそのオーラの一部がユウの右拳へと収束していった。
ユウの称号"憂さ晴らし"。それは、ユウ自身の持つ名称"溜め込む者"によって、自然とたまっている鬱憤を一部開放し、その開放量によって威力と持続時間が変わるのである。
その威力は今のユウが使うと、最低でも直径3~4メートルの地面が陥没するほどである。
そんな破壊力を持つ攻撃を、今のいろんな出来事により鬱憤がたまってるユウが使うとどうなるのか。......結果はお察しである。
「ん~...不安だし、七割くらいでやってみるか...」
〈主!どんな攻撃か分かりませんが、頑張ってください!〉
リンは、一度も見たことのないユウの本気が見られることに興奮していた。それにユウは、
「おぉ~、任せとけ!」
と、余裕の感じられる声で答えていた。そして丘陵蜥蜴の目の前にたどり着くと、ユウは正拳突きの構え(昔見た緑健児の真似)になって、その拳を勢いよく突き出した。
"バゴオォオオオオオオオオオオォォン!!"
その瞬間、空気が揺れた。いや、割れたと言ってもいいだろう。ユウによるその攻撃はそんな轟音を響かせ、小規模の地響きを発生させた。
当然、丘陵蜥蜴はその生涯を閉じるであろう攻撃と思われたが、
「あれ?効いてない?」
と、ユウが口に出した。実際、空気が揺れるほどの威力が込められた攻撃は、目の前の丘陵蜥蜴に掠り傷一つ与えていなかったのだ。
「あれ~、おっかしいなぁ...もしかして防御力がメチャクチャ高いのか?こりゃ、もっと威力乗せなきゃだめだなぁ...」
そうユウがげんなりしつつも、さらに高濃度のオーラを放出して、それを再び拳へと凝縮していった。今度は、先ほどのものよりも高威力の攻撃になりそうだ。
そしてユウが再び正拳突きの構えをして、同じように攻撃しようとしたそのとき、
〈あ、主!ちょ、ちょっとだけ待っててもらえますか!?〉
と、またもやリンの慌てた声が聞こえてきた。
「ん?これは時間制限の能力だろう?別に解いた状態でも勝てるとは思うけど、無防備な状態の時なら楽に倒せるはずだろ。リンも早く倒すように言ってたよな?」
〈そうなんですが......それでも一度、この状態を解いて確かめたいことがあるんです。...いいですか?〉
そうリンが頼み込んできた。ユウとしてはどちらでも倒せる自身があったため、特に気にする様子はなかった。
「...まぁ、いいけどな。その代わり、解いても奴がピンピンしてたら、速攻で吹っ飛ばすからな」
〈はい!了解です!...では、魔具の『再生』と書かれたボタンを押してください〉
「あぁ、分かった。んじゃ、『再生』っと」
そうしてユウは、リンの言う通りにリモコンの『再生』を押した。するとリンが、
〈いきますよ!..."再生"〉
と言って、能力を発動させた。すると、止まっていた空間は再びその動きを始め、目の前の丘陵蜥蜴も当然、動き始め
"ゴッパァアアアアアアアン!!"
......動き始めたが、今度は違う意味で動かなくなった。というか、消し飛んだ。
「うぇ!?」
〈...やっぱり...〉
そんな別々の反応を示しながら、ユウ達はその光景を眺めていた。二人の後方を、使用者が消滅した岩達が次第に激しさを減らし、いつしか落下してくる岩はなくなったのは、それから数秒後の出来事であった。
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丘陵蜥蜴との戦闘?を終えて、ユウは折れた木の幹に腰掛けていた。リンはというと、実体化している状態でユウの肩に腰掛けている。
「...で、さっきの能力の説明を、リンさん。どうぞ」
「あ、あはは...り、了解であります、主!」
そしてリンは、先ほどのリモコンの能力を詳細に語った。
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『映像世界』の能力その1"一時停止"
この能力は、単純に時を止めるほどの力はないが、使用者が認識している範囲の空間を、『映像』として捉え、その中のすべての活動をその場に留めるものである。
しかし、先ほど停止していた空間でユウが普通に動いたり、呼吸できたのには訳があり、それが"認識している範囲"という部分である。
普段生活していて、空気の存在や自身がそこに存在しているということは、当然のことであり、特に意識するような事柄でもないのだ。よって、使用者が認識している範囲には、意識していない空気や自身の存在というものは、除外される。逆をいうと、意識さえすれば空気の流れも止められるのである。息は出来なくなるが...。
そしてユウが疑問に感じていた、攻撃が最初効かなかったことだが、これにも訳がある。
その理由として、この『一時停止』はテレビのように、流れる"映像"を止まっている"画像"として"固定"しているのだ。
固定している画像は、再生しない限り動き出すことはなく、そもそも変化が出ることもない。よって、ユウの攻撃が当たっても、その瞬間吹き飛ぶことはない。そして、ユウが魔法によって現象を起こそうにも、現象という"認識"が動くはずもないのだ。
しかし、ユウの中にある魔力自体はユウ自身であるため、魔力行使は出来る。ただその魔力を、魔法で現象にすることが出来ないだけである。
こうした理由からユウの魔法は発動せず、たとえユウが攻撃しても、再生しない限り如何なる変化も出ないのだ。ちなみに、ユウが殴った衝撃で丘陵蜥蜴が吹き飛んでいたのは、原理としては簡単である。
一時停止したテレビ。そのテレビに上から鈍器で盛大にぶっ叩く、さて再生するとどうなるだろうか?......つまりは、そういうことだ。
※叩くと直るといいますが、現実的に考えて、叩き過ぎは故障or破壊の原因です。
ちなみに、停止時間は使用者が注いだ魔力量に比例するため、現在のユウだと最大に注いだとして、もって十分程である。
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その2、"再生
この能力は『映像世界』の持つすべての機能に対応している能力である。文字通り、テレビの再生のような機能である。先ほども、この能力により動き出したのだ。
さらに、『対象選択』によって動かすものも選択できるのだ。しかし慎重に行わなければ、重要な部分だけを動かせなかったり、人物だと体内の器官のすべてを意識しないと、そもそもの移動が出来なかったりするのだ。
それだけ個別に再生するのは、集中力とイメージが要求される。
そしてもう一つの能力に、『遠隔操作』の発動にも関係してくる能力でもある。
遠隔操作は、文字通り操作することが出来る能力である。その方法としては、対象選択によって操作する対象を決定し、その支配権を有することで、操作可能とする。対象は、生き物以外である。
例を挙げるとするならば、鎧に向けて操り人形のように動かしたり、石に向けて攻撃に利用したりなどがある。
しかし今のユウでは、操作中に他の行動が出来ないため、並行作業は難しい。それだけ集中力が必要となるのだ。
ちなみに"再生"とあるが、光魔法の"回復魔法"とは全く違う能力だ。
(ちなみに生き物以外とされているが、それは体内器官までその範囲内ではない)
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「以上が先ほどの能力の説明になります。...これで大丈夫でしたか?」
そう言って一通り話し終えたリンは、ユウへと確認を取った。
「なるほど...二つ目の能力は『遠隔操作』のための奴か」
「そうですね。ちなみに、ボクがその対象物に入って、操作することも出来るんですよ!」
「へぇ~...っ!も、もしかしてリンが操作すれば、俺がわざわざ集中しなくても済むのか!?」
先ほどのリンの言葉を聞いてユウは、そんな考えに至り、若干興奮した様子でリンに問いかけた。
「ふぇ!?...そ、そうですね。それも可能かと...」
「んじゃ、今度から『遠隔操作』を使うときはリンに任せるか」
そんなユウからの言葉は、リンの弱いおつむによって、
"お前のことを信用してるからな!頼りにしてるぞ、リン!"
と、脳内変換されていた。
「~~~!!お、お任せください、主!必ずや見事な働きをして見せます!!」
「お、おぉ...。無理するなよ...」
「もちろんですとも!」
そんなリンの様子にユウは少々引きながらも、リンのやる気を損なわせる訳にはいかないと思い、特に何も言わなかった。
そしてユウは話を切り替えるように、
「それじゃ今度は、これについて調べるか」
と、切り出した。
「あ、そうですね。...何でしょう、これ?」
「そうだな。そのためにも...」
「あ、了解です!」
ユウが言い淀んだことでその意味を理解し、リンは再びリモコンの形へと戻った。ユウはそのリモコンで、"それ"を対象に『字幕表示』を使用した。
"それ"とは、先ほど吹っ飛ばした丘陵蜥蜴から出てきた(と思われる)、岩のような物体だった。色は濃い黄色で、地球にいたときに見た"琥珀"の中身を透明にし、ごつごつとさせたような形であった。ちなみに、大きさは直径三十センチもある。
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『土の魔核』
個体名"丘陵蜥蜴"の魔核。土の魔力を宿している。
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「?"魔核って?"」
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『魔核』
魔核とは、魔力を蓄積する"核"を持たない生物が、魔物や魔獣になる過程で生成されるものである。
原理としては大量の魔力を取り込むか、直接身体に魔鉱石を埋め込むことで魔物や魔獣となり、その状態のまま活動することで、魔核は生成されていく。
魔力は核の有無に関係なく、すべての生き物に影響を及ぼすため、魔気や魔鉱脈があるところでは高い確率で魔物や魔獣が発生する。ちなみに、魔物や魔獣も元は普通の生物である。
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「つまり、今まで倒してきた奴らも魔力なんかのせいで無理矢理あんな姿にされたのか...」
ユウは、先ほどの丘陵蜥蜴も含めて、少し気の毒な気持ちになっていた。
〈...主?〉
「あ、あぁ、リン。...悪い、ちょっとナイーブになってた」
〈いえ、大丈夫ですよ。それだけ主は、優しい心を持っているんですから。その気持ちを大事になさってください〉
そんな風に励ましてきたリンにユウは、
「...あぁ、ありがとな」
と、素っ気なく返した。
〈いえいえ、主のそんなところもボクは大好きですよ♪〉
「...嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。俺も、リンのこと好きだぞ」
ユウはそんな素直な思いをリンに伝えた。
(......やっちまった...)
そうユウは思った。その理由は、言うまでもなく、
"ポンッ"
と、そんな音と共に現れた少女によって説明された。
「あぁ~~~るぅ~~~じぃ~~~~~~♪」
「...あいよ」
ユウはそんな声を上げながら飛び込んできたリン(人間サイズ)を、 "ダキッ" と言う音が聞こえてきそうな感じで受け止めた。
「あるじあるじあるじあるじあるじーーーーーー!!好き好き好き好き好き好きーーーーーー!!だぁ~いすきですぅ~~~♪」
「そ、そうか。...ありがとう」
「はい!今ならボク、主のためならなんでも出来る気がします!それこそ、その...え、エッチなことだって...」
そんなとんでもないことを言おうとしたリンに対しユウは、
「いや、それは無いわ」
と、とても冷静に言い放った。
「!?な、なぜですか主!?ボクのこの思いを、どうしてそんな風に断れるんですか!?」
「えっ?...いや、だってお前精霊だし、そもそもそんな目でお前のこと見たの一度もねぇよ」
「ガーーーン!!」
そんなユウの言葉を聞いてリンは、まさかの絶句の表現を口で出していた。
正直なところユウもリンのことは好きであるが、それは子どもを可愛がるような"愛でる"という、父性や兄性であった。完全に、お子ちゃま扱いである。
ちなみに、リーズに抱いていたのはどちらかというと、別のものであった。が、強くなることだけを考えていたユウにとって、それは後回しにしていたのだ。そのため、実際のところリーズに抱いていたものは何だったのか分からないまま出発してしまった。
そんなこともあり、ユウにとって好きは友達より上に発展した経験が無いため、恋愛の好きが今ひとつ分かっていなかった。まぁ、そんなこととは関係なしにリンに対しては、一生今のような接し方で終わるだろうが。
それでもチャンスがあるとすれば、ユウが恋愛を知ることが必要となってくるが、......そんな日が来るのか、甚だ疑問ではある。
「う~、絶対ボクに振り向いて貰いますからね!!」
「...まぁ、頑張れ...」
「ほ、本人から、頑張れって......落ち込みますって...」
そう言ってリンはリモコンへと姿を変えると、ユウの中へと戻っていった。
(いい奴なんだけど......性格難あり、だな)
そんなリンへの感想を抱きながら、ユウは人間族の使国"スローム"の中心部へと歩みを進めた。そしてふと思いつき、
「リン、いったんリモコン使うぞ」
といって、右手にリモコンを顕現させた。
〈?...何ですか主。ボクは今絶賛落ち込み中ですよ...〉
「まぁ、そう言うなって。後で、いくらでも撫でてやるから」
〈むっ...それならいいです。...ふふっ、またあの『か・い・か・ん』が、ボクの頭に......たまりません〉
そんな、脳内で涎を垂らした姿が容易に想像できるリンのことは放っておいて、ユウは『字幕表示』を発動させた。
(問い。ここから一番近い人の住む集落は?)
そんなユウからの問いかけに、画面にはこう表示された。
『ここより東に行ったところに"ミミ村"が存在する。東は進行方向より斜め左である。』
「よし、予想通り近くの村も分かるのか。...はぁ、なんで今まで試さなかったんだよ、俺...」
そんな自身に落胆しているユウは、気を取り直したのか、再び歩みを進めた。さて目指す場所は決まった。まずは、"ミミ村"だ。
〈えへへ~......って!無視ですか、主!?ちょ、ちょっと~~、今度はいじけますよ~、いいんですか~~!?〉
ユウはリンを、精々従兄弟の子供みたいに見ています。
※ユウが丘陵蜥蜴へ放った攻撃の割合を変更しました。←2017/11/13




