No.014 リンからの好感度と初魔具
イェーイ!新章突入じゃー!!
そんなわけで、女の子を可愛く見せるために日々研究を欠かさない作者は、今日も頑張ります。
現在ユウは、リーズが用意してくれた門を通って、地上へと向かっていた。
「しかし、ホントに大丈夫か?」
〈ん?どうしたんですか、主?〉
ユウが歩きながらそんなことを思っていると、突然頭の中でリンの声が響いた。
「あ?...なんだ、リンか。今どうやって喋ったんだ?」
〈あ~、そういえばまだ話してなかったですね。じつは、ボクと主は魔具を通して互いの意識が繋がっているので、こうして直接心で会話することが出来るんですよ。...主と《繋がってる》...あぁ、たまりません///〉
「...そうか」
〈はい!フフフ、これでもう主とボクは"一心同体"ですね///!"〉
「...」
ユウはそんな、声だけで身もだえているリンを無視して、先ほど自身が感じた疑問を再び考えていた。
ユウがそんなことを考える理由としては、リーズが門を出す前に言っていたことが原因であった。
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「それじゃあ、これから門を出すけど、何処がいいか希望はある?」
「そうだね...ちなみに、何処につなげられるの?」
「う~ん、具体的な場所を指定してくれるならいいけど、それでも若干のずれはあるかも知れないね...」
そんなことを言うリーズだった。実際、空間同士をつなげることは大変難しいことで、リーズのような、魔力操作に長けたものだからこそ出来るのだ。
それだけ転移という魔法は、空間魔法の中でも上位に位置する。......ユウの魔具は、規格外というだけだ。
「そっか...じゃあ、基本的に人里近くがいいかな。その方が色々便利だし」
「ということは...人間族の大陸にある大国の周辺でいいかな?」
「あぁ、それでいいよ。実際どこから始めても、世界中旅する予定だからそんなに大差ないからね」
「分かった!それじゃ、比較的安全そうな人間族の大陸にある、"シェール"っていう王国の近くに繋げるね」
そう言ってリーズは、"シェール王国"という国の近くへと門を繋げた。
「...ちなみに、本当に大丈夫?疑うわけじゃないけど、失敗とかは...」
「もう!大丈夫だよ!そんなヘマはしないって!」
「...まぁ、信じるけどさ」
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「...まぁ、リーズの力は特訓の最中でも、どれだけすごいか身に染みて分かってるから、今更疑いようがないか...」
そう思い直して、ユウは先ほどよりも少しだけ早足になり、進んでいった。
〈...あれ、主?どうしたんですか?〉
「なに、早く見てみたいんだよ、この世界を。何しろ、こっちに来てからあの空間しか知らないからな」
〈なるほど、それはボクも同感です!では、早く行きましょう!〉
「あぁ、もちろんだ」
そんな脳内会話をしつつ、ユウとリンは先を急いだ。しかし、幸先が悪いというのはどんなことでもあるようで、
"ガコンッ"
という音が、突然通路に響いた。
それを合図に、ユウの身体が下へと引っ張られるように引きずり込まれていった。当然ユウは、飛翔者によって浮かび上がろうとしたが、
「なっ!?」
〈ふぇ!?ど、どうしたんですか主!?〉
「俺も分からねえよ!...ちっ、だめだ。何か知らんけど、魔力自体が使えねぇ!」
といった具合に、浮かぶことが出来なかった。ユウの言った通り、飛翔者が働いていないというよりは、魔力そのものが行使できないのだ。
〈えっ、じゃあ、どうするんですか!?〉
「そんなの俺が聞きたいわ!くそっ...とりあえずこのまま行くぞ!」
〈...了解です!〉
そんな会話をしつつ、ユウ達はそのまま下へと落下していく。......見事にテンプレ的展開を実行しているユウであった。
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ユウ達が落下を開始してから数分後。急に視界が変わったと思ったら、眼下に広大な森があった。つまり、今は空中を落下中なのだ。
〈ちょっ、主!?何か今すんごくピンチじゃないですか、ボク達!?〉
そんなリンの問いに対しユウは、
「!安心しろリン。もう大丈夫だ」
と、余裕の表情に戻ったユウがそう返した。
〈へ?それって...〉
リンからの問いには答えず、ユウは自身から赤色のオーラが出し、空中にその身体を浮かべた。
どうやら、もう魔力が使える空間になったようである。
〈わぁ~、さすが主、凄いです!!〉
「まぁ、な。これで、なんとか助かったが...」
リンからの素直な賞賛に若干照れつつも、ユウは、
(だけど、もし魔力操作で浮かぶことも出来なかったら......考えたくないな)
と、そんなことを考えており、今までの特訓に感謝していた。
ユウは飛翔者を使いながら、ゆっくりと地面へ降りて行き、無事着地した。
「っと、漸く落ち着けるな...」
〈そうですね...ありがとうございます、主♪〉
「まぁ、俺も突然だったから相当焦ってたけどな...しかし、ホントにここの近くに"シェール"とか言う王国があるのか?」
そう言ってユウは、自身が降り立った場所の周囲を見渡した。そこは、十メートルはありそうな広葉樹に似た木々によって囲まれており、上空から少し見たが開けたところが見えなかった。
"ここにいるだけでは、一生人に会わずに終わるだろう"
そんなことが実際あり得そうなくらい、周囲には人の気配がしなかった。
「う~ん、リ-ズが失敗したと考えた方が現実的だが、あのリーズがそんなヘマするか?」
〈そうですね。あれだけ自信を持って送り出したんですから、それは考えにくいですね〉
「そうだよな~、...でも現状それを考えないとすると、どういうことなんだろ?」
そう誰に対していったわけでもない問いに、律儀にもリンは暫く考えていた。しかし、その悔しがる様子を見ると、何も思いつかなかったようである。
〈う~~、ボクではどうしても考えつきません...〉
「まぁ、そう落ち込むなって。別に、リンに聞いていたわけじゃないから気にするなって」
〈そうですが、...それでもボクは、主の魔具精霊として、少しでもお役に立ちたかったです...〉
そんな健気なリンの言葉を受け、ユウは、
「...リン、ちょっと出てきてくれるか?」
と、リンに言った。
リンは ("怒られるかも...") と考えていたが、ユウからの頼みを断るわけにはいかないため、少々不安な様子で出てきた。
「...主、一体なんでしょう...」
「?どうしてそんなに怯えてるんだ?」
「いえ、お役に立てなかったので、その...お叱りを受けるのかと...」
そんな様子のリンに対しユウは、
「ったく、そんなこと考えてたのかよ...はぁ~」
と言って、唐突にリンの頭を撫で始めた。といっても、リンの頭はその身体に合わせて非常に小さいため、そこまで乱暴には撫でられなく、壊れ物を扱うかのように慎重に撫でていた。
「ふぇ?主?」
「俺のことを思って、一緒に考えてくれたんだろ?俺としては、その行動だけで十分うれしかったんだよ。ありがとな、リン」
「う、う~~。...主、こんなことされたら、ボク...」
「ん?どうした、リn!?」
リンの様子を訝しんだユウは、リンにそう問いかけたが、突如リンの周囲を魔力の渦が取り囲んだ。そして、
"ポンッ!"
と言う音を出して止んだと思ったら、
「あ~る~じ~~~!!」
と、人間サイズのリンがユウに向かって飛び込んできた。突然のことだったが、ユウはどうにかそのサイズのリンを自身の身体で受け止めた。
「うぉ!っと、......え~と、リン?これってどういう...」
「あるじあるじあるじあるじあるじーーーー!!好き好き好き好き好きーーーー!!もう、だ~~~い好きですぅ~~~」
「あ、うん。まぁ、今はいいや、別に...」
そんなことを言ってユウは、自身の顔を"スリスリスリスリ~"と言う効果音がつきそうなくらい擦りつけているリンをそのままにし、暫しの間好きにさせていた。
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「あぁ...///主ぃ...///」
「...そろそろ話進めようや、リンさん...」
「う~...主がそう言うのでしたら......では、あと一時間ほどしたら」
「長いわ!!」
そう言ってユウは、少々強引にリンを引き剥がした。
「あぁ~、主の温もりが~」
「あーもー、いいから今のお前の状態を説明しろよ...」
「あっ、そうでしたね」
リンは少々不満げになりながらも、一度元の大きさに戻ってから、自身の先ほどの姿について説明した。
「簡単ですよ。主から常に送られる魔力を自由な大きさまで膨らませて、自身の身体を大きくさせたんですよ」
「...いや、それって簡単なのか?」
「う~ん、ボクみたいな魔具と一体化しているような存在なら簡単ですかね。普通なら、精々自身の魔力を周囲に纏わせて、大きく見せるくらいですね。
でもボクも、そんなに長い間大きいままじゃないですけどね」
そう言うリンは、どこか誇らしげだが、寂しげでもあった。
リンの言ったように、ユウから貰う魔力や周囲の魔気が不足すれば、元の身体に戻ってしまう。さらに、その姿でいる間は、常に魔力操作をしているため、集中力も使う。
よって普段は魔具の中にいるか、出てきても小型サイズのままなのである。
「そうか。それなら仕方ないな」
「う~、本当ならさっきみたいな姿で、ずっと主にくっついていたいのですけど...」
「...諦めろ」
「ぶぅ~...」
そんなやり取りをしつつ、ユウは、
(しかしリンの奴、いくらなんでも俺のこと好きすぎだろ。...まぁ、すげぇうれしいけどさ)
と、内心照れてもいた。ユウも中々素直ではないようだ。
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リンとの一騒ぎがあったが、ユウ達は今後のことについて、適当に辺りを散策しながら話し合っていた。リンは実体化し、ユウの左肩に腰掛けている(というかユウの首に寄りかかっている)。
「しかし、これからどうするか...」
「そうですね。とりあえずここがどこか調べますか?」
「そうだな...よしっ。それじゃあ、リン?」
「了解です!」
ユウがそう言うとリンは、自身の身体を魔具へと戻し、ユウの右手に収まった。そして、一度リモコンの"メニュー"と書かれたボタンを押した。
すると、空中に水色の半透明な板(画面)が出現し、なにやら文字が書かれていた。
「そいじゃ、試しますか...」
そう言ってユウは、今度はリモコンの"字幕"と書かれたボタンを押しながら、"問い。ここはどこか"と念じつつ、魔力を注いだ。
すると画面に、
『ここは、魔人族領にある人間族の使国"スローム"と魔人族の国"ソクラデッド"の境に位置する"クルスの森"』
と表示された。
「やっぱり"シェール"とか言う国じゃないのか。...それにしても、ここって魔人族の大陸じゃんか...」
〈みたいですね...〉
そう言ってユウ達は、予想以上の想定外な現状に唖然としていた。
ちなみに、先ほどの能力はリモコンの固有魔法"字幕表示"である。
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『字幕表示』
これは、対象を選択することでそれが持つ意味や情報といったものを、画面に説明文として記載する能力である。
対象が実体を持っていればそれに対して発動し、先ほどのように実体がなくとも、念じることにより情報が得られる。
しかしそれは無機物や人以外に対しての情報のみで、人物に向けても、よくて名称が表示されるのが限界である。場所に関しては、そこに何があるかはさすがに細かく表示されない。あくまで、何処に位置しているのか程度である。
それでも、大雑把な解析や鑑定は出来るため、召喚されたユウとしては、とても助かる能力であった。(十分チートだが)
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「しかし、人間族の国の近くにあるなら、とりあえずはそこの中心部まで行くか」
〈そうですね。さすがにこのままの装備で行くのは、少し不安ですからね〉
「まぁな。食料も現地調達を考えていたから、一週間程度しかないからな...」
そうしてユウは最初の目的地として、"スローム使国"の中心部に向かっていった。
しかしユウは、魔人族領の実体をまだ分かっていなかったのである。
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数時間後。
「ん?今度は...またゴリ丸かよ...」
〈違いますよ、主。あれは、緑大猩々ですよ。確か...これで十五体目ですね〉
「あぁそれそれ。もうメンドイからゴリ丸って呼んでたわ」
そんな適当なことを言われたゴリ丸こと、"緑大猩々"は、口からくさそうな息を吐きながら飛び出してきた。
〈しかしこれで、一番多かった気狂鳥に並びましたよ〉
「マジか...もうそんな数になってたんだな。はぁ~、さて今度はどう倒すか...」
そんな会話をしているユウ達に、目前のゴリラは手に持った棍棒を振りかぶりながら迫ってきた。
"ガァアアアアア!!"
そんな鬼気迫る勢いで走ってきたゴリラに対し、ユウは、
「遅ぇ...」
と呟いた。
そんな言葉を言ってユウは、振るわれた棍棒の側面に自身の手を添えて、ゴリラの棍棒の軌道をずらした。ゴリラは体勢が崩れたのか、前方へとよろめく。
その隙に出来たゴリラのガラ空きな横っ腹に、ユウの右回し蹴りが入った。
"メコッ"
そんないやな音を出し、ゴリラの身体が一瞬宙に浮いたかと思うと、そのまま、
"ベキッ、バキッ、ボキッ...ドガァアアアアン!!"
と、木々をへし折りながら最終的に、突き出た岩へと衝突し、動きを止めた。
「またすぐに終わっちまった...」
〈そうですね~...あっ、主!また何か来ましたよ!〉
「ホントか!今度こそもっと歯ごたえのある奴か?」
ユウはそう言って、リンが示した方向を見た。そこには、
"ギャギャギャァアアアアアア!!"
と喚きながら、一羽の鳥が迫っていた。
「あれは...」
そうユウが言うと、リンが
〈はい、あれは...〉
と言って、ユウと声を揃えて言った。
「気狂鳥(だな)〈ですね〉...」
そこには現在討伐数十五体(おそらく直ぐにでも十六になるであろう)の、狂った鳥がいた。
ユウのテンションはだだ下がりである。
※2017/06/25 食料の備蓄を"一週間程度"に変更。




