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No.012 ジョンの正体と"魔具"


※魔具に関する説明を大幅に改変しました。(2018年2月12日)


 ユウは、自身が旅立つことを伝えるために、一度ジョンの部屋へと向かっていた。



"コンコンコンッ"



「ん?誰だ?」

"ジョンさん、俺だよ、ユウだよ。ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな?"

「あぁ、ユウか。

 いいぞ、入ってこい」

"ガチャッ"「失礼します」

「うむ。

 で、話とは何だ?」



 そう言ってジョンは、ユウがなぜ自分の部屋へと来たのか、問いかけた。


 

「あぁ、それに関しては、リーズも交えて話すつもりなんだ。

 だから一度、リーズの部屋に来てもらえない?」

「ふむ、別にいいが...突然だな。」

「あはは、ごめんね」

「いや、特には気にしていないから大丈夫だ。

 では、向かうとしよう」

「うん」



 こうしてユウとジョンは、リーズの部屋へと向かっていった。



 "コンコンコンッ"



「ん?はぁ~い、だれ?」

"リーズ、今って時間あるかな?"

「あれ、ユウ?どうしたの?」

"あぁ、ちょっと話したいことがあってね。今、入っても大丈夫?"

「うん、いいよ。今は、特に何もしてなかったから」

"それじゃあ..." 



 "ガチャッ" 



「...お邪魔します」

「うん、いらっしゃい。一体どうしたの?ジョンまで...」



 そう言ってリーズは、ユウ達をを自室へと入れた。



「ふむ、私もユウから一緒に来るように言われただけだから、よく分からん」

「あ、そうなんだ。

 それじゃあユウ、何か用かな?ジョンまで一緒っていうのは、ちょっと想像がつかないけど...」


「あぁ、実はちょっと二人に話したいことがあるんだ。それで、二人が一緒にいるときに話そうと思って」

「そういうことだったんだ。それで、その話したいことって?」

「うん、それは...」



 そうしてユウは、自身が十分に強くなったはずであること、そろそろ旅立ってもいい時期だろうことを伝えた。 


・ 



「...というわけで、そろそろ旅立とうと思うんだ。もうだいぶ力はつけたし、それに、いくら時間の流れが遅くても、時期的にもこれ以上居続けるわけにもいかないからね」



 そう締めくくったユウに対しリーズとジョンは、



「「やっとか...」」



と、若干呆れつつ言い放った。そんな二人に対しユウは、



「...え、えっと...も、もしかして迷惑だった、かな?」



と言って、かなり落ち込んでいた。確かに、三ヶ月という期間は、あまりにも長すぎたのではないか、とユウ自身も感じていたのだ。

 だが、後もう少し強く、後もう少し知識を蓄えてから、という気持ちがあり、こんな時期になってしまったのだ。



「あ、あぁ~、そういう意味じゃなくてね!ユウはもうひと月前から、もう問題ないレベルにまでいっていたから、そこからさらに一ヶ月も続けたから、良くやるなぁ~って思ってたの。だから...」

「うむ、私から見ても、旅に支障がないほどに力をつけていたからな。それなのに、まだ続けることには驚いたぞ。

 まぁ、その分さらに強化されているがな...本当に、良くやったものだ」



 そんなことをリーズ達から言われ、ユウは、



「っていうことは、迷惑じゃなかったの、かな?」



と、確認の意味を込めて、そう言った。



「う、うん!全然迷惑なんかじゃないよ!

 寧ろ、こっちが楽しくて中々言い出せなかったくらいだし...」

「まぁ私としても、久しぶりに身体を動かしていたおかげで、鈍っていた感覚も鍛えられたしな。

 私としては、助かったくらいだ。礼を言う」

「そ、そっか...。なら、よかった~」


 

 そうしてユウは、自分が迷惑をかけていないことを知って、ほっとした。ユウとしても、ここにいた時間は、元の世界にいたときよりも充足感に満たされていたのだ。

 そんなこともあり、この三ヶ月間、ズルズルと居続けてしまったのだ。だがそれでは、当初の目的である、異世界旅行が出来ないままであった。そのため、今日ここを出て行くことを決意したのだ。



「それじゃあリーズ、これからここを出て行くとして、何か準備しておいた方がいいものって、何かあるかな?特にないなら、今からでも出て行こうと思うんだけど...」



 そんなことを言ったユウに対してリーズは、




「あ、あぁ~それは、その...。

 ...一日だけ待ってて貰ってもいい?」


 

と、ユウに問いかけた。



「ん?それは別にいいけど、何かあるの?」

「あ~、ちょっとユウに渡したいものがあったんだけど、突然のことだったからまだ完全じゃないんだよ。

 ユウが旅立とうとするときに、ユウから最後の仕上げをしようとしてたから。だから、その準備も合わせて一日だけ待って欲しいんだ」



 そう言ってリーズは、ユウに確認を取った。



「そっか、それならしょうがないか。

 でも、リーズがやってた作業って、そのことだったんだね」

「うっ、...ごめんね、黙ってて...」

「あ、いや!別に攻めてないから!

 寧ろ、俺のためにそこまでしてくれて、ありがとう」

「あ、えっと、その、...うん、どういたしまして...」



 ユウから笑顔で感謝されたリーズは、そんなことを言いながら、少しだけ頬を赤らめた。



「っ、そ、それよりも、ユウ!」

「へ?な、何?」

「ちょっと腕出して!」

「腕?別にいいけど...何で?」

「うん、ちょっとだけユウから血を抜くためだけど?」



「えっ、ちょ、ちょっと!

 俺、痛いのはいやなんだけど...」

「あ、あぁ、大丈夫!ほんの少しだけだから、痛くないって!」

「...まぁ、そう言うなら我慢するけど」



 そう言ってユウは少々困惑しながらも、リーズに腕を突き出した。すると、リーズはユウの腕に右手の人差し指をかざし、



「ありがと!...じゃあ、いくね。

 ..."抜血(ばっけつ)"」



と言って、リーズから魔力が放出し、指先に収束したと思ったら、ユウから少量の血液が抜き取られた。



「痛っ...くない?あれ、どうして?」



 ユウは、自身から血液が抜き取られて、痛みを感じないことに驚いていた。



「あぁ、それは水魔法の中の液体魔法である"血液操作"で、ユウから血液だけを吸い取ったからだよ」

「...えっと、それって滅茶苦茶怖い魔法なんだけど...」

「だ、大丈夫!これは本来自分の血液を操作する魔法で、他者への干渉は実際肌に触れた状態じゃないと発動も出来ないから。

 だからそんなに心配しなくてもいいよ」 


「それでも、実際に肌に触れられたら吸い取られるわけか...」

「ほ、ホントに大丈夫なんだってば!そもそもこの魔法自体、上級の中でも使える人が限られるから、実際に使う人に会うことは少ない...と思う」

「いるには、いるんだな...」



 そんな恐ろしいことを言ったリーズに、ユウは半目でそう返した。



「う、うん、それはそうなんだけどね...でも大丈夫。今のユウなら、そんなことされても防げるくらいに強くなったんだから」

「...まぁ、それでいいよ。

 で、これで終わり?」

「うん。このくらいあれば十分足りるよ。それじゃ、一日だけ待っててね」

「ん、了解」



 そう言ってユウは、リーズから離れた。



「それじゃあ、俺はこれd」

「あぁ、そうだユウよ。そういえば、私から君に見せたいものがあったのだ。

 悪いが、少しばかり時間をもらえるか?」

「あ、うん、大丈夫だよ。

 じゃあ、場所はジョンさんの自室?」

「いや、いつもの特訓場所がいいだろう。あそこなら、私としては都合がいい」

「分かった。じゃあ、行こうか。...それじゃあリーズ、またね」

「また後で会おう」



 ユウとジョンがリーズにそう言うと、リーズは



「うん、行ってらっしゃい、二人共」



と言って、自身の作業に移ろうとしていた。

 それを横目に見ながら、ユウとジョンは重力室へと向かった。



 重力室へと着いたユウ達は、



「それで、見せたいものって何?」



と、ユウが切り出したところで、ジョンがそれに答えた。



「あぁ、そのことだが...少々ユウを驚かせてしまうが、いいか?」

「へ?...まぁ、そう言われると少しだけ不安だけど、別にいいよ。

 逆にそう言われたら、すごく気になるし...」

「そうか。ならば、少しだけ私から離れた場所に立ってくれるか?」

「?別にいいけど...」



 ユウは、ジョンからの頼みに少しばかり疑問を抱いたが、言う通りに少しばかりジョンから距離を取った。

 するとジョンは突然、自身の身体から魔力を放出し、それを周囲に渦のように広げた。



「っ!ど、どうしたのジョンさん、いきなり魔力なんか出して...」

「まぁ、見ていろ。今から私の本来の姿を見せる」

「本来の、姿?」


「あぁ。実際、この姿をユウに見せようか迷ったのだがな。

 それでも、ここまで一緒に特訓してきた仲なのに、隠し続けるのも寂しいと感じていたのだ。

 そこで今回、ユウが出て行くのに合わせて見せようと思ったのだ」


「そっか...。

 じゃあ、見せて貰うよ。...ジョンさんの本来の姿を」



 ユウは自身に対し、ジョンからそこまで思われていたことに、うれしくなっていた。そしてジョンが見せてくれる、本来の姿というものに対し、俄然興味も湧いていた。

 そして、ユウからの言葉を聞いたジョンは、周囲の渦をさらに濃密にし、


「あぁ、とくと見よ!これが私の、本来の姿だ!」


と叫んで、魔力を莫大に高めると、その姿を変化させていった。




==========




 そこには、竜がいた。

 いや、ユウの記憶が正しければ、それはドラゴンと呼べる存在だった。

 

 体長はおそらく三十メートル以上。

 藍色の鱗に、巨大な翼。長い尻尾は、ユウの身長の五倍ほどはある。

 角は、日本の竜のように途中で枝分かれしている。

 口は大きく開いており、目は人型の時と同じか、それ以上の鋭さを宿していた。


 所々にジョンの面影が残っているお陰で、そのドラゴンがジョン自身であることは、そこまで疑わない。が、それでも突然ドラゴンへと変化したジョンにユウは、



「...」



と、まるで"ポカ~ン"という音が聞こえそうな感じで、口を開けたまま固まっていた。



「ふむ、やはりその反応が返ってきたか」

「...えっと、ジョンさん?だよね?」

「ん?...あぁ、そうだ。

 ...しかし、この姿になるのは随分と久しぶりだな」

「...正直信じられないけど、信じないと説明つかないもんね...」


 

 突然のことで、ユウの頭は一度機能を停止したように、何も考えられなくなった。

 それでも必死になって、目の前で起こった事態を理解し、自身を無理矢理納得させた。


 暫くユウが自身の中で、事態の整理を行っている間、ジョンは先ほどの人型へと戻っていた。



「しかし、思った以上にこの姿に驚かなかったな。もしかして、どこかで見たことがあるのか?」

「...まぁ、元いた世界では創作物とかで、ドラゴンの姿は見慣れていたからね。

 さすがに、実物を見たのは今回が初めてだよ...」

「ふむ、そういうことだったのか...。

 あぁそれと、私のような姿をしているものは"竜族(ドラビス)"と呼ばれる種族だ」

「"竜族"...なるほど、そういうことだったんだ。確かに、少数種族って知られると、少し変な目で見られるしね。

 けど、俺だったらそんなこと気にしないから、大丈夫だよ」

「あ、あぁ、それは助かる(本当はそれだけが理由ではないのだが...)」



 そんなことを思いながら、ジョンは笑いながら誤魔化した。



「...それにしても、ジョンさんが竜族だったなんて驚きだよ。まぁ、最初からすごい威圧感だったから、なんとなく普通の人間じゃないとは思っていたけど」

「ん?...まぁ、この威圧は自然と出てしまうものだからな。気にしていたのなら、すまなかった」


「あ、いや、全然大丈夫!

 寧ろ、その威圧のお陰で心身共に鍛えられたから良かった方なんだ」

「なるほど、そうだったか。...それは良かった」

「うん。

 ...とりあえず、今回は見せてくれてありがとう。ジョンさんとの特訓は厳しくても、やって良かったって思えるくらいの成果が得られたよ。

 明日にはここから出て行くけど、ここでのことは絶対忘れないよ。ホントに、ありがとう」



 そう言ってユウは、ジョンに頭を下げて感謝の言葉を述べた。



「あぁ、私もユウとの特訓は実に楽しいものだった。この想い出は大切にしよう。

 ...そうだ、出発が明日ならば、今のうちにもう少し鍛えておくか?」

「あ、そうだね!

 それじゃあ、お願い!」



 そんなことを言いながら、ユウとジョンは特訓へと移っていった。

 明日から旅が始まるというのに、今から体力を削るとは......向上心が高いのか、それともバカなのか。判断が難しいところである。



 こうして一日が過ぎたころ、とうとうユウの出発の時である。



 と、その前に、



「それじゃあ、今からユウに渡すものがあるから」



と言ってリーズは、ユウにある機器を手渡した。それは何と、



「"リモコン"?」



と、ユウは問いかけた。

 そうそれは、正真正銘"SH○RPのリモコン"であった。



「うん。ユウをこの世界へ召喚したときに、ユウが持ってきたものだよ」

「...そういえば、選択をしたときに最後まで持ってたのがこれだったか。

 ...正直、今の今まで忘れてたな」

「ま、まぁ、その"リモコン"っていうのを調べたら、どうやら"魔具"の性質があるみたいだったんだ」

「ん?その魔具って、特訓場所の重力を制御してたのと同じやつ?」

「あぁ、そういえばそんなことも話してたね。

 それじゃあ、ちょっと魔具について説明するね」


 

 そうしてリーズによる魔具の説明が始まった。



==========


『魔具』

 正式には"魔力行使補助道具"といって、使用者の魔法の行使を補助したり、(ものによっては)魔力を流し込むだけで魔法を勝手に行使してくれたりする道具である。


 魔具には大きく分けて四種類が存在し、


【魔力を流せるだけで魔法の行使自体は使用者負担の魔具。】

【魔法は行使出来るが、その働きを設定するのは使用者負担の魔具。】

【魔力を流しただけで設定された魔法を行使出来る魔具。しかし、設定された魔法以外は発動しない。】

【上記の内、2番目と3番目のどちらにも対応している魔具。】


がある。

 魔具が作られる原理としては、特定の名称持ちに作って貰うか、長年の月日を得て精霊の力が自然に溜まるかの二つが定説であり、それ以外だと非常に稀なケースのためこの場での説明は省く。


 名称持ちの手によって作られた魔具を“人工魔具”と呼び、精霊の力が長年溜まり続けて出来た魔具を“霊製魔具”と呼ぶ。

 とは言っても、世間一般に多く流通している魔具は専ら人工魔具であり、霊製魔具は存在自体が希少で、市場に出回ることは殆ど無い。仮に出回ったとしても、庶民が手を出せるような値段ではそうそう売られることがなく、売られているとしたら、魔具自体の性能が非常に乏しいことは必須である。

 

 そんな魔具だが、他に特筆する点として魔具を自身の身体へとしまうことが出来る...と言うより、正確には自身と"同化"させることが可能となっている。しかし実際には、魔具を使用する際同化を解いて実体化させなければならないため、唯々持ち運びが便利というだけである。

 それでも、その魔具に自身の血液を組み込むことで"自分専用(オーダーメイド)"といわれる専用魔具となり、他人が使えない仕様に変えることか出来る。



===========



「...といった具合に、魔具にもいろいろ種類があるんだ」

「なるほど、じゃあこのリモコンは何に当たるの?」

「えっと、それについてはわたしもちょっとよく分からないけど、どうやら精霊の力というか、精霊そのものが宿ってるみたいなんだ」

「そっか...ん?"みたい"?」


 

 リーズの言葉にユウが疑問を感じて、問いかけた。



「うん...わたしもその精霊自体は、実際に目で見て確認してないから、何ともいえないんだよ」

「ふ~ん、そっか。

 ...で、このリモコンをどうすれば俺自身と同化できるの?」

「あ、それはね。もうその魔具にはユウ専用の証として、ユウの血液と魔力を組み込んであるから、ユウが魔力を注ぐだけで思うように操れるよ」

「そっか...ちなみにこのリモコンの能力って一体...」



 そう言ってユウがリモコンに、自身の魔力を注ぎ込んだ瞬間、リモコンから光が走った。



「うぇ!?ちょ、何!?」

「ふぇ!?」

「む!?」

 


 そんな三者三様な反応を示しながら、ユウ達はその光の中心に目を凝らした。


 


 するとそこには、体長がわずか二十センチほどしかない、人間の少女が浮かんでいた。




「ん、ん~~~っはぁ~、漸く出られました~。だいぶ時間がかかりましたね~」




 その少女は、そんなことを言いながら、ユウ達を見回し、ユウに視線を止めると、



「あぁ、貴方がボクの初めての(あるじ)ですね!

 ボクは、この魔具の"魔具精霊(まぐせいれい)"です!これからよろしくおねがいしますね、主っ♪」



と言って、ユウに向かって満面の笑みを浮かべた。

 それを見たユウは、










(...なんかもう、お約束の展開だな...)



と、達観したような考えに至っていた。

 


と言うわけで、だいぶ色々詰め込んだ感はありますが、後々情報は整理していきます。

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