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No.010 リーズの能力とユウの魔力操作


「それじゃあ、さっそくユウの称号のために、一度わたしの称号の能力で実演するね」

「うん、お願い。けどリーズの称号は実践向きじゃないんでしょ?さっきのジョンさんみたいに、すぐ理解できるかな...」

「うっ、...だ、大丈夫!ちょっと微妙だけど、あくまで称号の発動のやり方ってだけだから、あまり期待しなくていいよ。ホント、自分でも自覚はあるから...」


「あーーーっ!...い、今のは気にしないで。別にリーズのことをおちょくったわけじゃないからさ...」

「ふふ、...いいよ、わたしは別に気にはしてないから。それにこの称号は、非戦闘系だからこそ強力なんだからね」

「そ、そうなんだ。...じゃあさっそく見せて貰おうかな」



「了解。じゃあ、わたしの称号の能力は解析系の能力だから、何かユウが元いた世界独自のものを見せて。それの意味や構造なら分かるから」

「えっ、そ、それだけ?って、今は称号名が言えないし、解析ならその方が納得しやすいもんね」

「そういうこと。それで、何かないかな?ユウの故郷独自のものって」

 


 そういうリーズに対しユウは、



「じゃあ、俺の住んでいた所で使われていた、漢字っていうものがあるんだけど、それでもいい?」



と、リーズに問いかけた。それにリーズは、



「"カンジ"?」



といった具合に、当然ピンときていないようだ。


 

「うん、漢字。でも国によっては、微妙に形や読み方が違ってくるんだけどね。それでも、俺のいた世界では、全体の一割以上の人(作者の主観です)が理解できるはずだよ」

「全体の一割以上!?そ、それって、もしかして一番多い人種ってこと?」


「いや人種とかじゃないから。それに、一番多く話されてるのは共通語って言われてる"英語"だよ。世界中の半分くらいの人は、完璧に理解できなくても少しくらいは話せたり、最悪返事くらいは出来るかな?俺自身も学校で習ってきたから、会話まではいかなくても、話したり、何を伝えようとしてるのかは分かるくらいだし」

「え、習う?別の言語を?それじゃあ、その"カンジ"とかいうユウ達の言語はいつ習うの?もしかしてユウって、すごく裕福な家の生まれだったの?」


「えっ、どうして?」

「だって、自分の国以外の言語を習うなんて...この世界だと、自分の国の言語すら書けない人たちもいるし、習うにしても自分たちが使う言語だけだから。

 別の国の言語を習う人もいるけど、それは裕福な家庭の人かそれが必要な上流階級の人たちや職業の人だけだよ。だから、ユウも裕福な家庭で育ったのかなって...」


「あ~、確かに俺の居た世界だと、そういう国がいくつもあるし、ましてや人にものを教える施設もないみたいだし」

「じゃ、じゃあ、なんでユウは二つも言語が分かるの?」

「いや~、俺の国はすごく識字率が高かったし、その"英語"っていうのは、国が習うこと自体を義務付けてるようなものだったから」



 そう言ってユウはリーズに、自身の国が元の世界において周囲よりどれだけ恵まれていたかを伝えた。(しかしユウの英語力は"英検3級をぎりぎりクリア"レベルである。※ユウの年齢は19歳です。)



「へぇ~、ユウってすごいんだね!」

「ま、まぁ、そうなのかな?っと、それよりもリーズの称号についてだけど、漢字で大丈夫?」

「あ、そうだった!ごめんごめん!...うん、それで問題ないよ。それじゃあ、ここにその"漢字"を書いて。言葉はなんでもいいからさ。だけど、最初はなんて書いてあるか教えて欲しいな......流石にその後からは、ユウが書いてくれた漢字から解析して読めるはずだよ」

「そっか、じゃあ...」



 そんなことをいって、ユウはリーズから手渡された用紙?に、鉛筆のようなもので『鬱憤』と書いた。



「はい、書けたよ。これは、さっき言ってた"鬱憤爆発"の"鬱憤"って漢字」

「へぇ~、こんな複雑な字なんだ。これは、覚えるのが大変だね...」


「まぁ、外国の人たちも俺の国が使う言葉の中でも特に、その"漢字"を覚えるのに苦労するみたいだからね」

「そっか~。それじゃあ、これから称号の力で解析開始するから見ててね」

「あぁ、分かった」



 そう言ってユウは、リーズから漸く称号の力の使い方を教えてもらえた。



「称号は名称と同じように、本人の力を表したものだけど、名称みたいにその力を増幅したり出来るんだ。それでも、名称よりは効果が大きいし出来ることも多いから、かなり希少な存在なんだよ」

「そっか...それじゃあ、お願い」

「うん...スゥ~、ハァ~......いくよ」



 そう言ってリーズは一度深呼吸し、気合いを込めたと思ったら、自身から"銀色のオーラ"を出した。その様子はというと、髪はゆらゆらと風もないのになびいており、深緑の瞳は真剣なものへと変わり、狂気すら感じるものだった。

 それだけでユウは、称号と名称には明確な"差"があることを理解できた。それほどリーズの今の様子は、他者を納得させるようなものだったのだ。




 そして、1分ほどの間そうしていたリーズは突然、



「...ふぅ~、解析終了っと」



と言うと、おもむろにオーラの放出を止めた。



「え、もう?いくらなんでも早すぎない?」

「まぁ、そういう能力だからね。これでも遅い方だよ。いつもならかかっても10秒くらいなんだけど、さすがに異世界の言葉だと漢字一つだけじゃ、このくらいかかるよねぇ~」


 

 そういうリーズに対し、



「は、はは、そういうもんなんだ...」



と、若干引きつりながらも、そう返した。



 実際、ユウ自身もすべての漢字を知っているわけではないが、鬱憤の漢字を咄嗟に書けるくらいには、自身の国の言葉(特に漢字)には自信があった。

 それを、この一瞬のうちにすべて解析できたリーズに当然引いていたのだ。(ユウですら、英語を五年以上も習ってきて完全に理解できていないのに)


 そんな、どこかのゲーマー兄妹すら真っ青な解析スピードを披露したリーズは、



「じゃあ、試しに何か問題出して。もう、完全に読めるようになったって言う証拠見せるから」



といって、ユウに先ほどの用紙を手渡した。



「あ~、それじゃあ」



そうしてユウは、少々強引に納得しつつも、リーズから手渡された用紙に先ほどとは別の漢字を書いて、再びリーズに返した。そこには、『忍耐』という漢字が書かれていた。



「あぁ、この漢字は"にんたい"だね。へ~、ユウの"耐え忍ぶ者"ってこんな漢字でも表すんだ」

「えっ、意味まで分かるの!?読めるだけじゃなくて!?」


「当然!わたしの能力は、"解読"じゃなくて"解析"だからね。文字を見れば、それがどんな意味を持つか分かるんだ。他にも、何かしらの機器を見れば、その構造も理解できるしね」

「あ、そうなんだ...」

「うん。さぁ、もしまだ納得してないなら、もう一度同じように試してもいいよ」

 


 そう言ったリーズに対しユウは、



「いいや、もう十分納得したよ。これ以上疑ったら、リーズに悪いからね。それに当初の目的は、リーズから称号の発動の仕方について見せて貰うことだったし、それに関してはバッチリ見せて貰ったから、大丈夫だよ。...ありがとう、リーズ」



といって、ユウはリーズへと感謝の言葉を伝えた。



「うん、どういたしまして。それじゃあさっそく、称号の特訓に移ろうか、って言いたいところだけど...」

「ん?どうかしたの?」


「いや、称号の特訓の前に、魔力操作について教えなきゃいけないんだ」

「えっ、どうして?」

「えっとね、称号...もちろん名称もだけど、能力を発動するにはそれに応じた魔力が必要なんだよ。だからそのためにも、最初はその魔力を自在に操れることが必須条件なんだ」



 そう言ってリーズは、先に魔力の使い方について教えることをユウに伝えた。



「そういうことなら俺は別にいいよ。というより、魔力操作を教えてもらえるなら、反論なんてないよ」

「そっか、じゃあ早速魔力操作について教えようか。じゃあまず始めに......」


 こうしてリーズはユウに、魔力操作について教え始めた。



 しばらくして、



「...とまぁ、こんな感じの説明でいいかな?」

「うん、大体感覚は掴めた、と思う」

「そう...じゃあまずは手のひらに魔力を溜めてみて。感覚はさっきも言った通り、身体の中の血液を手のひらに集めるみたいに、核から魔力を送り出す感じだよ」

「了解。じゃあ...」



 リーズからの助言を頼りにユウは、想像力を多大に膨らませ、



「はぁあああ!!」



と、気合いを込めたかけ声を発した。すると、



"ボワッ"



そんな効果音とともに、ユウの手のひらから青白い球体が浮かび上がった。



「お、おぉ~、もしかしてこれが?」

「そう!それが、魔力操作の基本"魔力球"だよ。けどすごいなぁ~ユウは、本当ならこんなに早くできないはずなのに、もうマスターしてるんだから。実際は、もう少しイメージが固まらないと出来ないんだけど...」

「あ、そうなの?結構気合い入れてやったら出来たけど」



 そう言ってユウは、自身も驚きながら、魔力球を見つめていた。

 実際ユウは、元の世界で身体からエネルギーを絞り出すような感覚を、マンガで何度も見てきたこともあり、イメージとしてはだいぶ固まっていた。彼の感覚としては、某何たらボールの○メハメ波を意識していたのだろう...。

 


「そ、そんな簡単なことじゃないと思うけど...まぁ、いいか。それより、その球を操作する方法だけd」

「あ、そういえば。リーズ、この"魔力球"って手のひらから発射できる?」


「へ?...まぁ、出来るけど。というか、次はそれを教えるつもりだったから」

「そっか。じゃあ、さっそくやってみたいんだけど」

「あ、うん。それじゃあ、あっちの岩に向かって、身体の中から弾き出す感じで放ってみて。 けど、最初は反動に耐えられないかも知れないから、ちゃんと腰を落としてね」

「了解!」



 そんな若干興奮気味のユウは、リーズの言った通りに若干腰を落とし、まるで拳銃でも撃つかのような体勢になった。



(弾き出す感じか。う~ん、こんな感じか、なっ!)



 そんなことを思いつつユウは、魔力球を岩に向けて発射した。



"バンッ!...バゴン!!...ガラガラッ"



 そんな音を響かせ発射された魔力球は、岩に衝突した瞬間爆発し、鈍い音を立て岩を崩落させたのだった。発射した衝撃に少しばかりユウは驚いたが、それよりも



(マ、マジでか...)


 

と、本人もびっくりな威力が出たことに、少しばかり怖くなった。しかし、それよりも驚いていた者がいた。



「え、えっと、ユウ?もしかして、わたしの説明っていらないのかな...」

「い、いやっ!リーズの説明がなかったらこんなこと出来なかったって!」

「でも、ユウ、出来てるし...」

「だ、だから......あぁ、そうそう!これはさ、イメージのお陰なんだって!...ほ、ほら!次は魔力を使った空の飛び方教えてよ。きっとリーズが教えてくれないと、絶っ対!出来ないからさ!」



「う、うん、分かった。...ハァ......よしっ、もう大丈夫!さぁ、次はいよいよ魔力操作で空を飛ぶ方法だよ」

「や、やった~...」


「...ユウ、やめて。何か、ツラい...」

「で、ですよねぇ...」

「ふ、ふん!さっきは結構余裕そうだったけど、今度はそう簡単にはいかないから!覚悟してね!」

「オ、オッス!」



 そうして、ユウは飛行の方法をリーズから教わり...、










...それから30分後、そこには自身から"赤いオーラ"を出しながら、空中に浮かんでいるユウの姿があった。名称には、飛翔者の下位版"飛空者(ひくうしゃ)"が新たに加わった状態で。

 ちなみに、その中間が"飛行者"である。



「...もういいもん。ユウなんて、わたしが教えなくても、なんでも出来るんだから、自分で勝手に強くなればいいじゃん...」



 リーズはいじけていた。ユウの理解力もそうだが、教えると言ったのに、ほとんどユウが自分でマスターしていき、自身の威厳がまったく見せられていない。正確に言うと、"いいところが見せられず落ち込んでいる"のだ。

 そんなリーズに、ユウは一度地面に降りてきて、



「え、えっと、リーズ?その~、機嫌直してくれないかな?」



と、少々困り顔になりながらも投げかけた。



「ムッ...別に、怒ってない。...怒ってないけど、...頭撫でて」

「はぁ~、...分かった」



 そう言ってユウは今回何度目かのナデナデ(作者命名)を敢行した。



「...♪///」

「(またうれしそうに...。これって何か、親しいってだけじゃ許されないことだよなぁ...)」


「...ん?どうしたのユウ?」

「いや、なんでもない。それより、そろそろ称号の特訓に入っても大丈夫かな?」

「うん!魔力操作ならこれだけ出来れば申し分ないし、他のことは追々教えていくよ」

「そっか」



 そんなやりとりをしながらユウ達は、次の段階へと進んだ。



「あれ?そういえばジョンさんは?」

「あぁ、ジョンならさっき"取ってくるものがある"とか言って、一度出て行ったよ」

「え、気づかなかったんだけど...っていうか、取ってくるものって一体...」



 ユウがそうつぶやくと、部屋の入り口からジョンが戻ってきた。なにやら、袋を担いでいる。



「おぉ、なんだ。魔力操作については教え終わったのか?」

「あ、ジョンさん。...はい、お陰で飛空者までは獲得できました」

「ほぉ~、凄まじいスピードで獲得したものだ。正直、信じられないな」

「そんなことありませんよ、ほら」



 そう言ってユウは、自身に赤いオーラを纏わせ、先ほどのように空中へと飛び上がった。さほど速くはないが、それでも十分に使いこなせている。



「ふむ、見事だな。いや、疑ってすまなかった」

「大丈夫ですよ。俺自身、ここまで出来るとは思ってもいませんでしたから」

「そうか。だが、それも努力の結果だろう。よく頑張ったな」

「はい、ありがとうございます。...ところでジョンさんは今までどちらに?」



 ユウはジョンからの賞賛に感謝の言葉を述べ、疑問に感じていたことを投げかけた。そんなジョンは、持ってきたものを地面に置き、



「あぁ、これを取りに戻っていたのだ。ユウの称号の特訓に使えると思ってな。その様子なら、今すぐ試してみるか?」



と言って袋を逆さまにし、中身を地面に向けて落としたのだった。


 






"ゴガンッ!!"

「.........へっ?」







 そんな明らかに地面が抉れた音を出した物体に、ユウは素っ頓狂な声を上げた。ユウの視線の先、今しがた地面に対しとんでもない圧力をかけたものとは、手枷(推定10㎏のゴツいやつ)と、重さ3~40㎏ほどはありそうな鉄球であった。鉄球に至っては2つである。




「...え、え~っと。...ジョンさん?一応、それはどう使うか伺っても...」

「ん?もちろんユウがつけて、特訓に役立てるつもりだが?」

「あ、あははは~、......ですよねぇ~...」

 


 そんなことを言って納得したかのように見えたユウは、これから始まる地獄のような日々に対し、既に若干絶望の表情を浮かべていた。

 なぜならここは、すべてのものの重力が十倍になる "重力室" であるからだから...。







 



(ふっ、久しぶりだな、あの頃の俺...)



 そんな数日前のことを、ユウは思い出していた。

 


リーズの名称や称号は、後々公開していきます。(おそらく、軽く二百話は後に...)

読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます!!

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