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第8話 究極(?)の悪役・中編

 前回(第7話)に続きまして、「敵は自分自身」の残り3パターンを考察してみます。



(2)物理的に存在し、自分の中からは生まれていないタイプ

 (よく似た性格や過去を持つ他者、生き別れの兄弟姉妹など)



(3)物理的には存在しない、自分の中から生まれたタイプ

 (精神世界における、自分の恐怖や過去の記憶など)



(4)物理的には存在しない、自分の中からは生まれていないタイプ

 (上記(2)の精神体や記憶など?)




 こちらも順番に。



(2)物理的に存在し、自分の中からは生まれていないタイプ

 (よく似た性格や過去を持つ他者、生き別れの兄弟姉妹など)


 →「サイボーグ009」のサイボーグ・0013(ゼロゼロサーティーン)、

  「風よ。龍に届いているか」のガッシュ、

  TVアニメ版「ガンスリンガー・ストラトス」の風澄徹と蘇芳司など



 このタイプの基本形は「他人とは思えないほど共感できる他人」です。主人公とは完全な別人であり、必ずしも外見や能力が似ている必要はありません。


 重要なポイントは「現在または過去の自分と、考え方や性格がそっくりである」ことです。「もし俺があいつの立場なら、きっと同じことをするに違いない」と分かってしまう敵。あるいは、「まるで(昔の)自分を見ているようだ」と胸が痛む敵。


 このタイプの敵が登場するストーリーは、悲劇や苦い結末へ繋がりがちな気がします。何しろ確固とした人間との争いですから、タイプA的なハッピーエンドへ持っていくには工夫が必要で、「成長譚」としてもほろ苦いものになりそうです。



 例に挙げた「サイボーグ009」のサイボーグ・0013(ゼロゼロサーティーン)は戦いを好まない優しい少年で、009こと島村ジョーと打ち解け友情を育みます。しかし、裏切り者の009を倒さなければ0013も組織に殺されてしまうため、二人はやむなく死闘を繰り広げます。そこに救いはなく、改造人間たちの悲哀をこれでもかと見せつける結末でした。


 これと反対の結末を導いた例がベニー松山氏のウィザードリィ小説、「風よ。龍に届いているか」でしょう。熟達の忍者である主人公ジヴラシアと、同じく人間の限界を超えた超戦士ガッシュ。それぞれに癒えない悲しみを背負った二人は、分かり合い尊敬しあう間柄でありながら、「そうしなければ自分自身を許せない」という理由で死闘に臨みます。


 この戦いのさなか、ジヴラシアは自分たちを縛っていた死の連鎖から抜け出す道を見出すのですが――この顛末は、ぜひ本作を読んで確かめてください。Kindle版も発売されていますよ! (あからさまな宣伝? 名著だからお薦めするんです!)



 ちなみに「Fate/Stay Night」のセイバーとアーチャー(エミヤ)の関係性も、このタイプに当てはまると思います。英霊となった時代は全く異なる二人ですが、大勢の幸福のために自らを犠牲にして戦い、その理想を誰にも理解されないまま果てた点で共通しています。それゆえ、最後まで貫き通した理想が間違いだった、偽善に過ぎなかったと叫ぶエミヤの言葉は、セイバーの胸に深く突き刺さることになります。


 結局、衛宮士郎が信念を貫くことで二人は救いを得ますが、ストーリー全体としてハッピーエンドかどうかは解釈が分かれるところでしょう。



 変化球的なパターンとして考えられるのは、外見も能力もそっくりなのに、過去が大きく違うために考え方や信条が正反対というタイプ。言ってみれば「IF」の世界の自分です。


 このタイプの例はアニメ版「ガンスリンガー・ストラトス」の風澄徹と蘇芳司でしょうか。違う世界で生まれ育った生き写しの別人同士が出会い、激しく対立しあう。この二人は共通の敵と戦うひと時だけは息が合うものの、最後には相容れない存在として戦い、決別してそれぞれの世界へ戻っていきました。6分類で言えば③「主義があり、それが主人公側と対立する悪」であり、それぞれに物語が続いていくタイプBの典型例と言えそうです。




 さあ長くなりました。致し方ありませんので(3)と(4)は次話へ回します。

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