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第5話 悩まない悪役・前編

 前回(第4話)では葛藤に悩む悪役について考察しました。


 おさらいすると、悪役に葛藤を持たせるメリットは下記の二つです。



 ・「譲れない何かを持っている=性格に筋が通っている」悪役は、読者が理解しやすく、感情移入しやすい。


 ・感情移入できるキャラクターの悩みは、それが深刻であるほど物語をドラマチックにする。



 しかしこの法則は、いわゆる「良識」を持った悪役にしか当てはまりません。


 作品によっては悩みも葛藤もせず、ひたすらやりたい放題する悪役もいます。これはこれで、読者に強烈な印象を残す場合があります。


 そういった「悩まない悪役」は、下記のように大別できそうです。



 (1)非人間的な悪役


  ①感情がなく、本能や命令に従って役割を遂行するタイプ

   (プログラムによって動く殺人ロボット、巨大肉食生物など)


  ②価値観が人間の理解を超えていて、何をしてくるか予想できないタイプ

   (悪霊・怨霊の類、異次元の生物など)



 (2)人間的ではあるが、揺るぎない悪意を持つ悪役


  ③常人には理解困難な価値観に基き、悪事を行うタイプ

   (いわゆるサイコパス)


  ④良心が欠落したかのような、純然たる悪タイプ

   (悪魔憑き、トリックスターなど)




 例としてはこの辺りでしょう。


  ①「ターミネーター」のT800(シュワちゃん)やT1000、「ジョーズ」のサメなど


  ②「ブライトライツ・ホーリーランド」のスレイマン、「魔法少女まどか☆マギカ」のキュウべえなど


  ③「PSYCHO-PASS」の槙島聖護、「デスノート」の夜神月など


  ④「バットマン ザ・ダークナイト」のジョーカー、「無限の住人」の尸良など




 ①はシンプルですね。「ターゲットを殺す」以外のことは何も考えず、邪魔者は容赦なく排除する悪役。感情を持ち合わせず、物事の優先順位が絶対的で迷わないため、葛藤の起こりようがありません。


 こういうタイプをラスボスに据えればアクションやパニック、スプラッターものになります。その代わり人間的なドラマを展開する相手としては不向きですから、登場人物たちが仲間割れしたり、疑いあうような関係性が必要になりそうです。



 ②は「分からない」ことが恐怖を呼び起こしたり、「こいつは一体何なんだ」と好奇心を刺激したりするタイプです。


 このタイプの悪役で、私が知るかぎり最もひどいキャラクターが「ブライトライツ・ホーリーランド」のスレイマン。時限式の魔法で獲物を笑い死に(突然ゲラゲラ笑い出し爆発四散する)させたり、聖人の頭を豚にすり替えたりと、何をやらかすか予測できないトリックスターです。おまけに神より強いというぶっ飛びぶり。そのカオスっぷりはもはや笑うしかありません。


「魔法少女まどか☆マギカ」のキュウべえも結構ひどい悪役です。彼or彼らは人間を実験対象としか思っておらず、人間が持つ感情を一種の病気として捉えています。言葉は通じるものの、価値観が違いすぎて会話が成立しない。おまけに倒しても倒しても次が現れる。一部では「デモンベインでも連れてこないと倒せない」と評されたとか……。


 悪役とは少し違うかもしれませんが、悪霊の類もこのタイプに分類できると思います。この世に現れる理由が恨みや未練なら理解できるでしょうし、問題を解決することも不可能ではないでしょう。しかし、そういった理由が判明しないまま物語が終わった場合、「本当に解決したのか? また出てくるのではないか?」という疑問と恐怖が残ります。正体不明、動機も目的も不明、生死の概念があるのかどうかも分からない、化け物だからこその恐怖です。


 こうした存在は何を考え、何を目的に行動しているのか、誰にも推測できません。いざ出現すれば、物理法則すら無視して厄介ごとを引き起こします。巻き込まれた人はたいてい死ぬか、死んだ方がましな目に遭わされる。こんな連中に「人間らしい葛藤」は期待できません。①と同じく、ドラマを生み出すのはもてあそばれる人間の仕事になります。




 少々長くなりましたので、分類(2)については後編に回します。

第6話「悩まない悪役・後編」に続きます。

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