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第3話 やられ役と「キャラクター」

悪役は悪役でも、ただのやられ役と「キャラクター」が存在します。両者の境目はどこにあるのかを考察します。

第3話 やられ役と「キャラクター」


 唐突ですが、クイズです。


 ここに「最強な主人公が大暴れする物語」があるとします。主人公は出てくる敵を片っ端からなぎ倒し、一撃で吹っ飛ばしていくことでしょう。ちょっと強い敵なら名前を覚えてもらえるでしょうが、しょせんはやられ役。遅かれ早かれ舞台から退場させられます。


 ……が、しかし。


 その中に一人だけ、最強の主人公でさえ一瞬「む?」と思う雑魚がいるとしたら、それはどんな雑魚でしょうか。「どうでもいい雑魚」と、「雑魚だけど一目置かれるヤツ」の違いは何でしょうか?


 私なら、「倒れても立ち上がってくる雑魚」と答えます。


 最強の主人公をおびやかすような能力なんて不要です。なす術もなくやられっぱなしで構いません。ただ「やられても立ち上がってくる」だけで、他の雑魚とは一線を画す存在になります。




 雑魚、雑魚と連呼するのは気の毒になってきたので、根性のある彼をとりあえずA君とします。何の特殊能力もなく、とりたててタフでもないA君は、なぜ立ち上がることができるのでしょうか。


 答えは簡単。「立ち上がらなければならない理由がある」からです。


 理由は何でも構いません。主人公への憎しみや嫉妬かもしれないし、単なる意地でも大丈夫です。


 しかし、どんなちっぽけな理由であれ、絶対に負けられないと立ち上がったなら。あるいは重傷を負いながらも助けを拒否し、自ら舞台を去ったなら。主人公も読者も、おそらくA君に何らかの感銘を受けることでしょう。


 そして無意識に思うはずです。「こいつには譲れない何かがあるんだ」と。


 その瞬間、やられ役のモブだったA君は、一人の「キャラクター」へと昇格します。雑魚であっても一目置かれる存在になったのです。




 敵キャラの外見と性格と能力を決めても、あまり記憶に残らないステレオタイプの端役になってしまうことは、よくあります。


 しかし「譲れない何かがある」ことを示し、強い動機を持って物語(ほんの1シーンで構いません)に関わってみせたなら、彼はもはやモブではありません。立派な「登場人物」です。


 背景と動機、譲れない何か。これらを持つ悪役は、主人公たちに負けないほど生き生きと動きます。時には作者が予想しなかった行動をとり、考えもしなかった名台詞を口にすることもあるでしょう。


「……それって主人公やサブキャラと同じなのでは?」


 はい、そうです。


 大ボスだけでもいいので、主人公を作るのと同じくらいしっかり練りこんでみると、物語は驚くほど豊かになります。その理由は、大ボスを倒すことに何らかの「意味」が生じるからです。




 分かりやすい例として、水戸黄門に懲らしめられる「お代官さま」と「悪徳商人」を考えてみます。


 彼らは「権力と金を持った嫌なヤツ」という、ステレオタイプのやられ役です。複雑な設定は必要ありません。


 しかし、もし二人が貧民の生まれで、親もなく二人で兄弟のように育ち、金と権力を憎悪しながらライバルを蹴落とし、出世してきたキャラクターだったら? 彼らをいつも通りお縄にしたら、ストーリーの結末はどうなるでしょうか?


「なにが葵の御紋だ! たかがガキ二人も救えねえくせに!」


 助さん格さんに打ち倒され、正義を呪う彼らを前に、水戸黄門はいつもの高笑いができるでしょうか。




 大ボスにしっかりした背景と動機を与えれば、あとは彼らを打倒するだけで、正義の味方が苦悩する物語が出来上がります。


 物語がどこへ着地するかは、悪役しだいで大きく変わる。ちょっと極端な例でしたが、ガッテンしていただけたでしょうか。




 さて次が葛藤の話。……になるはずですが、はてさて。

次話、「悩める悪」に続きます。

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