プロローグ
※はじめに、病弱主人公を書くにあたり、お詫びを申し上げます。
この作品は、読む方により苦痛を感じる表現、描写がございます。
病気こそ、架空のものですが、描写によりご不快に感じる場合がございます。
それをご理解のうえ、お読みいただけたらと思います。
…ケルン世界。
今時、珍しくもない剣と魔法の世界。
前世では乙女ゲーの舞台になったこの世界にわたくし
は、生まれた…そうです。
ごきげんよう、わたくしの名前はイリス・カメーリエ。
カメーリエ侯爵家第三子でございます。
わたくしの前世の記憶曰く、
わたくしは、この世界において【悪役令嬢】だそうです。
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記憶が戻ったのはわたくしが、五歳の頃でございます。
わたくしの前世の少女は、根っからのオタクで乙女ゲーをこよなく愛する少女でございました。
若干腐っていましたが、ごく普通の少女でした。ですが、不慮の事故で命を落とし、わたくし、イリス・カメーリエとして転生をいたしました。
わたくし、イリス・カメーリエは前世の記憶を思い出すまで、傲慢で我が儘を絵に書いた少女でした。
外見は、金色の髪に美しい緑の瞳…天使のような外見とは裏腹に、ジャ○アンだったのでございます。
イリス・カメーリエが悪役として登場する「エーヴィヒ・ブレーメ」の世界では、一人の少女を中心に、ドロドロな恋愛模様を繰り広げます。
攻略対象は、シュタム帝国に留学生とやってきた隣国の四人の王子たちと、シュタム帝国の皇太子
を合わせた5人の見目麗しい美青年たちと、隠しキャラのイリス専属執事の青年、ファンディスク追加キャラのイリスの双子の兄達、校医の3人…計9人ですが、イリス・カメーリエは、シュタム帝国皇太子ユリウス・フォン・ローゼン・シュタムの婚約者として登場いたします。
聖女のような外見とは裏腹に、強欲、傲慢で…ヒロインを徹底的に虐めぬきますの。そして、皇太子様にはベタベタと付きまとうストーカーヤンデレちゃんでございました。
イリスが何故、そんな性格になったかと言うと…両親の不和がありました。
すでに、完璧な政略結婚だった両親の仲はイリスが生まれた時にはすでに冷えきっておりました。
カメーリエ侯爵家は代々優秀な魔術師を輩出してきた家柄で、伴侶も優秀な魔術師を望まれます。
わたくしの父は、国で最も優秀な魔術師でしたが…所謂貧乏男爵の三男でございました。後ろ楯もなく、身分が低いため、出世ができませんでしたが、父の才能に目をつけた前カメーリエ侯爵の祖父は一人娘の婿とし、爵位を父に譲ったのでございます。
それにより、父は出世街道を爆進し、カメーリエ侯爵家の当主として恥じない地位と、名誉を手にいたしました。
しかし、この結婚に誰よりもショックを受けたのは能力を自負していた母でした。
母は祖父の跡を直接継ごうと必死に魔術を修得したのに、貧乏男爵家出の父にその座を奪われてしまい、その虚しさを父にぶつけるようになっていました。
なんせ、祖父がした事は母の努力を全て無駄にしてしまったのですから…感情の行き場がなかったのでしょう。
でも、なんだかんだいっても3人子供を生んでるんですから、愛情はあるんでしょうが…身分差や行き違いで、夫婦仲は当時、最悪な状態でした。
イリスは構って欲しいときに、構ってくれなかった両親に寂しさを覚え、我が儘な性格になってしまったのでしょう。
両親の愛情不足で、兄弟もイリスには無関心…そんな冷えきった家庭で育ったイリスは、人を愛することがわからず、婚約者であるユリウス殿下に愛情を求め、執着していき…ユリウス殿下と恋に落ちるヒロインを殺そうとするまでにいたるのです。
そして、ハッピーエンドでは、ユリウス殿下に捕まり獄中にいれられるという王道パターンな話です。
ですが、ユリウス殿下はエーヴィヒ・ブレーメの中でも最難関の攻略キャラ…なのでございます。
まず、ユリウス殿下は無表情、無口系王様キャラでございます。容姿は絶世の美女と呼ばれた皇后様そっくりで、銀髪碧眼の氷のような美男子ですが…性格が読めないキャラで、選択肢を選んでも好感度が上がらない。
全てのステータスを100%にしないと攻略できない
所謂、無理ゲーチートキャラでございます。
この世界のユリウス殿下もそうかと聞かれたらどうかはわかりませんが、多分、スペックは同じでしょう。
それらの知識や記憶を思い出したのは、わたくしが五歳の時でした。
その日は、いつものように、構ってほしくて両親の側によった時でございました。
「貴女はなんで、わかってくれないんだ!!仕事なんだ、しかたないだろう!」
「仕事!?休日なのに!?いつもいつも、そう、子供をわたくしばかりに預けて、本当はどこの女と遊んでいるのやら!!」
「な、貴女って人は!いいか?この件が解決するればイリスは皇太子殿下の婚約者になれるんだ。私はイリスのために、」
「まあ、何がイリスのためですか!ろくに遊んであげていないくせに!」
「そう言う貴女こそ、やれ茶会だ、やれ夜会だと湯水のようにドレスやアクセサリーや、美容に、金をつかって、…母親なら、公式な場に頻繁にでかけるのを控えたらどうなんだ!!」
激しい夫婦喧嘩に、歳の離れた兄様たちはうんざりして、さっさとご自分の部屋にもどられ、居間にはわたくしと両親と、控えの侍女しかおりませんでした。
わたくしは、父様に絵本を読んでもらおうと居間にきたのですが、壮絶な夫婦喧嘩に出るに出れなくなっておりました。
その時でございました、ふたりの怒鳴り会う声をきいて、急に頭がクラクラしはじめたのは…
実は数日前から体調がよくなく、侍女たちからは風邪だろうと飲み薬をもらい、寝ていたのですが、その日は体調がよくなっていたので絵本を読んでもらおうと、居間にやってきたのです。
どうも、また体調が悪くなったのか、景色が揺れ、体が鎧を纏ったように重くなり、急激な吐き気を感じました。
額からは滝のような汗がこぼれ始め、わたくしは等々、大事に抱えていた絵本を、床にパタリと落としてしまいました。
さらに喉の奥から競り上がり、焼き付くような熱い液体を我慢できなくなったとき、
今までにない、わたくしの様子に気がついたのは、部屋の隅で控えていた侍女でした。
「お、お嬢様!?」
「っうぇ」
ゴポリと音をたてて、口から吐き出されたのは、
───────赤い赤い、真っ赤な血…。
…これが人生はじめての吐血でございました。
真っ白なエプロンドレスに、真っ赤な血がポタポタとこぼれ、真っ赤な高級な絨毯に染みが広がり始めたとき、全ての景色がスローモーションのように、流れて見えます。
…その時でございます、前世の記憶を走馬灯のように思い出したのは…
足のちからが抜けて、ゆっくりと、天井が視界に見えたとき、わたくしの意識はそこで途切れてしまいました。
「い、いやああああああ!お嬢様!!」
「な、!?」
「イリス!?」
侍女の悲鳴に、両親はふりかえると、口から血を流して倒れるわたくしの姿に、頭が冷えたようで、慌ててわたくしを抱えて寝室に運んだそうです。
その時の侍女の話だと、二人はたいそうわたくしを心配していたようで、喧嘩もせずに侍医がくるまで必死に泣きながら側にいてくれたのです。
のんべんだらりとした、冷めた性格の長兄と、妹よりも男友達を優先するやんちゃな次兄もさすがにこの状況に困惑したようで、それはそれは酷い狼狽ぶりだったそうです。
一応、兄弟の情はあったみたいですね。
そして、事情とその時の様子を聴いた侍医に「子供の前で何をやっているんだ!」と叱られたそうです。
…まあ、そうですよね。
その時からでした、父はわたくしを皇太子の婚約者にすることを諦め、わたくしと出きるだけ一緒にいてくださるようになり、母も、ストレスからの浪費をやめて、父と寄り添い、わたくしの看病をするようになりました。
互いに、良く話し合って、行き違いや誤解が解消されたのか、夫婦仲は大部改善され、前より愛情をくださるようになったのです。
兄様たちも、わたくしが寂しくないようにと絵本やおもちゃを持って遊びに来てくださるようになり、わたくしはとてもとても、幸せです。
でも、これだけは言わせてくださいませ…
…原作のイリス・カメーリエは病弱ではありませんでした。
ええ、ゴキブリのごとく、しぶとい女の子でした。
決して、儚いとか、壊れそうとか言う形容詞がつく女の子ではございませんでした。
…原作とは違う?
と認識した時、わたくしな壮絶な闘病生活の始まりのゴングが、カァアアンと、甲高い音たてて告げたのでございます。
…わたくしのイレギュラーな病と共に、世界の歯車は思いもしない方向に廻りはじめる事となりますが、それはまた次回に。
続きは前編にて、お会いいたしましょう。
それでは、ごきげんよう。
▼エーヴィヒ・ブレーメ
中世…プロイセン、ドイツ風をイメージしたファンタジー系乙女ゲー
シュタム国立ブレーメ学園で、花の名前が付いたキャラクターを攻略していく。
メインは全員王子
貧乏貴族令嬢が王子達に見初められるシンデレラストーリー
隠しに執事と、追加キャラで双子の侯爵令息と、校医がいる。
エンディングは三つ
キャラクターから花を貰うか貰わないかでエンドが変わる。
・花を貰うエンド→ハッピーエンド別名【結婚エンド】
・花を貰えないエンド→バットエンド別名【サヨナラエンド】
・花を貰わないエンド→ノーマルエンド別名【友情エンド】
・好感度が確認できない設定なので、プレイヤーは最後までエンディングが分からない。
ステータスを何をあげるかで攻略キャラの好感度が変わる。
・【運動】→ヴァールハイト・グランツ・キルシュバオム(桜)
・【教養】→スピラル・ロートス(睡蓮)
・【美容】→ヴィント・ナルツィッセ(水仙)
・【作法】→エーデル・ラヴェンデル(ラベンダー)
・【芸術】→ネルケ・モーナット(撫子)
・【総合】→ユリウス・フォン・ローゼン・シュタム(薔薇)
追加ディスク
・【教養】【運動】
グラナード・アプフェル(柘榴)
・【教養】【作法】
シュバルツ・カメーリエ(赤椿)
・【運動】【美容】
ヴァイス・カメーリエ(白椿)