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罪の意識  作者: 鈴羅
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神隠し

「人には必ず罪がある」と定義した人は一体どこの誰だったのか…?私は、その人物を思い出すことはできない。けど、この記憶は私が物心ついたころからずっと頭の中に残っている一番古い記憶ともいえる。さらに、この人の言葉には続きがある…「人でなくとも『この世』に生きる全ての命には生まれる前から罪を持っている」とも言ったのだ。私は、前世に関係があるのではないかと考えている。


そして、私が住むこの宮城県にあるとある地区だけでなく日本…いや『この世』と呼ばれる全ての世界では昔から神隠しが絶えない。さらに、その神隠しにあった人々は戻ってきたという報告はなかった。


この神隠しも私のこの記憶と全く関係がないとは言えない。…そう考えている。今となっては、この現象は日常茶飯事となりつつあるために日本政府では消えた人間を一時的に行方不明者リストではなく死亡者リストに書き込み4年以内に現れない場合は永遠に死亡者として登録される。


幸いにも私は、学生でもなければ仕事をしている会社員でもない『ニート』だ。だからこそ、私がいつの間にか突然消えたとしても誰も困らない。でも、どうだろう。私がこの現象を止めることができるのなら一躍私は有名人に……いやいや、それ目的で行動したらまず間違いなく墓穴を掘りそうだ。


などと自分の部屋で自分の妄想を繰り広げていた。

そして、私はおもむろにTVの電源を付けると正に神隠しの話題が持ち上がっていた。

どうやら、日本の中で男女合わせて六人程消えたそうだ。その年齢層は様々で、10代に満たない者から高齢者と呼ばれる60代のお爺ちゃんまでで六人が消えたのだ。それも、その消える現場を見ていた通行人や友人によると道路から突然白い手が伸びて来ただの…いきなりその人がなんの前触れもなく光となって消えてしまっただの消失の仕方は人それぞれ違っていた。

それ以外にも神隠しに合う前に死んでしまう人などもいた。もちろん、死んでしまう人は普通では考えることができないような死に方をするそうだ。


そう考えると、いつどこで自分が同じ目に合ってしまうのだろうかと不安になりどこかで暴動を起こしてしまう人もいるだろうとそう考える人も普通なら出るのかもしれない。

しかし、不思議とそんな現象は起こらなかった。


何故なら…


何故なら、消えてしまった人が関わっている記憶はその人が消えてから四年後に全て消え去ってしまうからだ。だからこそ、四年経つと死亡者リストに書き込まれる。だが、このリストに書き込まれたときその名前はただの文字となる。

もしかしたら、私の友人だった人の名前もそこに書いてあるのかもしれない。


それはともかくとして、私自身もいつ神隠しに合うのか全然分からない。だからこそ、自分の記憶にあるあの言葉の中で自分の『罪』を明らかにしてみようとそう考えた。


しかし、自分の罪とはいったい何なのだろうか…?

物心ついてから、私は一度も『罪』と呼ばれるようなことはしていない。…と思う。


いろいろと考えていると、玄関についているインターホンが部屋に鳴り響いた。それから時計を確認すると、既に夜中の二時を回るところだった。

それを見てから、もう一度インターホンがなったドアの方を見ると、もう一度インターホンが鳴り優しく「トントンっ」とドアをノックする音が聞こえた。


そして、そのドアに向かって「どちら様ですか?」と声を掛けると、ドアの向こうにいるべき者からは何の応答もなかった。

あるとすれば、私の問いかけに答えるようにドアをノックする音だけが聞こえてきていた。


誰とも分からないのだから、ほっとこうと無視しようとしたが一度声を掛けてしまったのでそうとも行かず、仕方なくそのドアに近づいていくと私の接近に気が付いたのかドアの向こうの者はドアをノックするのを止めてただドアが開くのを待っているかのようにも思えた。


そして、私が玄関の扉を開くとドアの向こう側に誰もいなかった。辺りを見渡すようにして目的の人物を探すが、人の影は一つも見つけることができなかった。


仕方なく扉を閉じると、見たことのない男性が居間に置いてある机の方に向き茶か何かを飲んでいた。彼は私の視線に気づくと私の方に向き直りその口を開いた。

「お迎えに上がりました」

「迎えに?どういうことですか?」

「おや、ご存じでない?私は、今や世間では有名なんですよ。」

と彼は笑って見せながら、私の方に向かってきて私の肩の上に手を置いた。

「どこにも行かせませんよ。貴方がその罪に気が付くまでは…。」


『罪』…その一つの単語だけで全てが繋がった。この人が『あの世』とも『この世』とも思えない世界に連れて行く神隠しの原因なんだと…、これを理解できた頃には私は今まで暮らしていた部屋から…世界から跡形もなく消え去った。


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