花火大会
本当は、今の時期に合わせて物語を進行させたいんですが‥‥こういう形になりました。‥‥そのうち、追いつきます。
「ヤバイ、遅刻だ。」
ともやは慌て駅の改札口を出た。
「昨日部長と飲み過ぎた」
‥‥待てよ?この状況は
そう‥‥彼女と初めて出会った時みたいだ。僕は少しでも早く彼女に会いたくなった。
今日仕事が終れば、また会える。そう自分に言い聞かせて気持ちを仕事に切り替えた
「待った‥ごめんね」
「ううん」
僕が待ち合わせの場所に行くとすでに彼女は待っていた。
休みの日以外は、お互いにこうして仕事が終わってからの数時間しか会えない。彼女の方は両親と住んでいるし、心配かけたくないからそれは僕も同意見だ。
「‥もう夏も終りね」
「そうだねあんなに暑かったのに」
季節の移り変わりはあっという間だ。つい最近まで蒸し返すような暑さだったのに、今は肌寒さを感じるくらいになっている。
二人で街路樹をゆっくり歩いている。
「そう言えば‥明日は花火大会があるんだよね」
「えー、見に行きたいな」
「じゃあ‥明日行こっか」
「行く、行く」
彼女は子供のように喜んでいる。
「私、浴衣着ていこうかな」
「うん、見てみたいな」
「‥本当に?」
「是非着て下さい」
「しょうがないね」
彼女は笑って答えた。明日は彼女の浴衣姿が見られる嬉しいな。
次の日の夕方
待ち合わせは花火会場だ。彼女がお楽しみは後にね♪‥と言ったのでそう決まった。
河川敷には、人がぽつぽつと集まってきた。彼女の姿を探していたら遠くの方から手を振って走って来るのが見えた。思わず僕も手を振り返した。
後に視線を感じて振り返ると、小学生になったばかり位の子供がこちらをじっと見ている。僕は恥ずかしくなって視線を外した。
「ハァハァ‥ごめん遅くなっちゃた」
彼女は息を切らしながら僕の所に来た。
「‥‥どう?」
「凄く綺麗だよ」
彼女は、青地に朝顔の柄の浴衣を着ていた。
「‥ちょっと子供っぽいかな」
彼女は恥ずかしそうに笑った。
「似合ってるよ」
「‥ありがと」
いつの間にか辺りは暗くなっていた。そろそろかな。なんて彼女と話してたら‥
ヒュュュー
‥‥ドン
一発目の花火が上がり、その後次々に花火が上がっていく。
「素敵ね」
「‥そうだね」
彼女の横顔が花火の光に照らされて綺麗に輝いている。僕は彼女の方をずっと見ていた。
この時間がずっと続いて欲しい。そんな願いを込めて彼女の頬に優しくキスをした。
彼女がこちらを振り向いた。もう一度キスをした。
「あー、あのお兄ちゃんとお姉ちゃん、チュウしてるよ」
先程の子供が、こちらを指差し母親に話している。母親は慌て子供に何か小声で話している。
僕達は真っ赤になって顔を隠した。
花火大会も無事に終わり集まってきた人達もみな自分達の家へと帰り始めた。
その人混みの中、僕達は、けして離れないようにしっかり手を繋いでいた。僕は彼女に‥
「明日は休みだからどこ行きたい」
「遊園地」
「遊園地?」
「私、彼が出来たら一緒に行きたかったの」
「いいよ」
「楽しみ〜」
僕は、遊園地なんて子供の頃以来。僕の方も少しだけワクワクしていた。
「じゃあね、お休み」
「うん、また明日ね」
僕は、彼女に手を振ってタクシーに乗るのを見送った。