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星の涙

公園といっても、ベンチとブランコしかないちっちゃな公園だ。子供の姿もなく、僕と彼女以外は誰もいない。お互いに一言も喋らないまま、時間だけが過ぎた。




何か話題を‥‥‥




ともやは必死で考えたが何も浮かばない。彼女の横に座っていると緊張して頭が真っ白になってしまう。彼女の方を見たいが、体が動かない。




「‥どうしたの?具合が悪いの?」



彼女は僕に尋ねた。その声を聞いて彼女の方を見た。彼女は心配そうにこちらを見ている。



「‥大丈夫だよ。心配かけてゴメンね。‥その‥‥ちょっと緊張しちゃてね」



「なーんだ」



彼女の顔が笑顔に変わった。



「恐い顔してるから、嫌われたかと思ったよ」


「そんなに恐い顔してた?」


「うん。何かね〜こうやって、眉間にしわを寄せてたよ」



彼女は僕の真似のつもりなのか、変なポーズをとった。



「なんだよ、それ‥‥ハハハハ」


その姿があまりにも面白くて思わず笑った。



「フフフ‥‥やっと笑ってくれた。良かったー」




彼女のおかげで緊張が解けた。さっきまでと違っていろんな言葉が、次々に出てくる。そのどうでもいいような話題を、彼女は静かに笑顔で聞いてくれていた。僕は嬉しかった‥‥会社の同僚ですら、そんなに話をすることは無かったし、家に帰れば一人。



人と話すことって簡単なことなんだ‥‥自分で高い壁を作ってただけ、そんな壁を彼女は取り除いてくれたような気がした。






‥‥ありがとう







辺りは、いつの間にか薄暗くなってきた。




「‥‥そろそろ帰ろっか」


「‥‥うん」




僕は、ベンチから立ち上がり彼女に言った。






「ほらっ、星」


「ホントだ。一番星だね」




僕も空を見上げて言った。




「ねぇ‥星の涙ってお話、知ってる?」


「‥‥星の涙?」







「うん、私の好きなお話なんだけど‥‥世界中の人が流した悲しい涙は、空に昇ってお星様に集まるの」



「‥‥星に?」


「そう。そしてお星様はその悲しみの涙を、元気の雨に変えてまた地上に降らせるの」


「素敵な話しだね」


「私の好きな小説なんだよ」




彼女は笑顔で言った。



「‥‥綺麗ね」



彼女は空を見ながら言った。



「うん、綺麗だ」




僕は、

「君の方が綺麗だよ」

‥‥って言いたかった。けどさすがにそれは言えなかった。代わりに彼女の手をそっと握った。そして彼女も、僕の手を優しく握り返してくれた。










‥‥そして、二人は初めてキスをした


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