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現在
8月◯日
夏の暑い日。アパートの前には引っ越し屋の車が止まっている。
近所の子供達は夏休み。にぎやかな声がアパートの中まで聞こえてくる。
運送屋の人と近所の人、そして僕で荷物を運び出している。
「これで終わりになりますね。後はこちらで責任をもって運ばせてもらいます」
「はい、お願いします」
「それではまた後日」
「ありがとうございました」
「やっと終わったねぇ」
「すいません。お手伝いありがとうございました」
「気にしなくていいよ。それより新しい所にいっても頑張るんだよ」
「本当にお世話になりました」
「あぁ‥‥元気でね」
近所の人のいいオジサンは帰っていった。
荷物を運び出してなにも無くなり、さっぱりと片付いた部屋‥‥‥
‥‥もうこの部屋ともお別れか‥‥
いろんな思い出が詰まった場所‥‥二人の空間。
ふと手に持っている一枚の写真を見た。そこには、こちらをみて笑っている女の人が一人。
‥‥もう一年か‥‥君がいなくなって‥‥
ともやは一人呟く‥‥
あの日二人がはじめて出会った場所‥‥
昨日ように思い出す。
えみ、覚えているか‥‥?
懐かしいね、あの日から始まったんだよね。