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4.志を同じく持つ者

「ルビウス殿!」


「リド様もいらっしゃるぞ!」


わぁと歓声を上げる人混みの中、その中心に立つルビウスの後ろ姿をリリアンヌは呆気に取られて眺めた。側では、あまりの人混みにレイチェルがすっかり怯えてしまっている。


「…なんだ、この輩は!」


「ご覧の通り、我々と志を同じく持つ者達ですが。」


リリアンヌも同じ疑問を心の内で持っていたが、それは驚く国王によって問いかけられた。そんな国王相手に、ルビウスはさらりと言った。


「こんな少人数で、リヴェンデルの軍に適うはずは…。」


「馬鹿だなぁ、これだけのはずないだろう。」


そんな二人の間へと割って入って来たのは、マイクというルビウスの義兄である。


「馬鹿だと!このリヴェンデルの王に対してなんたる…」


「ほら、そう言うところが馬鹿だって言ってるんだ。分からないのか?」


「義兄上。」


小さく諭すように注意した義弟に、おどけたように首をすくめた。ルビウスは、そんな義兄から視線を戻し、国王と真正面から向き合う。


「…37代国王陛下、異議の申し立ての理由を申し上げましょう。一、国の第一原則より、王は魔法省、並びに魔法師・魔術師に関して一切干渉せずとの法を自身の独断で破った。二、犯罪者を政に取り込む事に関して。三、古きより従えていた魔法師達への非道。以上三点により…。」


「ま、待て!」


淡々と述べるルビウスに、国王はしゃがれた声を上げてそれを遮った。


「…なんですか?」


「儂は王だ独断をして何が悪い!それに、非道な事をしてはおらんぞ。何かと理由を付けて、新王政の制度に刃向かうきっかけを作り上げているだけだろう!古来の魔法師達は頭が堅いのだ、王政に邪魔にしかならん…。」


「呆れたな。」


傲慢で自らの非を認めようとせず、見下した態度を取る国王に、黙って聞いていたアーサーが声を上げた。


「お前が立っていた地位は、誰のおかげでそこまでこれたと思うている。始祖の魔法師達が、お前たち王族に力を貸してやっていたからだ。魔法の力なくして、国一つまとめられないお前達に、どれだけ尽くしてやったかしれん。」


「恩を売る気か?ふん、お前達の助太刀など在らずとも、国一つや二つ簡単に治められるわ!お前達魔法師が王に慈悲を貰わなければ、その力はただの厄介な魔。それをわざわざ使ってやっているのだから、感謝して欲しいぐらいだ!」


「呆れてものも言えんな。…付き合ってられん。」


喚き散らす国王を無表情に見下して、アーサーは風を呼び出した。隙間風が集まって、その身が竜巻に巻かれると、辺りにいた魔法師達は小さく頭を下げた。リリアンヌが、あまりの風に腕で顔を遮っている間に、アーサーの体は後片もなく消え去り、再び目を向けた時にはその場に小さな木枯らしが吹くだけだった。


「我が国王を侮辱するとは何たること!許さんぞ…。王に逆らった反逆罪で一人残らず捕らえろ!」


顔を真っ赤にさせて怒る国王の声に、あらちこちらから国軍の服を纏った兵士達が姿を表した。扉という扉を塞がれ、おまけにこの建物には規制魔法が敷かれている。逃げ道は無さそうに見えるが、辺りにいる魔法師達はいたって平然としている。


「決裂…ですね、陛下。意見の食い違いにしては、酷いですが。我々は、宣戦布告させて頂きますよ。ただし、二年。その間は様子を見させて頂きましょう。それでも、一向に改善が見えぬならば、相応の制裁を。」


ゆったりと歩くルビウスは、背後にいたリリアンヌとレイチェルの背後へと回って、肩に手を置いた。


「制裁だ?儂を裁く者など、この世にはおらんぞ!」


あまりの傲慢さに、リリアンヌも呆れて唖然としていれば、不意に頭を撫でる手があった。見れば、セドウィグがそっとその手を頭に乗せたまま言った。


「…次は何時会えるかわからない。ルビウスの言うことをよく聞いて、いい子にしているだよ?」


戸惑いながらも頷いたら、にっこりと笑ってその手を離した。


「…ルビウス。」


セドウィグのその静かな声に、ルビウスが頷いて声を張り上げた。


「心を同じく持つ人々よ。ここに集まってくれたこと、心から感謝する。しかし、時と同じように、人の心は移り変わるものだ。しばし時が経っても、変わらず同じ志を持つならば。…宵の刻、その月が空高く上がる時に、再び会おう。」


「一人も残らず捕らえ、古代魔女の首は儂に差し出せ!だだし、ルビウスとセドウィグには手を出すな。」


喚き、頭から湯気が立ち込めるほど激怒した国王の言葉とルビウスの言葉が丁度被ったが、不思議な事に魔法を込めたルビウスの言葉だけが、耳に心地よく残った。

その言葉を受け止めた各々(おのおの)の魔法師達は、近くにいた魔法師に声を掛け合った。特技の魔法で姿を消す者、変身魔法で動物に転身して兵士達の足元をすり抜ける者、血の気が多い者は兵士とやり合い、兵士達を交わして逃げる者など、それこそ性格が表れる。

散らされる兵士の陣を眺めていたルビウスは、弟子達を引き寄せて笑った。


「怯むな!行け(ゆけ)っ!」


混乱を極める小さな部屋の中、驚きに身を動かせないリリアンヌであったが、不意に息苦しさを覚えてルビウスを振り仰いだ。


「…しっかり掴まっているんだよ?」


眉を寄せたルビウスに返事をする間もなく、魔法の重圧が体にかかった。制限を越えた魔法を抑えようと、建物の重圧は増えるばかりだ。しかし、低く棘があるルビウスの呪文により、分厚い壁のような膜は大きな音共に破れた。その反動によって投げ出された大海原のような魔法の渦に、無意識にルビウスの胸元にすがった。

圧されるように建物を後にして、リリアンヌは何がどうなっているのかわからなくなった。乗った事はないが、船酔いになったような気分だ。空と一体になったような錯覚をお越しながら、カインドの邸へと向かっているのを頭の隅で認識した。


「叔父上に怒られるな。本当は規制魔法を壊さず出てきたかったのだけれど、仕方ないか。…あぁ、もうすぐ邸に着く。緩和魔法と自衛魔法の準備をしなさい。」


声は聞こえるが姿はなく、自分の姿も見えなくなっている。そんな声を頭の上から聞きながら、アーサーが直した規制魔法を先程破ったのだと認識した。


「…自衛魔法ってなに?」


「だから、自分で自分を守る魔法で…って前に教えたろう!」


耳の近くで、レイチェルとルビウスの話をしている。そのため、少し耳がムズムズとする。


「…そんな昔の事忘れたよ。」


けろりと言うレイチェルに、ルビウスがうなだれように見えたのは、気のせいだろうか。


「…とにかく、今は君達の分まで緩和魔法をかけてあげられないんだ。だから、なんとかして自分で…。」


ルビウスが話す途中で、見えない体が引き寄せられるように急降下を始めた。絶叫を上げる中、必死に緩和魔法を唱える。


速度は緩むことなく真っ逆さまに邸のどこかの壁を通り抜け、そのまま部屋の中を転げ落ちて行った。


「…うおぅ!」


間近に迫った壁の手前を寸での所で止まる事が出来、リリアンヌはぐっと目を見開いた。どこかで机に突撃していたり、壁にぶち当たって物が落ちる音が聞こえてきたが。


「あ、ぶなかった~。」


一人、それとなく呟いて、リリアンヌはそろそろと立ち上がった。まだ、船に乗っているような気分が抜けない。

ふらふらと近くの手すりに縋って、目を細めて辺りを見渡した。見れば、そこはよく見知ったカインド家の図書室であった。一階のこんもりと本が積まれいる所からは、レイチェルの乳白色の髪が。すぐ真下の壊れた机の残骸からは、脚が二本生えている。…ルビウスであろうか。

そろりと近くへと階段を降りていくと、遠巻きに机の残骸と本の山を見比べた。


「…起こした方がいいのかな。」


恐る恐る机の残骸に足を進めていると、いきなり残骸の中からルビウスが起き上がった。


「…うわあ!なにっ!?」


突如のことに悲鳴を上げたリリアンヌをよそに、ルビウスは残骸を放り投げながら叫んだ。


「あぁもう、なんだって言うんだ!レイチェルっ!」


「私はリリアンヌよ!レイルはあっちで伸びてる!」


くわっと怒りの形相で睨まれたことに怯むことなく、怒鳴り返した。指差すリリアンヌを見てから、ルビウスは小さく唸って机の残骸から這い出た。彼が歩くたびに、机の部品が床へ落ちてゆく。


「…レイチェル!ったく、もう。君みたいな手の掛かる子は、カインド(うち)の弟子の中で初めてだよ。」


史上最強だね。そうぼやくルビウスを手伝って、レイチェルを本の山から救い出した。二人が四苦八苦しながらレイチェルを引っ張り出していると、戸口から声が掛かった。


「お帰りなさいませ、ルビウス様。…派手なお帰りで。」


向日葵色の髪を下げるのは、この邸の執事。ジョルジオである。


「…ジョルジオ、レイチェルを部屋まで頼む。僕はもう休むよ…、魔法省の旧館から飛んできたから疲れた。」


「…さようで。」


ふらふらとジョルジオに近づくと、こっそりと耳打ちした。

リリアンヌにきちんと謝ったという内容であったが、伸びたままのレイチェルを眺める当人には、勿論聞こえていなかった。


「リリアンヌ、悪いけど話は明日…。」


ジョルジオに手短に何やら指示したルビウスは、そう言って図書室を去っていた。


「…ルビウスさんって、いっつも大切な事は後回しよね?」


近づいてきた執事に、そっと不満を込めて言ってやると。


「仰る通りです。」


長年努める執事は、否定もせずあっさりと認めた。その言葉に思わず笑って見せると、ジョルジオは、まるで出来の悪い息子に呆れるように肩をすくめて笑った。


翌日。まだ日も昇り切らぬ早朝に、優しくとは到底言えぬ起こし方で、夢の中からリリアンヌは起こされた。


「う~ん、まだ寝れる…。」


「リリア、起きて!シャボン玉だよ!」


「…しゃぼんだま?なにー、それ。」


まだ眠い目を擦りながら明るい部屋を見渡すと、窓を全開にしたレイチェルが、ほらっと外を指差した。渋々暖かい寝台から離れて、窓の外を見やる。


「…わぁ。なに、これ。」


空高くに、薄い膜がふんわりと邸を包んでいる。

まるで、シャボン玉の中にいるような気分にさせるそれは、大掛かりな結界であった。


「綺麗だね。」


レイチェルが言うように、普段良くみる結界より、うっすらと虹を映すその膜は、空を眺めるのになんら邪魔にならない。リリアンヌも、こんなに綺麗な結界は初めて見た。


「行こう!」


先程の眠さも忘れ、慌てて着替えるとレイチェルを連れて部屋を飛び出した。

顔を洗って食堂に向かうと、邸がいつもより静かに感じられた。


「なんかあったのかな?」


「…さあ。」


レイチェルと顔を見合わせ、食堂に向かう。


「おはようございます。レイチェル様、リリアンヌ様。」


開け放たれた扉の向こうには、二人分の朝食を準備するジョルジオが一人でいた。


「おはよう。…ねぇ、何かあったの?」


いつもとは違う雰囲気が邸を包んでいることに、昨日の話が関係あるだろうと悟る。


「ルビウス様からお話なさるとのことです。朝食が済み次第、ジョナサン様のお部屋にと。その際、今着てらっしゃるお召し物は着替えるようにとの仰せです。レミとソラが、お召し物を準備しておりますので。」


リリアンヌ達が席についてからそう言ったジョルジオは、一礼して部屋を出て行った。

やけに早い朝食は、レイチェルと二人という会話もない食事となり、起きてすぐということもあってか、あまり食事は進まなかった。兄姉弟子が全員揃って食卓についた、あの頃がやけに恋しくなった。

いつもならまだ寝台で丸まっている時間帯に朝食を終え、双子の侍女が準備していた古着に着替えた。恐らく上の弟子達のお古であろうその服は、汚れが残る加減からして、ハイディリアの兄弟の服だと伺える。

カインドの弟子になってからは、小汚い服や男性服など着せられたことはなく、リリアンヌもレイチェルも戸惑っていた。


「あぁ、来たね。二人とも。」


きちんと洗ってあると言われても、男物の服を着ることに抵抗があるレイチェルは、泣きはらした顔でジョナサンの部屋に佇んでいたルビウスを見た。


「…そんな顔で見ないでくれ。今日だけだから。」


訴える涙目に、隣にいるリリアンヌさえも同情しそうであるが、ルビウスは苦笑して優しくレイチェルの頭を撫でただけだった。リリアンヌにしてみれば、貧乏孤児院で育った名残で人のお古などは当たり前であったから、その点はなんら問題はなかった。ただ、男物を着たのは人生で初めてであった。


「…今日は、ジョナサンとジュリアンの部屋の片付けをしようと思ってね。汚れるだろうから、古着を来てもらったんだよ。」


そう言うルビウスも自ら使用人のお古であろう衣類を身につけ、口を端切れで覆った。まるで、どこかの豪邸に盗みにでも入る容姿に、リリアンヌとレイチェルは目を丸くさせた。


「凄く汚いんだよ。男の子の部屋って言うのは大抵ね。」


覚悟したほうがいいと言いながら、二人に同じような端切れを渡して扉を開けた。


部屋の主を失って、かなりの月日が経つその部屋は、本人の私物とガラクタの判別がつかない得体の知れないモノで溢れかえっていた。埃、蜘蛛の巣などいつの頃か、リリアンヌの部屋をその姿にしたような、そんな部屋であった。

ルビウスの三番弟子、ジョナサンは、独り立ちした後も、稀にリリアンヌやレイチェルに鉢合わせしないように、着替えや私物を取りに来ていたようで。衣類や小物は見当たらない。


「すっごいね。」


思わず感心してしまうほどの汚さに、レイチェルの口からほぉーとため息が漏れた。


「…どうやったら、こんなに汚くなるのかな。」


酷く臭う異臭に、手に持っていた端切れを口と鼻を覆うように巻きつけて言った。


「同感だね。部屋は、その者の本来の性格を映すとは、よく言ったものだけど。」


リリアンヌの言葉に、四苦八苦して窓側へと向かっていたルビウスが、呆れたように部屋を見渡した。やれやれと首をすくめた彼は、窓を開け放してから言った。


「…さぁ、今日中に終わらせるよ。」


もうこの世に居ない、兄弟子の部屋。思わず感傷的になってしまいそうになるから、仕切りに言葉を交わした。

ルビウスが昔、彼にあげたという魔力が込められた陶器が、ゴミ入れになっていたことに、あげた本人が眉を寄せて苦笑し。何故か、レイチェルの無くしたはずの片方の靴が出てきたり。いつの頃かのリリアンヌの靴下が、野球で使用する棒のおおいに使われていたりした。

天井からは、様々な物を吊り下げていたようで、魔法の支えを失ったそれらは床にめり込み、ルビウスが小言を零していた。


「…うわっ!ヒッドイ部屋っ。先生、私も手伝うわ。」


昼食休憩も終わった昼過ぎ。

のろのろと作業を開始させたリリアンヌ達の元へ、オリヴィアがやって来てそう言った。面倒だなと顔が言っているが、古着を身にはつけているから、気持ちだけは手伝うつもりのようだ。

少しだけ賑やかになった部屋で、思い思いにゴミと化した私物を袋に詰めて行く。

魔法を使えば、瞬時に片付くこの空間。

それを彼は、丁寧に自らの手で片付ける。それは、ある意味儀式のようなものだと彼は言う。


魔法師の遺体は、身体だけでも禁薬を作れる材料にされるほど貴重価値とされ、その力を悪用使用とする者が、近年でも増えてきたらしい。そのため、埋葬や火葬せず、自身の身体が世から跡形もなく消える呪いが、贈り名に組み込まれるようになっている。

昔、墓はあれど、その身がそこに眠っていないことを嘆いたある魔法師が、その者の遺品を墓に遺体の代わりとして埋葬したことから始まったこの儀式。

今では、魔法師の遺品整理は親族はもちろん、師または弟子、友人を含めた魔法師と一般人によって行われるようになった。賑やかに無き人を悔やみ、本人の大切にしていたものを墓に埋葬するのだ。

埋葬するものは、金類、生物、生身のものなど規制はあるが。墓守り(魔法師にのみ限定で、墓を守る人間ではない者)の立ち会いの元、魔法を使わず皆の手で終える七後に式(本人が死んで、一週間後より後に行われるため)とよばれる儀式。

魔法を一切使わない、少し変わった魔法師独特の葬儀だという。


「遺族の気持ちを整理させる一環とも言う者もいるけれどね。七後にななごにしきが終われば、涙を見せない者が殆どだよ。」


その者と今生きる者とが、本当の別れを惜しむ儀式なのだと。


随分片付いた部屋で、彼の点数が悪い学校の試験紙を片手に、そう言った。


「…遅れてすいません。」


夕刻、ジュリアンの部屋へと移動した頃に、今度はえらく疲れた様子のフレドリッヒがやって来て言った。


「悪いね、フレドリッヒ。忙しいだろうに。」


「遅いっ!フレッド兄さん。」


既に片付けに飽きた様子のオリヴィアは、ジュリアンの日記をパラパラと捲りながら憤慨している。


「…フレドリッヒも忙しいんだよ。人の日記を勝手に読まない!」


「「ああー。」」


リリアンヌも読もうと首を伸ばした所で、ルビウスに取り上げられ、二人揃って抗議をあげた。

そんな声に耳を貸さず、彼は埋葬する用に準備した、黒い麻袋にそれを仕舞った。


「リアンの部屋は随分綺麗なんですね。」


手袋をはめながら見渡すフレドリッヒは、割とすっきりと部屋の感想を述べた。


「おんなじ兄弟でも、えらい違いだよ。」


クスリと笑うルビウスを横目に、リリアンヌはため息をついて日記を諦め、手近にあった袋に手を伸ばして触れて驚いた。


「!?」


服の山であるその場所から、もぞりと何かが動いたのだ。


「な、なんかいるんだけど。」


正体を確かめようと、恐る恐る中をのぞき込んだ。


「リリアンヌ、無闇に覗くもんじゃ…」


慌ててルビウスが注意するが、既にリリアンヌは手と頭を突っ込んでいた。すると…。


「んぎゃあっ!」


真っ暗の中、なにやらリリアンヌの顔面に激突し、隙間からソレは逃げ出した。


「なに、なんか出てきた!なにが飛んでるの!?」


「フレンッド兄さん、こっち来た。」


「レイル、足にへばりつくなっ!身動きが取れないだろ!」


「全員、動くな!あ、こら。リリアンヌ!聞こえなかったのか。」


リリアンヌが顔を抑えてうなっている間、得体の知れない生き物で部屋が大騒ぎとなり、フレドリッヒは驚いたレイチェルにしがみつかれ、オリヴィアが騒いでいる。ルビウスの一言で、一旦部屋の中は静かになったが、リリアンヌは一体さっきの生き物は何だったのかと身を起こして部屋を見やった。

なにやら紅い物体が、目にも留まらぬ速さで部屋の中を飛び回っている。正体を見分けられないほどの速さに頭が痛くなった頃、ルビウスがソレの行動を詠んで封じた。


銀色の檻に捕まったソレは、今では見かけなくなった生身の小竜であった。



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