最後の夜
攻略は順調だ。
エルファのおかげで前だけに集中できるし、マッピングで表示されたルートを見れば、迷うこともない。
エルファと出会ってから数日が過ぎたが、俺達は既に40層を超えていた。
エルファが言うには50が最上階らしいから、あと10層で、じーさんとの約束を果たせる。
「…にしても、大丈夫か?エルファ。」
「はぁ、はぁ、だ、大丈夫よ…。平気っ。」
どう見ても辛そうだ。
身体能力強化は、切ってるはずなんだが、それでもこのペースはエルファには辛いらしい。
エルファも女の子だしな。歳は知らんけど。
「とりあえず一旦休もう。別に塔は逃げやしない。」
「そ、そう、ね…。あなたが、そう言うなら。」
俺達は見通しの良い開けた場所を探して、近くの岩?に腰を下ろした。
なんかこの塔、壁はガラス質っぽいのに、いたる所にこういうのが置いてある。
いわゆるオブジェクトだな。
こういうちょっとした休憩や夜営の時に助かってるけど、こういう場所は魔物も寄り付きやすいから注意が必要だ。…とエルファが言っていた。
「…ねぇ、あなたの魔法って、どうやって発動させてるの?」
「どうって…こう、手を振りかざして、出ろー!って。」
「…聞いた私がバカだったわ。参考にならない意見、ありがとう。」
「しょうがないじゃん。実際そうだし。」
そうなのだ。この世界、まほー、ちょーかんたん。
よくラノベでは、イメージが大事って言うけど、なんかそれすらも超越してる感じ?
炎出ろって思えば出る。
おかけで他の魔法は全然使ってない。
夜営の時に水を出すくらいだ。
「まぁ多分、俺の溢れんばかりの才能が溢れ出した結果だな。はっはっはっ!」
静かになった隣を、恐る恐る覗く。
まるで俺を憐れむかのような瞳で、エルファがこっちを見ていた。
「そういうのやめてよぉ!傷つくからぁ!!」
なんだかんだ俺達、いい感じじゃね?
タッタッタ
ザシュ!
ズバッ!
タッタッタ
…順調だ。
順調過ぎる気すらする。
もうすぐ最上階なんだが、未だに苦戦のくの字もない。
後ろで必死についてくるエルファを、気遣う余裕すらある。
最近はレベルアップも遅くなってきたが、それでもまだまだ余裕がある。
「なぁ、エルファ。」
「……なに?」
「なんか、妙じゃないか?もうすぐ最上階なのに、敵の強さが変わらなすぎる。ずっと、ゴブリンばっかだ。数は多かったりするし、武器だって持ってるけど、それだけだ。」
「……そう?それの何がおかしいの?」
「なんつーか、塔って願いを叶えてくれるんだろ?なのに妙にハードルが低いっつーか、簡単すぎる気がしてよ。」
「……私は結構キツイけどね。あなたが強すぎるんじゃない?」
「そうなのかな?」
「少なくとも、私がお祖父様から聞いていた塔はこんな感じだったわよ。」
「そ、うか。だったら…問題ないのか?」
エルファとの会話で、一応の納得を得る。
…それなのに。
なんだか嫌な感じだ。
エルファも、それとなく感じているのか、まともに話をしていない。
ダメだ、なんかわからんが、このままじゃダメな気がする。
「エルファ、今日はそろそろ休もう。」
「…そうね。そうしましょう。」
そうして、その辺に落ちてる薪を拾い、火をつける。
だいぶ慣れてきたな、なんて詮無いことを考えながら、ぼーっと過ごす。
そういえば、いつからか日記、付けてなかったな。
じーさんの手紙渡した日が最後か…。
泣いても笑っても、明日になれば最上階に到達するだろう。
そうすれば多分、俺とエルファの道は別れる。
今日は二人で過ごす最後の夜かもしれない。そう思ったら、自然とノートに手が伸びていた。
「…日記、書くの?」
エルファが尋ねる。
どこか、怯えているような顔で。
「 ああ、多分、今日で最後だから。」
エルファは潤んだ瞳でこちらを伺っている。
エルファも、寂しいのかもしれないな。
うーん、そういえば、前に日記書いてたときは興味ありそうだったよな?
「エルファ、ちょっとこっちに来いよ。」
胡乱げな目でこちらを見てくる。
いや、違う違う、そういう意味じゃない。
「ほら、俺の国の文字。この前日記、覗き見してだろ?せっかくだし、教えてやるよ。」
「っ!い、いいの?」
「別に減るもんじゃなし。構わんよ。ほれ、、これが、エ、ル、フ、ァだ。わかるか?」
エルファはノートから目を離さない。
何かをこらえるような目をしている…。
「…エルファ?大丈夫か?」
「……、何でもないわ。ありがとう。私、あなたのこと、忘れない。…じゃ、おやすみなさい。」
そう言ってエルファは横になってしまった。
ご都合主義なら、ここもうちょっと、調整してくれませんかねぇ。ダメ?




