仲間と現実味
じーさんと別れて、塔に登り始めた俺を待っていたのは俺TUEEEだった。
「っていうのは冗談としても、マジヌルゲーになってねぇ?」
俺は何匹目かわからないゴブリンを真っ二つに切り裂きながら考える。
…え!?俺のスキル強すぎ!?
「こんなしょーもないこと考えても、危なくならないのは、自分が強いのか、スキルが強いのか…、それともお前らが弱いのか!!」
そう言いながら手から炎を出し、群がるゴブリンを一掃する。
しまった。燃やしちゃうと素材が取れない。
「まぁいっか、使う予定もないし。どうせゴブリンの魔石なんて二束三文だろ。」
そんな事を言いながら飛び掛かってくる巨大な蜘蛛を袈裟斬りにする。
大人しく天井にでも捕まってろ!
《精神耐性》と《アイテムボックス》のおかげで魔物との戦いもスムーズになり、俺はノリノリ快適に塔を攻略していった。
《レベルアップしました。各種ステータスが上がりました。》
このお知らせも、何回聞いたかわからない。
そして、順調に進んだ第10層目で、《気配感知》はいつもと違う反応を俺に知らせた。
「ん?なんだこの反応、やけにでかい…。多分人くらいあるぞ。それと、さっきの蜘蛛が戦ってる?…まさか!」
人のいる可能性に体が自然と反応する。
しかもこの感じ、ちょっと不利そうだ。
早く行かないとまずいな!
《気配感知》を信じて、《身体能力強化》でダッシュ!すっかり慣れたもんよ!
通路を曲がって開けた場所で見たのは、エルフの女の子が、蜘蛛に囲まれながら、何とか耐えている姿だった。
結構ギリギリそうだな。間に合え!
俺は一気に女の子と蜘蛛の間に割り込み、返す刀で蜘蛛を真っ二つにする!
「おら!残りは燃えちまえ!」
もう片方の手から炎を浴びせ、残りの蜘蛛を黒焦げにした俺は、女の子の方に向き直す。
輝くような銀髪にスッキリした目鼻立ち、青い瞳は意志の強さを表すかのように切長だ。
さっきは夢中で気付かなかったけど、めっちゃカワイーじゃねーか!
イカンイカン。こういうのは最初が肝心だ。平常心平常心。
「あー、えっと…大丈夫?そのー…。」
「!…エルファよ。ありがとう。礼を言うわ。」
「お、おう。お安い御用さ。あ、俺はー」
「あなたも塔を登ってるの?」
「きりー、あ、ああそうだ。近くの小屋で爺さんに頼まれてな。他に宛もないからとりあえず上まで行くつもりだ。」
「…そう。私も同行していいかしら?私も上に行かないといけないの。」
「ああ、構わんぜ。一人より二人、旅は道連れ世は情けってな。」
「…?ありがとう。よろしくね」
「ああ、よろしく。」
その後、二人に増えたのもあってか、攻略のスピードはグングン上がっていった。
決して俺がカッコイイところ見せたかったわけじゃない。
ああ、違うとも。
効率がいいとはいえ、流石に1日で登り切るのはキツイ。
ちょうど行き止まりにぶつかったこともあり、俺達はそこで、一晩過ごすことにした。
焚き火の灯りに照らされながら、どちらが喋るでもない、気まずい空気が流れる。
まぁ共通の話題もないし、しょうがないんだけど。
「…ねぇ、あなた、小屋の老人に言われて来た、って言ってたわよね?」
「ん?ああ。偏屈なじーさんだったよ。こっちの話全然聞かねーで、塔塔塔塔…。俺じゃなきゃ相手できなかったね、ありゃ。」
「そう。あの人は私のお祖父様なんだけど。」
「ナマ言ってすみませんでしたー!!すごく親切なおじい様でした!」
「いいのよ。お祖父様がどういう人かは、私も知ってるから。」
そこで会話が終わっちまう。
クッソォー気まずいぜええ。
あまりの居心地の悪さに耐えきれず、俺は日課でもある日記を書こうと、ノートを取り出した。
「あら、意外と学があるのね。」
「なんだそりゃ。確かに似合わないってよく言われるけどよぉ。」
「ごめんなさい。他意はないわ。…記録を残すのは大事だものね。」
「お、わかるかー。こうやって毎日あったことを付けとけば、いつか振り返ったときにヒントになるからな!意外とややこしい案件のヒントが大したことないひとコマに隠れてたりすんのよ。」
「案件ってのは良くわからないけど、言いたいことはわかるわよ。」
「まっ、とにかく俺はこうやってその日あったことは残すことにしてるんだ。流石に昨日は忘れちまったけどな。」
「…ねぇ、お祖父様の最期を看取ったのは、あなた?」
「!…知ってたのか。」
「何となくね、わかるのよ、私達は。」
じーさんもエルファもエルフっぽいけど、そういうテレパシー的なのがあんのかな?
「俺が看取った訳じゃないが…。書き置きは受け取ったぜ。何書いてるかわかんなかったけど。」
「へぇ、見せてくれる?」
そう言われ、俺はポケットに突っ込んだままの紙片を渡す。
「こっちは、私も読めないわね。」
そう言って癖ツヨ日本語の書き置きを避けて、異世界語(多分)の書き置きを読み進めるエルファ。
なんか、見る見る顔が強張ってんだけど…。
俺の悪口とか書いてないよね?
と思ってた矢先、エルファの目元が潤みだし、溢れた滴が床に染みを作った。
「…ごめんなさい。あなたも困っちゃうわよね。いきなり泣かれても。」
「いや、じーさんが死んだなら、仕方ないさ。近しい人との別れは誰だって辛いよ。」
「…あなたもそうなの?」
「…もちろんさ。」
じーさんが亡くなったときの気持ちはもう、思い出せない。
今、俺の心に、悲しむ余裕はあるのか。
二人、火を囲み、夜は更けていく。




