気がついたら
拙い文書ですがよろしくお願いします
ほんとに突然のことだった。
目を開けたら知らない女性が心配そうに私を見つめていた。
「大丈夫?今日は暑いから具合が悪くなったの?」
と優しく話しかけられた。
私は反射的に大丈夫ですと答え、その女性の顔が近くて少し視線を逸らしたら、私よりも何倍も大きな馬が視界に入ってきて驚いた。
吃驚しすぎて腰を抜かし、女性が咄嗟に私を支えてくれたことで転ばずにすんだが、その拍子に自分の手を見てまた驚いてしまった。
自分の手が小さな子供の手になっていたから。
そして同時に自分の背も縮んでいることにも気がついた。
「……え、え⁈て、手が小さい…。それに身長も⁈なな、なんで???」
そんな慌てっぷりを見た女性が
「あら、本当に具合が悪くなっちゃったのね」
と少し慌てて私を抱き上げた。
私は抱き上げられたまま、ここはどこなのか、あなたは誰でなぜ私は小さいのかと聞きたいことは山ほどあったが、混乱して口から言葉が出てこなかった。
女性は私のそんな様子を見て暑さのせいだと思ったらしく、焦った様子で足早にその場をあとにした。
歩くこと数分、女性の家だと思う建物につき、部屋に入りやっと私はそこで下ろされた。
私のおでこを触りながら、
「熱は無さそうね…。少し待っててお水を持ってくるから」
と言い、女性は部屋から出て行ってしまった。
私はまだ混乱したままで、部屋の中を忙しなく歩きまわりどうして子供になってしまったのかを考えた。
(昨日は何事もなく寝たはずだし……。それに街の景色も全く違ったしこれって……)
私がそんなことを考えていると、扉を開けて先ほどの女性が水を持って入ってきた。
「はいお水、飲んでね。」
と優しく子供をあやすように言われ、その水を飲んだ感覚が本物で、これは夢じゃないんだと感じた。
水を飲んだ後、しばらく様子を見ていた女性は
「しばらく安静にしていてね。」
と言って部屋から出ていき、また私1人だけの空間になった。
先ほどよりも幾分か落ち着き、冷静に考えようと部屋を見渡す。
部屋は玩具箱や子供用の小さい机に椅子、それにベッドまで置いてあった。
おそらくこの部屋は子供部屋で、私がその子どもなんだと思った。
(つ、つまりこれって異世界転生ってやつなの?え、本当にあるのそんなこと信じられない……)
でも起こっていることは本当で、手の感触や匂いも感じてこれが現実なんだと思い知らされた。
(とにかくまずは何かないか探してみよう。この子の名前とかあったらいいんだけど…)
そう考え、私はこの部屋をくまなく探し始めた。
探し始めてすぐに名前はわかった。
マリンという名前で、机の上の紙に練習したあとが残っていた。
苗字まではわからなかったが、名前がわかっただけでも上々だろう。
そのあとも何かないか探したが、名前以外に特に気になるものは見つけられなかった。
少し情報を整理してみようと、机にあった紙に書き出していく。
まずこの子供の名前はマリンで女の子、そして背丈は100センチほど。
(ちゃんとはわからないけど、この身長だと3、4歳くらいなのかな)
部屋は掃除がきちんとされていて、物が多いと言うわけではないが子供の必要なものは置いてあるので、生活は安定していそうだった。
子供の手では思いの外書きにくく、字を書くのは時間がかかった。
それでもひとつずつ書き込んで、情報をまとめていく。
でも肝心のここがどこなのか検討がつかなかった。
馬が街中を歩いていたので、私の元いた場所ではないことはわかるが、それではあまり役に立たない。
(そういえばあの女性はマリンちゃんのお母さんってことだよね。なら聞いたら教えてくれるかも…!)
わからないなら聞いてみようと、扉の前まで行くと子供の身長ではドアノブまで手が届かないことに気づいた。
背を伸ばしてみても全然届かなくて、部屋に置いてあった椅子を使っても少し足りない。
(どうしよう。呼んだら開けてくれるかな。)
「…えっと、おかあ……いや、ママ!あけて!」
言動を幼くして自分が出せる精一杯の声で扉の向こうの女性に話しかける。
すると、すぐに母親らしき女性は扉を開けてくれた。
「どうしたの?お腹が空いた?少し待って、何か作るから」
そう言って、私を抱っこするとリビングだと思う部屋に連れて行ってくれた。
(でもなんて聞いたらいいんだろ、ストレートにここはどこって聞いたら、まだ暑さにやられてるって思われるかも…)
私がどう聞こうか迷っているうちに、女性は椅子に私を下ろすと、待っててねと言って台所に行ってしまった。
馬鹿正直にあなたの娘さんの体に入ったので色々教えてくださいと言っても信じてくれるわけがないし、最悪頭がおかしくなったと気味悪がられてしまうかもしれない。
(ここは慎重に聞かないとだよね。……そうだ!マリンちゃんは字を練習していたみたいだし、子供の興味ってことで聞けるかも!)
どうやって聞こうかまとまったところで、前を向く。
台所に立つ女性は水色がかった黒髪で、確かさっき見た瞳の色は緑が入った黒だった。
だから最初彼女をみても綺麗な人だとは思ったが、すぐにここが異世界だとは気づけなかった。
(部屋で確認したとき、マリンちゃんの目の色はわからなかったけど、髪は濃いめのクリーム色だったな。まだ見かけていないお父さんの色なのかな。)
そう考えていると、女性が小さく切られたりんごを持ってきてくれた。
「小さく切ったのだけどどう?食べられそう?」
と女性はこちらを気遣うように言った。
「ありがとう、おか……ママ!いただきます!」
まずはりんごを食べてから質問しようと思い、食べ始めた。
その様子を彼女は安心したように見ていた。
一通り食べ終わり、本題に入ろうと口を開く。
「あのねママ。ききたいことがあるの!」
そう元気よく言うと、女性はどうしたのと優しく聞いてくれた。
「あのね、じぶんのなまえはかけたから、つぎはすんでるここのなまえをしりたいの!」
子供っぽくそれでいてわざとらしすぎない程度に聞く。
「名前も書けて、街のことも知りたいなんてマリンは偉いねぇ。えっと街の名前はね、オルラドって言うのよ。」
(オルラド…。自分の知ってる街だったらって少し願ってたけど、全然聞いたことないな…。やっぱりここは異世界なんだ。)
ここが私の知っている場所ではないことを再確認して、もう一つ気になったことを聞いた。
「あと、あとね!ママとパパのなまえも、かきたいからおしえて!」
そう言ったら彼女は嬉しそうに、
「ママはミリアで、パパはモランて書くの。本当にマリンはすごいわ!」
と私をぎゅうっと抱きしめてくれた。
それが嬉しくてなんだかそわそわした。




