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守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
一章.リヒトとエレノア

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4.魅了騒動

エレノア9歳、翌年には貴族の子女はほぼ全員入学するというアルバストル学園への入学を控えていた。しかし、ロレーヌ侯爵は迷っていた。


「エレノアを学園へ入学させても大丈夫だろうか。高位貴族の子息令嬢のみが在籍しているのであれば問題はなかろうが…。」


アルバストル学園は子爵や男爵の子女も机を並べて授業を受ける。全ての爵位を持つ者の子女が一堂に会するため、それぞれが持つ魔力の強さも様々なのだ。


「入学前に、エレノアの『魅了』の強さと影響力、それにどれくらい自身でコントロールできているか確認したい。3日後にアルバストル学園で開かれる入学前の交流会に参加してみなさい。」

「はい、お父様。」


ロレーヌ侯爵の執務室から出たエレノアは、扉の外で待機していたビアンカと顔を見合わせ、飛び上がって喜んだ。


「まさか、交流会への参加が許されるなんて。どうせ許可が出ないと思って何も用意していないわ。急いでドレスと髪飾りを選びましょう。」

「ええ、これほど大きなお茶会への参加は初めてですので、気合い入れてとびっきり可愛く仕上げます。お任せください。」


嬉しそうなエレノアを見て、サンドラの目がきらりと光る。扉の向こうで盛り上がっている彼女たちの声を聞きながら、そんなに張り切らない方がいいのでは?と思うロレーヌ侯爵の予感は、その3日後に見事的中することになる。




「エレノア様は私の隣に座ります。」

「こちらの方が景色が美しいですわ。さあエレノア様こちらに。」

「僕の隣に。」「いえ、こちらに。」


お茶会開始早々にそれは起こった。

はじめは可愛らしい席の取り合いであったが、そのうちエレノア置いてけぼりの、令息令嬢入り乱れた取っ組み合いに発展して、まもなく交流会はお開きとなった。




ロレーヌ侯爵は予定時刻よりも大幅に早いエレノア帰邸にため息をつき、彼女を執務室に呼び出した。


「エレノア…。」


事情を聞き出して、普段はあまり崩さない表情を大きく歪めた。


「はい。」

「想像のはるか上、最悪の結果だね。」

「…申し訳ございません。」


その表情を見て、大変な事をしてしまったとエレノアは思うものの、本心では今ひとつ何が悪かったのか実感が湧かない。そんなエレノアの内心を察してか、ロレーヌ侯爵は丁寧に説明を始めた。


「エレノアがわざと騒ぎを起こしたとは思っていない。だが、『魅了』のコントロールが全くできていない事実が露呈した。君はただの子ども同士の喧嘩だと思うかもしれないが、これがもし学園の高学年、さらに騎士科や魔法科の生徒同士で起こったならどうだ?」

「えっ?」


今まで想像もしていなかった事を聞かれて、呆けるエレノア。その様子にため息をつき、ロレーヌ侯爵の顔は父親のソレから侯爵のソレへと変わる。そしてビリッと空気が変わった。


「かなりの確率で重傷者が出る。最悪の場合には死人も。」

「わたくしの『魅了』で人が死ぬ?」

「そうだ。君の能力は『魅了』を通り越して『蠱惑』。そして最大の問題は君にその力を使う意思がなくとも発動してしまう事。アルバストル学園への入学は断念しなさい。勉学、魔法の家庭教師に加えて、魔力コントロールの専門の師もつける。しっかりと魔力のコントロールができるができるようになるまで、外出は必要最低限に。」

「…はい。」


その時のエレノアにとって、アルバストル学園に入学できない事や外出禁止などどうでも良かった。

自分の能力のせいで人が死ぬかもしれないという事実を突きつけられ、大きなショックを受けていた。


「わたくしの『魅了』、いえ『蠱惑』の能力で人が死ぬなんて…考えた事もありませんでした。」


例えば、火の魔力のコントロール不良で爆発を起こしたり、水の魔力で津波、風の魔力で竜巻、土の魔力で地震など、成長過程の子どもたちが時折、魔力の暴走を起こしてしまう事がある。

しかし、あくまでも成長過程の子どもが起こす事故。魔力量が低いため、普通は小規模の暴走にとどまり、大惨事には繋がらないのだ。


「エレノアの魔力が大き過ぎて、コントロールの能力が間に合っていない。それに、暴走した時の周りへの影響力は計り知れない。一刻も早くコントロールできるように精進しなさい。」

「はい、お父様。」


それから、エレノアのさらなる引きこもり生活が始まるとともに、地獄の魔力コントロールレッスンが始まった。

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