24.魔物退治ですよ
「エレノア、本当に申し訳ないのだが、外交への同行をお願いできないだろうか?」
北の国境の街ロスタルのシンデレラカフェに姿を見せたリヒト。城を模した内装の中にいる彼は、平民の変装をしていても完全に王子様だ。しかし顔色が真っ青である。店内の内装がブルーで統一されているせいではないはずだ。
「もちろん、喜んで。どちらに参りましょうか?」
エレノアの即答の答えに驚きつつも、その顔色に少しだけ血の気を取り戻す。
「ありがとう、エレノア。僕は君のそういうところが好きだし、とても助かるんだけど、どこに何しに行くかくらい聞いてから返事をした方が良いんじゃ…」
キラキラ笑顔のエレノアを見て、リヒトは苦笑いを浮かべる。
「行き先はヘレンツェ、南の国だね。王太子同士の交流会って名目だけど、何をしに行くかとなれば、まあ魔物退治ってところかな?」
「ヘレンツェですか!」
さらに瞳を輝かせるエレノアに対して、魔物退治って聞こえなかったのかな…とリヒトは不安になる。
「わぁ、海を見られるなんてとても嬉しいです。どんな所なのでしょう。」
アランデル王国は四方を別の国と陸続きで繋がっており、海には面していない。
友好国である南の国ヘレンツェは海に面した温暖な地域で、大きな港も沢山ある。アランデルの船も停泊させてもらい、我が国の船での貿易の玄関口ともなっている。しかも格安価格で。それはなぜかと言うと、何か困った事があった時にアランデルの武力もとい魔力を借りるためである。
ヘレンツェの国民は、元々は大陸外からやってきた民族に由来していると言われており、魔力の低い国民が多い。大柄な体格の人が多いため、単純な武力であれば、アランデルにも引けを取らないのだが、魔物相手となるとそう言うわけにはいかない。
「察しが早くて助かるよ。そう、海で大型の魔物が頻繁に目撃されている様で、大型の商船も何隻か被害にあっているそうなんだ。」
「…なるほど。海外から輸入していたカフェで使うスパイスの値段が跳ね上がったと思ったら、それが原因ですか。」
微笑むエレノアの周りに漂う空気の重さが変わる。黒いモヤが見えそうだ。
「ちなみに今回も2人で向かうことになっているんだけど、いいかな?」
「ええ、もちろん。2人の方が気楽だし、移動も早いですしね。」
「ん?…エレノア。前回は緊急事態だったから、時間がなくて文字通り(空を)飛んで移動したけど、今度はきちんと外交日程組まれているから、馬車で向かうよ。」
「そうなのですか?リヒト様との空の旅も楽しかったんですけど。(同じ速さで飛べる人はリヒトしかいない)でも、リヒト様となら、馬車でも馬でも徒歩でもなんでも楽しそうですね!(何も隠さずに話ができるのはリヒトしかいない)」
「…敢えて、言外に見え隠れしている本音は無視して、素直に喜んでおくね。出発は明日。トルトリアに馬車を手配するから、マーメイドカフェで待機しておいてくれる?」
「分かりました。エレノアの姿でお待ちしております。」
ちなみに今はもちろんエリックの姿だ。
「よろしくね。」
リヒトは苦笑いして帰っていった。その後、エレノアは数日分の店の買い出しや、全店舗の土人形ちゃんたちへの指令を行い、夜はマーメイドカフェで休む事にした。




