23.それぞれの道
「本当によろしいのですか?」
「うん、その方が僕達にとってはいいんだと思う。君はまだ15歳になったばかりだ。成人になるまで後3年もある。それまでは婚姻を結ぶ事は出来ないのだし、自由にするといい。」
「ありがとうございます!私、今日中に荷物をまとめて王都のタウンハウスに戻されると思っていたので…」
「ふふ、半年前の僕ならばそうしたかもね。でも、エレノアは1人でこの半年立派にやっていたし、なんなら、4店舗合わせて王国1の売上あるんじゃない?」
「あはは。流石です、4店舗ともバレていたんですね。」
「ううん、見つけたのはほんの数日前だよ。国境付近で王国トップの売上を上げていたら、そりゃ目立つからね。」
「確かに。」
「しばらく様子を見させてもらったけど、1人でいれば『蠱惑』も発動しない事も確認できた。」
「それは半年前にも言いました。」
エレノアは拗ねた様に頬を膨らませる。
「そうだね、あの時はまだエレノアを信じきれていなかった。本当にごめん。今はエレノアの言動一つずつに、そして経営力と戦闘力も、一点の曇りもなく100%信じているよ。」
「え、あ、ありがとうございます。」
急に手放しで褒められて焦るエレノア。
「そして、それらが一朝一夕でできたものではなく、エレノアの絶え間ない、絶望とも言えるほどの努力の末に培ったものだという事も分かっている。」
「…。」
今まで褒められ慣れていないエレノアは、どう反応していいか分からずとうとう黙り込む。
「僕もあと3年、エレノアの隣に立つに相応しい王太子になれるよう頑張るよ。」
「リヒト様はもうすでに素晴らしい王太子殿下ですが、ともに成長できる事を嬉しく思います。」
「ふふ、ありがとう。あ、でも僕は16歳になっちゃったから、パートナー同伴の公務なんかも出てくると思う。その時だけ、呼び出してしまうかもしれない。お願いできるかな?」
「ええ、飛んで参りますわ。」
リヒトは嬉しそうに笑って頷く。
「でもエレノアの場合、本当に飛んできちゃいそうだよね。ちゃんと迎えがくるから、転移陣で移動してね。」
確かに、昼間の空中移動はそれなりに神経を使った。王都に行く時は大人しく転移陣を使おう。
「そうですね、よろしくお願いします。」
2人で顔を見合わせて笑った。
そして、その後すぐにリヒトは王城に戻り、エレノアはカフェのホールに戻った。しかしこの事件の2週間後、エレノアが見つかったことを後から聞かされたロレーヌ侯爵により、リヒトとエレノアが2人揃って呼び出され、こっぴどく怒られた。
「リヒト様、エレノアが見つかったらご連絡いただけるはずでは?」
「すみません。」
「エレノアは、今までどこに行ってたんだ!皆に心配をかけて。」
「すみません。」
とにかく2人は謝りつづけた。そしてその後、リヒトの必死の説得により、公務にはきちんと顔を出す事、ロレーヌ邸とカフェを繋ぐ転移陣を設置して定期的に帰省する事を条件として、結婚まではエレノアを自由にさせるという許可を勝ち取った。
2人はそれぞれの日常に戻ったが、今までとは違い、エレノアが王都での公務にリヒトのパートナーとして参加したり、慰問に同行したり、時にはリヒトがお忍びでエレノアのカフェに足を運んだり、2人にとって最適と言える距離感で過ごせる様になったのだった。
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この話で一章は完結とさせて頂きます。
次の投稿から第二章に入ります。
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