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守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
一章.リヒトとエレノア

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20/31

20.束の間の休息

「久しぶりだね、エレノア。元気にしていた?」


リヒトはまるで世間話でもするかの様なテンションで話しかける。ちなみに、ふたりとも【上昇気流】で超高速空中移動中である。半年前に脱走した婚約者が、大量の捕虜を連れて戻って来た(それも隣国に攻撃されて)というのに、リヒトは本当に落ち着いていると思う。


「はい。いろいろな経験ができて、とても楽しかったです。」

「そっか。すばらしい時間を過ごせたんだね。でも、どうして戻って来たの。」


嫌味ではなく、心底驚いて出た言葉だ。


「リヒト様なら、絶対に助けてくれると思ったんです。国内のことであれば、実家に頼めば何とかなるかも知れませんが、外交に関しては王家に了承を得なければいけませんし。」

「そっか。」


たかが侯爵令嬢ひとり、勝手にツォルグに向かっても皇帝が謁見に応じてくれるのかも怪しい。


「何にしても、エレノアが頼ってくれて嬉しかった。」


リヒトの横顔はどこか泣きそうに見えた。


水平方向にも風を当てていたため、行きと同様一瞬にして国境の街ラナスに到着した。この時、すでに明け方である。


「僕が、認識阻害の魔法をかけるから、しばらく休もう。流石にこんな早朝のアポイントは取れないだろうしね。」

「ええ、土人形ちゃんたちにモーニングコーヒーでも用意させます。」


エレノアがパチンと指を鳴らすと、ニイとサンが部屋に入ってきた。ホットコーヒーと小さなアップルパイをテーブルにセッティングする。


「イッチとゴウとナナが周辺警備、ヨンとロックが開店準備にあたっています。」

「私たちは開店準備に回りますが、よろしいでしょうか?」

「ええ、大丈夫よ。私たちの世話は要らないし、私とリヒト様がいれば、この街全体くらい守れるから。」

「かしこまりました。」


ニイとサンは礼をして部屋を後にした。


「ふふ、僕もオマケに入れてくれたの?」

「オマケ、ですか?」

「エレノアひとりで十分守り来れるでしょ?この街。」

「そうねですね、私ひとりでも8割くらいは守れますが、リヒト様がいれば、全員守れます。」


エレノアはニコリと微笑む。


「それじゃあもし何かあったら僕も活躍させてもらおうかな。」

「もう、今日は何も起こらないのが1番ですけどね。」


睡眠もほぼ取らずに移動し続け、相当疲れているはずなのだが、ふたりは笑い合い、ひと時の穏やかな時間を過ごした。


その後は、リヒトが王城から持ってきてくれていた、何故か私ピッタリサイズの正装ドレスに着替えて出発の準備を整える。


「それじゃあ行ってくるね。」

「お気をつけていってらっしゃいませ。」


お店が開店する少し前に出発する事になり、ナナがお見送りに来てくれた。


「オーナーをお借りしてすまない。私が責任を持って.無事に連れて帰ってくる。」

「よろしくお願いいたします。」

「ナナちゃんたちも気をつけてね。お店はいつも通り開店して構わないけど、警戒は続けておいて。」

「かしこまりました。他の店舗にもお伝えしておきます。」

「ありがとう。行ってきます。」


ふたりは店の死角から【上昇気流】で飛び上がる。


「さて、向こうはどう出てくるかな。」


リヒトとエレノアは目にも止まらぬ速さで国境に向かった。

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