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守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
一章.リヒトとエレノア

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17/27

17.一寸先はもしかして闇ですか?

「つ、疲れたー。」


キラキラ平民風のリヒトがようやく帰り、店もひと段落ついた。精神力を使い果たしたエレノアはバックヤードで少し休ませてもらっている。椅子に深く腰掛け、机に突っ伏している姿はもはや侯爵令嬢とは思えない。まあ、少年に変装したままのため、そうでなくても令嬢にすら見えない。


リヒトが店に来て心底驚いた。しかし、エレノアだとは気がついていない様子だったので、とりあえず一安心だ。『すみません今満席で、少しお待ち…イタダケレバお席ご用意出来ます。』一瞬だけ変な間が入り、少しだけ片言になってしまったが、及第点だろう。最後まで言い切った自分を褒めてあげたい。でもやはり、エレノアを探している様だった。


「ずっと探してる様だったら、可哀想かな。早く忘れて次の婚約者を見つけてくれると良いんだけど。」


お互いのためにも。リヒトならすぐに素敵な婚約者が見つかるはず。『でももし、彼女に一つだけ伝えられるなら、何か困ったことがあったら必ず僕を頼ってほしい。…それから、もし今の生活に飽きて気が向いたら、僕のところに帰って来てほしい、いつまでも待っているから、と。』彼の言葉を思い出し、しばらくは難しそうだと思う。


「はぁー。いつまでも隠れ回っているの嫌だなー。」


でも、『どうもしないよ。無事かどうか確かめたかっただけだから。』『今は、彼女が楽しく無事で生きていてくれるのであれば、それが僕の近くでなくても良いと思っている。もう2度と彼女の自由を奪いたくない。』そう言っていたし、見つかっても連れ戻されたりはしないのかしら。


「うーん。」

「よお、エリック。なんだか元気ねえな。お前も国境の向こうの話を聞いたのか?」


休憩を終えて、東の国境沿いの街ラナスへ転移し、買い出しに出かけたエレノア。街の外れにある牧場の前で声をかけられる。ちなみに、エリックは変装中のエレノアの偽名だ。

エレノアは土魔法を使っての農業(生育を早送りして超早獲れ収穫)は得意だが、乳牛を育てるのは時間がかかるため、専門家にお任せしている。ちなみに卵も養鶏場頼みである。


「国境の向こう側?何かあったの?」

「何だ知らねえのか。東の国ツォルグ側の国境付近で騎士や衛兵がわんさか集まっているらしい。何か物騒な事でも起きたのかって噂が広まってら。」

「それって、もしかしなくても…」


こちらに進軍してくるのでは?と思ったが、確証のない事で周りの人を不安にさせるのも良くないと思いと口を噤む。


「もしかしなくても?」

「いや、何でもないよ。いつもの牛乳と生クリーム。あとクリームチーズもらえる?」

「はいよ、毎度あり。」

「ありがとう、またね。」


それにしても、この国の人々は本当に危機感がないと思う。そんな噂が出回っているにも関わらず、こちらに攻めてくる選択肢については考えていないのだ。

エレノアは元来た道を急いで戻り、移動陣で他の3つの店舗を回って乳製品を配るとともに、土人形たちにある指令を行った。『外部より攻撃を受けた場合は、全力で街の人々を守る事。そして、相手は極力傷つけない事。』


今1番危ないのは東のラナスだとは思うが、各拠点で同時に何かが起こる未来もなくはない。備えあれば憂いなしだ。最後にまたラナスの店舗に戻り、しばらくはこちらで過ごすことを決めた。


「大丈夫。私ならできる。イッチ、ニイ、サン、ヨン、ゴウ、ロック、ナナもいるしね。」


自分に言い聞かせる様にして、その夜は眠った。

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