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守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
一章.リヒトとエレノア

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16/25

16.息もつけない再会

「お待たせしました。こちらへどうぞ」


リヒトは貝殻を模したソファーとサンゴの様に真っ赤なテーブルに通された。他にはクラゲを模した椅子とテーブルの席。ハンモックの様な席もある。


「こちらがメニューです。お決まりになりましたら、お近くのスタッフにお声がけください。」


エレノアは何でもないように接客して去って行った。ちなみに、リヒトも変装をしている。王太子が護衛も付けずこのような所でお茶をしていたら、エレノアだけでなく、周りも普通にパニックである。エレノアはリヒトに気づいていないふりをしているし、自分も気づかれてないと思っているのだろうか。


近くにいた店員に注文を伝え、カフェオレとドーナツが運ばれて来た。


「なるほど。」


お皿やカップ、トレイに人魚の美しいイラストが描かれていて、マーメイド要素はここにあったのかと納得する。ドーナツを乗せたお皿は、クリームやフルーツなどのトッピングでデコレーションされていて、1つの絵画の様になっている。


「本当にすごいな。こんな事までできるのか…」


リヒトは感心する。この建物も、装飾も、食器やレシピも、エレノアが単独で考えたものだろう。というのも、この店にいる店員が、彼女以外は全員土人形なのだ。エレノアと全く同じ魔力を感じるから間違いない。このレベルの店を東西南北の国境沿いに4店舗、凄まじい売り上げと、エレノア本人には負けるがかなりの魔力を持った土人形が各々10体ほど常駐。レヒトはゾッとした。エレノアはこの半年で、東西南北の国防線に売上付きの要塞を作ったのかな?

ちなみにドーナツとカフェオレは味も最高であった。




「あの、お兄さんはこの街の人ですか?」


エレノアである。席を案内した後は隠れていたのか、姿が見えなかったが、そろそろ席を立とうとした時に話しかけに来てくれた。何故だか分からないが、普通に嬉しい。周りを見ると、土人形たちもあちこちのテーブルで話しかけたり、一緒に写真を撮ったりしている。そういうのもこのカフェの楽しみなのかもしれない。視線をエレノアに戻して質問に答える。


「いや、違うよ。人を探してあちこち旅をしているんだ。」


嘘は言っていない。


「そうなんですね。人を…。大切な人なんですか?」


エレノアの手が震えている。リヒトはできるだけ優しくゆっくりと話した。


「そうだね、僕の1番大切な人だよ。」

「そうですか。見つかると良いですね。」

「どうかな、彼女は見つけて欲しくないかもしれないから。」

「その方、見つけたらどうされるおつもりですか?」

「どうもしないよ。無事かどうか確かめたかっただけだから。」


彼女の震えが止まり、明らかにホッとした表現をした。やはり帰りたくないんだよな。


「大切なのに、お連れにならないんですか?」

「大切だから。連れていけないんだ。」

「えっ?」

「今まではね、彼女は僕が守らないといけない、守るために近くに置いておかないと、閉じ込めておかないと、と思っていたんだけど…」

「だけど?」

「だけど、彼女は本当はとても強い人で、僕が守る必要なんてこれっぽっちもなくて、彼女の自由を奪う権利も、ましてや閉じ込めておく権利も僕にはなかった。…僕は間違ったんだ。だから彼女は離れて行ってしまった。」


リヒトはテーブルに置いた手を握りしめて俯く。


「…。」

「今は、彼女が楽しく無事で生きていてくれるのであれば、それが僕の近くでなくても良いと思っている。もう2度と彼女の自由を奪いたくない。」

「そう…ですか。」


顔を上げて目の前の美少年、もといエレノアを見つめる。


「でももし、彼女に一つだけ伝えられるなら、何か困ったことがあったら必ず僕を頼ってほしい。…それから、もし今の生活に飽きて気が向いたら、僕のところに帰って来てほしい。いつまでも待っているから、と。」

「…伝わると良いですね。」


エレノアは苦笑い浮かべる。


「どうかな。」

「伝えたい事、ひとつじゃなかったですね。」

「そうだね。ひとつ目で止めるつもりだったのに、欲が出てしまったね。」


リヒトは自嘲するように笑った。

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