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第11話 初ライブは初退魔

※本作は現代日本を舞台にした

音楽×悪魔祓いの現代ファンタジーです。

火・木・土曜日の20時に更新します。

 え、え、え……どういうこと???


 歌いながら何度かぎゅっと目を閉じては開くのを繰り返してみても、結果は同じだ。

 観客の頭の上に青黒い肌の怪物がいる。そのギラギラと光る赤い眼がこちらを睨みつけているようなのは、気のせいだろうか。


 誰にも見えてないの?


 少なくとも観客は気づいていないようだ。こぶしを振り上げたり、頭を上下に激しく振って音楽にノっている。

 私は左右に視線を動かした。

 白石先輩は相変わらず歌舞伎の連獅子のように頭を振って自分の世界に入り込んでいるけど、玲は気づいているようだった。演奏を続けながら、信じられないという顔でこちらを見る。


 やばくない? あれ。


 玲と視線で会話をする。

 なにしろ怪物の裸の上半身はボディビルダーのように筋肉が隆々として、開いた口からは鋭い牙が覗いている。口の端からよだれが滴り、いまにも襲いかかろうとする獣のような唸り声まで聞こえていた。


 ――心配することはありません。下級の悪魔です。


 脳内にアズラエルの声が響く。


 いやいやいやいや。

 あれで下級だって言うの?

 ヤバすぎない?


 怪物の身体はどんどん巨大化して、いまや両手を広げたら教室の端から端まで届きそうになっている。

 こんなのに襲いかかられたらひとたまりもない。


 っていうか、悪魔祓いって本当だったんだ。

 だとしたら私には荷が重いよ。

 だってバンド経験のない初心者だよ?


 自然と口からマイクを離していた。


 ――歌うのをやめてはいけません。


 でも……。


 ――いまやめたらあの悪魔はあなたたちを攻撃するでしょう。最悪の場合、バンドメンバーが命を落とす可能性もあります。


 無茶苦茶な。 

 大天使なんだから守ってよ。


 ――もちろん、私にできることはします。ただ、手負いの悪魔は凶暴化しています。なにをしでかすか予想がつかない部分もあります。


 手負いなの?


 ――あなたたちの演奏によってダメージを負っているのです。観客の一人に取り憑いていたのでしょう。それがヘヴィメタルによって人体に寄生していられなくなった。いまあの悪魔は苦しんでいます。巨大化はたんなる脅しです。怯んではいけません。


 そんなこと言ったって。

 教室全体を包み込むほどに巨大化した怪物を目の当たりにして怯まない人間などいるだろうか。


 ――演奏を続けている限り、襲われることはありません。ほら、見てご覧なさい。


 たしかに怪物は大きな口を開いて何度も襲いかかろうという素振りこそ見せるものの、実際に襲いかかってくることはない。

 結界……?


 ――そう。ヘヴィメタルの効果です。悪魔はなんとか演奏をやめさせようと、あなたたちを脅かしています。手を止めてはいけない。口を噤んではいけない。


 このまま演奏し続けろってこと?

 この曲、せいぜい四分ぐらいだけど。


 ――その間に攻撃に転じるのです。


 どうやって?


 ――バンドがひとつになり、歌に祈りをこめる。


 どういう意味?


 ――演奏に集中する。


 それだけでいいの?


 ――それしかありません。


 ふと視線を上げると、怪物が両手を広げて襲いかかってくるところだった。

 

 やられる……!!!


 思わずぎゅっと目を瞑る。

 しかしなにも起こらない。

 まぶたを開けると、目の前には白石先輩の背中があった。

 両足を大きく開き、頭をぶんぶんと振り回して演奏する。端から見れば観客を煽るステージアクションだが、私を守るために盾になってくれたのは明らかだった。

 怪物は叩かれるのを避けるように、両手で顔を覆っている。


 こちらを振り向いた白石先輩の口が動く。


「歌って」と。


 私は頷き、握り直したマイクを口に近づける。

 犬飼先輩と白石先輩の叩き出すリズムを意識する。

 玲の奏でるメロディーに身を委ねる。


 ――さあ、歌うのです。バンドでひとつになって祈りをぶつけるのです。


 わかってる。

 私は息を吸い込んだ。


 ――結束しなさい(ユナイト)


 声を上げた。


 One for all - All for one

 We are strong - We are one


 私たちは強い。私たちはひとつ。


 だからなにがあろうと、私たちは負けない――。


 歌声に祈りをこめる。


 相変わらず怪物は威嚇の唸り声を上げているが、不思議と恐怖心は消えていた。

 あんたの唸り声なんかより、私の声のほうが太いし強いし凶暴だ。


 するとふいに、目の端を白い影が横切った。

 後方から現れた白い影が、ひんやりとした空気を残して怪物にぶつかっていく。

 全体が光を放っていて輪郭がぼやけているが、よく見るとそれは四つ脚の動物だ。


 犬?

 ……いや、オオカミ?


 だけどよく見ると角が生えている。

 額から生えた一本の長い角で怪物を攻撃している。

 正体は不明だが敵ではなさそうだ。


 怪物は両手で顔を覆うようにして攻撃を防いでいるが、先ほどまでの勢いはない。

 空気が変わった。

 少しずつ身体が小さくなっているようにも見える。


 曲は終盤に差し掛かってきた。

 最後はサビを二回繰り返す構成だ。

 もはや怪物は少し大柄な人間ぐらいの大きさになっている。光るオオカミのほうが身体が大きいぐらいだ。


 ――さあ、トドメを刺すのです。


 言われなくてもそうする!

 さすがに少し喉が痛むけど、これが本当に悪魔祓いなら、歌うのをやめるわけにはいかない。

 私は両手で持ったマイクでサビを歌い上げた。


 一人はみんなのために

 みんなは一人のために

 私たちは強い

 私たちはひとつ


 怪物は光るオオカミの攻撃をかわしながら、隙を見ては私たちに襲いかかろうとしてくる。

 でも怯まない。

 信じるしかない。

 私たちの音を。


 一人はみんなのために

 みんなは一人のために

 私たちは強い

 私たちは――。


 そのとき、怪物の身体が蒸発して消えた。

お読みいただきありがとうございます。

小説投稿サイトで初めて連載してみています。

ローカルルールがぜんぜんわかっていないので、不手際があったらご教授ください。

また高評価やコメントなどで応援していただければ励みになります。

よろしくお願いします。

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