第九話 悪銭の使い方:2
パンッ パンパンッ
プシュゥ...
「どうだ?アメリカのガンスミスが改造したP320だ。フルオート射撃可能、シリアルナンバーは痕跡なくかき消したから警察も特定はできまい」
「今なら特別に5000€で売ってやるよ」
「(...弾道ブレブレ。お粗末なフレーム。明らか中華製のコピー売ってきてんのに5000€ふっかけてくんの終わってんな)」
「(やっぱアイツんとこ行くか...)」
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ガチャッ
「んにゃ、あれ?ぺズじゃんどうしたの?」
ドアを開けた先、腕時計屋のような真っ白な空間が広がる。
その先にレジ前で、鼻をフスフス鳴らしながら腕時計を分解している茶髪の女がいた。
武器密売人の「猫」だ。
「やっと時計買いに来てくれたのかぁ。ロレックスがいい?それともタグホイヤー?うちは全部おろしたてだよー」
「いや今日は違う。拳銃」
「売ってくれよ。とびっきりいーやつをさ」
「...」
そう、この猫という女。
あらゆる銃をより精密に改造するガンスミスなのだ。
というより改造よりかは彼女自身が作った銃の方が圧倒的に精度が高い。
ただ今は、彼女は時計作りの方に熱を入れているみたいだ。
「ふぅ...あのさぺズ。もう殺しはやめたんじゃなかったっけ?」
「そんな人に銃なんか売りたくないなぁ」
依然変わらずデスクの上で緻密な動作を続ける時計に
ピンセットでパーツをはめていく。
猫は集中しきってるのか、私の話を流しながら聞いている。
「生憎だけど一般人の話それ。悪人なら話は別だっての」
「...レーナちゃんがいてちょっとはマシになると思ったんだけどにゃあ...ま、いいよ別に」
「その代わり時計も買ってくこと。いい?」
「腕時計はもう持ってるからいらない」
「ばはぁー!これだから素人は」
「教えてあげるけど時計ってのは思い出なんだにゃ。誰がどういう思いで買ったのか。それ自身時計が覚えてるもんで」
「ふと自分を見失いそうになった時、買った時の感情や高揚感を全て思い出さしてくれるかなり良い奴なんだにゃ」
「まぁつまり、精神安定剤の為に買っとけって事だにゃあ」
「...思い出って言ってもな」
「理由が必要なら与えてやるにゃ。これから買う時計は私とお前の久しぶりの再会記念。これから血が沸騰して雄牛のように暴れだしそうになったら」
「それを見て、常に冷静な私でも思い出すといいにゃ」
一部跳ねた茶髪の少女が私を見ている。
今だけは時計から目を離し、澄んだ目で私を見ている。
なぜかそれは一枚の肖像画のようで見入ってしまった。
脳が昔の映写機のようにコマ送りでフィルムを流す。
それだけで、私の脳に思い出として常に冷静さを保つ猫との思い出が焼き付いた。
時計を買ったさ。
タグホイヤーのカレラ クロノグラフっていう文字盤が青で外側がステンレスのクソ高い時計。
ただ美しさは本物で、自然と心が解きほぐされていく様なそんな感覚。
これをため息がつくほどの美っていうのか知らないが、それが存在してるだけで視界が周りを暖かいフィルターがかけられているような感情になった。
それで銃は?
「H&K p7。安定性重視の癖があるやつだけど、慣れれば屋内では無敵の機動性を誇る優れもの」
「2012年製のやや古いモデルだけど...安全装置を外す外さないの問題をクリアしたスクイズコックは偉大だにゃ」
「これと他のデカくて重い拳銃を比べると...」
「_____他のはカスだにゃ」
「...安心しろ。スクイズコックは軍にいた頃に慣れてる」
「んで、どこを改造したんだ?」
「全体をぺズの手のひらにぴったり合うよう削りフレームをスカンジウム合金に変更、トリガーは新品カーボンスチール、スプリングとか他の部品も新品に取り替えたにゃ」
「部品を馴染ませるため100発テスト発射済。故に最高のコンディションを維持してる逸品にゃ」
カチョッ チャキ...ッ
「...おまけにミルフォームガンオイルで滑りも良好」
「ありがとな...猫」
「総額12000€まいどあり、ってとこかにゃあ"...」
猫はめいっぱい全身を伸ばして椅子から立ち上がる。
そして腕時計を確認した。
「さて...そろそろ時間だにゃ。裁定者が私らを待ってるにゃ」
「...話し合いの場は必要ない」
「それでも行った方がいいよ。特にぺズは被害者なんだから裁定は有利に進むんだにゃ」
「私が被害者?アホ抜かすな」
「てかなんでお前も参加するんだよ」
カツ カツ カツ カツ___________
「うちは見届け人だからメンツがあるん」
「被害者側に味方するんだから、感謝するんだにゃー」
「ま気に食わなけりゃぶっ殺せば構わないにゃ。どうせ外道なんだから」
「ふっ...まぁそれもそうか」
「じゃあどうやって責任とらせようか楽しみだに"ゃ"あ"あ"ッッ!!」
「(...こいつが言うとシャレにならないにゃ)」




