第七話 設定破壊:2
「(いやいやいや...ありえない。スイカ天井を見極めるのは不可能)」
「(...別に低設定のストックタイムなんていくらでもくれてやる。ただ、今最も心配なのはそんなことじゃない)」
「(私が心配するのは何らかの手段でスイカ天井の規定回数を知られ、それを常習的にこの台に使われることだ)」
「(毎日スイカ天井を知られ、ストックタイムを引き、レオチャンスを平均2回獲得するとすればぺズの収支は確実にプラスになる)」
「(...それはダメだ。いくら友人だとしても、私のカジノでそんな真似は許さない)」
ピーピロロロピローッ
[レオチャーンス!]
眼前に6つの裏返されたトランプカードが配置される。
カードの表面には配当されたボーナスが記されてるが、今はまだ私、ぺズには見えていない。
「裏ボタンを押さないの?それでカード表が確認できるけど」
「せっかちだな。言われなくても押すさ」
中央のPUSHボタンを押す。
カードが全部めくれて今回配当されたボーナスを確認した。
左上から、赤7、レギュラー、レギュラー、赤7、レギュラー、そして青7。
獲得メダル数はそれぞれ以下の通りだ。
____________________
・レギュラー 66枚
・赤7 200枚
・青7 300枚 ストックタイム期待度[中]
・赤青混合7 400枚 ストックタイム期待度[高]
・エピソードボーナス 400枚 ストックタイム獲得確定
・スーパーストックタイム 純増5枚の100g以上のストックタイム確定 レオチャンス獲得平均5個
____________________
「(やっぱ渋いな...SSTが取れれば1番好ましいが、中々運に恵まれてないとこれは取れない)」
この特化ゾーンでは6つのカードを5g間で、押し順ベルをなるべく多く引くことが重要だ。
押し順ベルを引くとカードのいずれかのボーナスがひとつ昇格。
レギュラーから赤7、赤7から青7、と言った具合だ。
テロンッ トントントンッ
テロンッ トントントンッ
テロンッ トントントンッ__________
「(おいおいふざけんな...全然昇格しねぇだろ)」
「(残り2ゲーム間。せめて一回でもいいからベル引いてくれよ...ッ)」
テロンッ トントントンッ
________最終ゲーム______
ヴゥーンッ ピーッ
[中!右!左!]
「(...引いた...ッ)」
昇格されたのは上段左の赤7。見事青7に昇格。
[ジャッジゲーム!]
「(その後押し順ベルは引けずジャッジゲーム移行か...ただ、この一番最初の青7を引ければ上出来...!)」
ジャッジゲームはその昇格させたカードを選択するパート。
レバー一回転するごとにカードを抽選し、3分の1でカード報酬が選択される。
私の心臓は今人生で最も速く動いていると思う。多分。
「(まずレギュラーを引いたらダメだ。狙うはこの最初の青7)」
「(行け...ッ!)」
ググゥゥーーーンッ
...スン
「(...チッ...スカした。次はレギュラーか)」
「(...絶対やめろ)」
レバーを叩く。
ググゥゥーーーンッ
...スン
「(よし...はっ、こんなとこでボーナス無駄にしてたまるか)」
「(次もレギュラー...最低でもここは抜けるぞ)」
ググゥゥーーーンッ
________ジャキーンッッ!!!
「あぁ!?」
「...は...ははっ!」
「ざーんねん、選ばれたのはレギュラーでしたぁッ!」
「クッソ...ッ!これ心臓に悪すぎるだろッ!!!」
気づいたら両手は手汗でビショビショだった。
震えも見られる。流石に心臓に悪すぎるんだよ。
しかしその様子を見て笑っているギフトも半ば半狂乱のように額に汗をダラダラ流しているのを見て、私の取った台の攻略方法は間違っていなかったと再認識する。
そのことを心で咀嚼し、1個目のボーナスを消化した。
______________________
[レオチャーンス!]
再びカード昇格パートに戻ってくる。
2回目のストックしたボーナスだ。
PUSHを押し報酬を確認する。
ペラッ
「(...赤7、レギュラー、青7、赤7、レギュラー、レギュラー...クソ、最低だな)」
「(今度こそ昇格させるぞ)」
テロンッ トントントンッ
テロンッ トントントンッ
ヴゥーンッ ピーッ!
[右!左!中!] 上段二枚目のレギュラーが昇格
ガギィインッ! トントントンッ
「(...ゔ...ここでチャンス目ッ...超昇格だ...)」
「(次ゲームぺズに押し順ベル引かれるとまずい...超昇格中は2段階報酬が格上げされる...)」
「(...よりにもよって青7で押し順ベルなんて引かれたらエピソードボーナスまで格上げされる。頼むから何も引くな...ッ)」
ヴゥーンッ ピーッ!
「ゔっ...ッ!」
[左!中!右!] 上段3つめの青7がエピソードに昇格
「_______Gute Arbeit(上出来だ)」
[ジャッジゲーム!]
「(赤7は嫌だ赤7は嫌だ赤7は嫌だ赤7は嫌だ...ッ!)」
グゥゥゥウンッ
________スッ
「ゔ...ふぅ...ふぅ...ッ」
胃酸が込み上げてくる。
気持ち悪い。
舌先が酸っぱい物で満たされて、このボーナスを外して連チャンが終われば次いつ勝てるのか分からなくなってくる。
いや...今そんな野暮を考えるのはやめだ。
私は次の赤7に向けてレバーを叩いた。
グゥゥゥウンッ_________
ガギィィンッ!!
「...ぎゃははッ!!やった!告知音発生だッ!」
「残念だったねぇぺズ...やっぱりこの激荒台の低設定を上振れさせるのは無理なんだよぉッッ!!!」
「く...ぶっははは...っ」
「...あぁっ!?」
「...バーカ。先走りすぎなんだよ、Hure(メス犬)」
「リール上を見ろ」
「......っ」
ギフトは目に入った汗を擦って液晶リール上を見た。
紫色のビックリマークが3つついている。
「...あ...」
「...あぁぁぁぁぁぁあッッッ!!???」
「意味は...わかるだろ。レア役確定の演出だ」
「ジャッジゲームでは弱役だろうとチャンス目だろうと関係ない。レア役を引けば次ボーナスが確実に一段階昇格する」
_______トントントンッ
エピソードがSSTに昇格。
「づ...ッ...っははは...それが、それがどうしたってんだよッッ!!」
「それも3分の1引けなきゃ意味ねぇんだよオラァッッ!!」
「そうか?勝利の女神は今確実に私に微笑んでると思うけどな」
「そういえば裏ボタンがあるって言ってたな。一発告知の女神がどっちに傾くか...試してみるか」
トンッ
中央PUSHボタンが虹色に光る。
これで裏ボタンの入力は成功だ。
「(...絶対スルーしろスルースルースルースルーッ!!!)」
「(こんな時だけSST引くとか都合よすぎんだよ死ねクソ死ねッ!!低設定のクソ台がッ...!!絶対スルーしろッ!)」
「(20円のレートだろうと私に恥をかかせるゴミ台は絶対許さねぇ...ッ!!)」
「念仏が終わったなら、レバーを叩くぞ」
「さっさと、やれ...ッッ!!!」
血走った目。
彼女はヨダレを垂らしながら最早猛獣のように息巻いてる。
かくいう私も前がぼやけて汗と強く揺さぶられるような頻脈が止まらない。
そんな消耗戦を終わらせてやるため、私は最後のレバーを叩いた。
ピロロロッ ピロロロッ テレッテテーーッ____!
プッチュウゥン____________
「...ふ...」
「...かっはははは...私の勝ちだ...」
「私の勝ちだオラァッ!残念賞くれてやるわクソバニー女がッッ!!」
「ふ...ふ...ぅ...っ」
「ごぉぇッ....」
...ドサッ
______________________
ピーポーピーポーピーポー__________
その後6752枚出した私はカジノ店の前でタバコを取り出して、火をつけた。
流石にSSTの恩恵は強力で、低設定だろうとドカ下がりしていたグラフは連チャンに連チャンを重ね、右肩上がりに貫いて今日の稼働は終わりを迎えた。
ちなみに...急激な血圧低下によりゲロを吐いてぶっ倒れたギフトは救急車に揺られ病院へ搬送された。
きっと救急車の隊員達も白目を向いたバニーガールを搬送したのは初めての経験だろう。
「はぁ...」
ポケットに手を突っ込み今日の勝ち分を確認する。
700€。日本円換算で約13万円といったところか。
...やりすぎだ。
いや嬉しいのは嬉しいんだけど、仕事サボってギャンブルで大金手にしたってなると益々私の依存性が進行する。
正直SST入る時のブラックアウトにやられて私の手の震えは未だに止まらない。
「...勝ったのに釈然としないのがパチンコスロット。普通の人間の生活には必要ねぇんだよ」
ポチポチ ポチポチポチ_____________
「まぁただ...」
「パチ屋のマネージャーに一泡吹かせたのは、かなりスッキリしたけどな」
プルルルル_______プルルルル______
ヴッ
「あもしもしレーナ?今晩何食べたい?なんでもいいんだけど。そう、なんでも好きなの________」
カツ カツ カツ カツ...
[設定破壊:2 ー完ー]




