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第六話 設定破壊





チュンチュンッ チュンチュンッ






...朝だ。


憂鬱な朝。


仕事が始まる。


確か始業は...9時10分?


今何時だろうか。


まもなくレーナが起こしに来る時間帯だとしたらそれは、8時ちょっきり。






トツ トツ トツ トツ...






レーナ。


白いパジャマを着て、足の小さいスリッパを履いてやってくる。


そんな平日の、憂鬱な毎朝。






コンコンッ






「クロズコップ様、おはようございます」






「...す...っ」


「...お"はよう...もう時間か」






別に私とレーナは別々に寝ている訳じゃない。


朝早く彼女は朝食を作りに静かに部屋を出て、それで...テレビを付けたり、私が起きるまで暇を潰してる。


それも私を起こさないように。


健気な子だ。






「あの...その...先日は、ごめんなさい」


「私...クロズコップ様についた別の女の臭いを嗅ぐと、その...どうも制御が効かなくなって...」






「(至極のサディストになるわけか)」






「...別にいいさ...気にするな」






彼女はこうやって我を失うぐらい私を虐めては、翌日にはそれを思い出して猛省する。


私は強靭な肉体を持ってるからか、そんな彼女の恐ろしさすら可愛らしく思っているのかもしれない。


そりゃ他人からすれば、吐き気を催す程の狂った恋人関係なんだろうな。






...仕事に出るか。






_______________________






「ペ、ペズさん。その傷どうしたんすか...っ」






朝の仕事の下準備をしていたロイターは私の傷だらけの様子を見て額に汗を(にじ)ませていた。


口も開いたまま、作業の手も止まっている。






「あぁ、自動車事故」






「ばっ...出勤してる場合じゃないでしょ...ッ、今日くらい休んでてくださいよ!」






「いやぁ...私体頑丈だから」






「目から血垂れてますよ...絶対休んだ方がいいですって...!」






「クソまたか...」


「はぁ...わかったわかった。じゃ今日はデスクワークしとくわ」






「デスクワークって...いや...イカレすぎだろ」


「マジで帰って休んでください」


「▅▅▅ほんとに、今すぐに▅▅▅」






_______________________





そう言われ職場を追い出された私だったが、行き着いた先は_________






「__________」






裏カジノ店の寂れた入口。






「...はぁ...怪我してでも行くとこじゃねぇな」






でも暇だから、という理由をつけて馬鹿な私はカジノに身を滑り込ませた。






「______Willkommen〜」


「スロカスギャンブル依存症引き弱養分性欲過多ドM眼帯グリグリ傷モノおねーちゃん!」






キャピッ






「Guten Tag(こんにちは)、もうすぐ私と同じ三十路なのにバニー姿晒してる独身ヤリマン将来危ういお姉さん」


「あーあと闇カジノ経営で他人から幸福を吸い取って生かしてもらってるネズミも追加で」






「あ殺すぞテメェッ!!三十路(みそじ)のババアはテメェもそうだろうがッッ!!!」


「あと火力高すぎんだよッ!!出禁にすんぞコラッッ!!」






「あーうっせぇうっせぇ。前回ABJでよくもまぁ()めてくれた癖によく言うぜ」


「おらさっさと出せよ。ABJを」


「ぶっ壊してやるよ。文字通りな」






_______________________






「(...こいつ...本当にこれ打つのか?"今日は設定入ってる"だとか思ってるんだろうけど、生憎今日は低設定の"2")」


「(激荒のABJの低設定ほど出ないものはない。特にボーナス連チャンのしなささ、天井突入率は脅威の高設定の2倍)」


「(...勝てるはずがない)」


「(勝てるはずがないんだよ。こんな右肩下がりのゴミグラフでは)」






_______ABJの黒い筐体に座る。


ゲーム数は...425g。前回がビッグ単発駆け抜け、その前はレギュラー、レギュラー、そしてビッグ1連。






「(クソみてぇなグラフ。明らか2か1ってとこか。それもえげつないくらいの下振れ)」


「(ただ...新台だからか3450g回されている。それも現在400g台)」


「(これは..."ある"な)」






私は隣に座っているギフトに100€を渡してメダルに交換した。






______________________






テロンッ トントントンッ




テロンッ トントントンッ_________






ぺズは相変わらずレバーを叩き続けている。


それを私、ギフトは横から頬杖つきながら眺めていた。






「(あーあ...結局200g消化して600g到達しちゃった)」


「(前回がビッグ単発だから、本来1000gの天井が666gに短縮。まぁ約500枚使って天井狙えた分まだマシか)」


「(ま、どうせまた単発食らうだろうけど)」






全く理解できないね。


いくら天井が近かろうと100€使って低設定の天井見るって行為は高い確率で連チャンができず収支マイナスになる。


それでも打つんだね、ぺズちゃんは。






シャランッ



ピロロロロロロロロロ_________






「(...ランプルーレット。レア役確定の演出か)」


「(でも今更チャンス目引こうがボーナス当選しようが天井は間近。今更彼女がどう足掻こうと_____)」


「(______救いは無い)」






トン トン ________トンッ






「(あーあーあーあー...よりにもよってただのスイカじゃん。終わってんなーこの台。設定したの私だけど)」






シャランッ






ジャキーンッ






[モーリン!ルーレット!]






「...あ?」






スイカを引いた次ゲームでバトル演出。


それに期待度星4.5の激アツ演出だ。






「(天井に到達したのか?いや、まだ50gくらい残ってる)」


「(なんだ...なんか変だぞ...ッ)」






[21!]






ブゥゥゥゥンッ






そして、それは満を持して起こった。


ぺズがバトルに勝利しMAX BETボタンを叩いたその刹那_________






バリバリバリ________ッ!!






[ストックターイム!]






「...は?」






筐体画面に現れたのはボーナス確定画面などすっ飛ばしてstocktimeという文字。


ここは確か、連チャンボーナスを平均2個ストックできるという特化ゾーンのはずだ。


なんでいきなりこいつ...まさか不正を______ッ!!






「"ゴト行為を"ってか?残念ながら、んな野暮なことはしてねぇよ」


「"スイカ天井"。規定回数分のスイカを全て引けば次ゲームにストックタイム付きのビッグボーナスが獲得できる」


「最大100回引ければ発動するらしいが...前任者に何回スイカ引いたか聞かなきゃ、途中で座った私もあと何回スイカ引けばスイカ天井なのか分かるはずもないな」






「た、たまたま引いたって訳あるかッ!お前が規定回数の最後のスイカを...ッ!」






「いいや、たまたまだね。ただ低設定でも勝てそうな立ち回りをしただけ」


「言っただろ。この台ぶっ壊すって」


「▅▅▅今ぶっ壊してやっからそこで見てろ▅▅▅」






そう言って、彼女は50g間の特化ゾーンでしっかりと2個ボーナスを獲得して、ボーナス昇格ゾーン[レオチャンス]へと突入していったのだった。








[つづく]

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