第四話 お仕置
「ふッ...ふぅッ...」
午前中、今日は仕事が休みなので地下室でトレーニングをする。
昨日の反省の意味を込めて、200回片腕立て伏せ。
「ふぅ...ッ、ふん...ッ」
______________________
「ぺズちゃん」
「▅▅▅▅お疲れ様▅▅▅▅」
______________________
本気の反省。
昨日負けたのは日本円換算で約3万円。
自分の使うつもりの軍資金50€(約1万円)から漏れ出て追加で100€溶かしたのは自分の甘さ。
なぜこれを大袈裟に言うかというと、破滅の始まりに通ずるから。
たちまちこのような負けを繰り返し、"いつか勝てる"、"次に当たりを引けば辞める"、などと馬鹿げた思考回路に陥る。
果てはカジノに行っては負け、カジノへ行っては負けを繰り返し世にいうギャンブル依存症患者の完成だ。
だから"破滅への道"なのである。
トントンッ
「____クロズコップ様。入ってもよろしいですか?」
「...ああ...っ、どうぞ」
「失礼します」
レーナだ。
彼女はいつも丁寧な言葉遣いで私に接する。
もう6年くらい長く一緒にいるのに、看護師のような言葉遣いだ。
でも嫌いじゃない。
本能的に心地いいんだ。
ギフトのような血に毒の回るような喋り方では無い。
...クソ...なんであの女のことを考えてるんだ。まだ甘えてやがる。
「あの...クロズコップ様」
「最近、なにかありましたか?」
ギクッ
「ゔ...いや?何も無いよ」
「(レーナにスロット行ってることバレたら流石に不味い...今度こそ殺される)」
「くんくん...あれ。この部屋、ちょっと臭いますね」
「あぁ...悪い、鍛えてたから」
「すん...いえ、クロズコップ様の汗の匂いではありません。それは嫌いではないんです」
レーナが汗で濡れた首筋に頬を乗せてくる。
「▅▅▅別のメスの臭いが、ここから▅▅▅」
殺気。
迂闊だった。
前回日本で草間フキとパチ屋に行った時、レーナに殺されかけた理由。
それはパチ屋にいることよりも別の女と遊んでたこと。
どうやって殺されかけたんだっけ...もう恐ろしすぎて記憶にない。
確か無茶苦茶に体を傷つけられながら犯されたんだっけ、違うっけ...
「クロズコップ様...すっごく震えてかわいそう。一体どうなされたんですか?」
いつもの優しい匂いを纏ったレーナとは違う。
私の顔を這いずる彼女の細い指。
唇を辿って、鼻先、頬骨
そして右眼の眼帯。
「もしかして...前日本で▅▅浮気▅▅して、私に酷いことされたの思い出しちゃいました?」
「▅▅▅こんな感じに...▅▅▅」
ぐ...ぐちゅ...ぐりゅ...
「が_____ぐ_____ぁ____ッ」
「眼帯の中、ぐりぐりーって。無くなった方の目をいじられたの、思い出しちゃいました?」
「レ"ーナ"...ごれ...や"...ば......じぬ"...ッ」
激痛。
彼女は私の無いはずの右眼に人差し指を突っ込んで、まるでなにかを探るように深く、深くへと掻き込んでいく。
目はないが痛覚を喪失している訳ではなく、外部からの接触がないように隠されている内臓に直接触られている感覚。
知らぬうちに、私の身体は痙攣と助けを求める声を発していた。
「はぁ...ダメですよ?やめちゃ"お仕置"になりません」
「このまま痛みを感じながら生き地獄を味わってください」
普段の柔らかい、優しい天使のようなレーナだからこそ忘れていた。
彼女は、私を極度に傷つけることで興奮する真性のサディストだ。
「ぎ...ぁ...ッ...あ"ッ!!」
「あは...っ、辛そうですね。兵隊さん」
「少し私も...濡れてきてしまいました」
レーナが私の横で滴った下着を脱ぐ。
多分、ここから先私の体は傷だらけになって意識が飛ぶほどの激痛を彼女から一身に受ける。
それから...それから多分、生きてんのか死んでんのか分からないまま一日を終える。
この床で。
....もちろん、レーナを愛してる。
嫌ったりはしない。
...
でもこれだけは言える。
▅▅▅二度と女の匂いを付けて家には帰らない▅▅▅
...それだけだ。




