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第十五話 何者でもない者の挽歌




______警察庁 連邦警察局本部(ポツダム) 会議室





カリ...カリカリ...ガリ...ッ





「______であるからして、依然として旧東ドイツ領での治安は悪化の一途を辿る結果に」


「特にベルリンでの抗争は激化。直近では先週起こった一般市民による犯罪組織壊滅事件。今週までは詳細が分かりませんでしたが、7日間の解析の犯人と共謀者の情報が掴めました」






カシャッ






映写機で犯人の画像が映し出される。


砂漠で戦闘服を着た眼帯の女がカメラに向かって仲間と笑顔でピースをしている画像だ。






「この女の名はクロズコップ・ぺズーへ。今回のマフィア壊滅事件の主犯と断定しました」






カシャッ カシャッ






「そして主犯に協力し当日現場に居合わせた武器密造、及び密輸の疑いのある"猫"。もう一方は裏社会の法を(つかさど)る通称裁定者"シルベニア"」


「今回の犯人らの行動は犯罪組織本部を襲撃したものでありますが、組織本部のビルに居あわせた犯罪とは無関係の委託業者も銃撃、及び殺害までに至っており、我々警察局も到底見過ごす訳には行かず現ドイツ首相に嘆願書を提出したところ...」


「ドイツ連邦軍、警察機動隊による旧東ドイツ反社会的勢力の合同壊滅作戦が実施されることに至りました」





カチッ...カチッ...カチッ...カチッ...






解説者の腕時計が午後11時10分の針を指す。






「それではこれより合同作戦を開始します。高級職各員、お願い致します」





_______________________




_____フリック新聞社 フランクフルト支部





ガタッ ドタッ______________





「...おいノイアー聞いたか...首相が緊急事態法制を発動したぞ」


「俺らも軍と行動して悪人共の死体を撮れってよ...ッ」





カタカタ...





「...道理で朝から騒がしいわけだよ。でも僕らはジャーナリストじゃなく総務部。いくら緊急事態法制って言ったって、そんな馬鹿な話あるか」






デスクの前で今日の見出しのレイアウトを決めていた21歳の黒髪の青年の目には深いクマができていた。


一昨日(おととい)からこのデスクに座りっぱなしだ。


故にこの同僚の男の話も聞いているようで聞いていないようなものだった。





「それがよ...最近起こったマフィア本部壊滅事件、その主犯を警察らは今血眼になって探してるらしくてさ」


「クロズコップ・ぺズーへ。政府はそいつを見つけ次第射殺ってくらいにブチ切れらしいんだよ」






「____________」






_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _


「ノイアー君は人の痛みがわかる優しい子だから」


「君は、迷っちゃダメだよ」

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _





「_________」


「______ここに____いたのか____」






「...ノイアー...おい...どうした...?」






「...悪ぃ...軍に参加するのはお前だけだ」


「僕は...一人で"行く"」





カツ カツ カツ カツ...





______________________





自分のロッカーを漁り"あるもの"を探す。


かつて迷いなくそれを持って入社したはずが、いつしか多量の業務量の末に忘れ去ってしまった"あるもの"。





ガサ____ドサッ_____ガギャッ_____






姉さん...ぺズ姉さん。


一体今までどこにいたんだよ。


戦争に行ったっきり、なんの情報も見つからなかった。


死んでしまったのかと。皆そう思ったまま大人になってしまった。


...でも生きてる。まだ生きてるんだよ。良かった。


政府に見つかる前に僕が見つけ出す。


色々姉さんにも事情があるのかもしれない。見つけ次第銃殺なんてさせるものか。


...真実を洗い出してやる。今度は僕が彼女に手を貸してやるのだ。


絶対に銃殺なんてさせるものか。






「おい、お前どうしちまったんだよ...!」


「まさか...本気で一人で行くつもりか...?」





「...」





「絶対ダメだ。警備も付けずにギャング共の巣窟に入った記者が殺された事例は幾度だってある」


「絶対にやめろ。死にたいのか」






「...っ」






見つけた。


自分の道標。


Nikon Z6。過酷な環境下でも動作する優れもの。


僕はこれを持って、3年前この新聞社に入社したんだ。






「...」


「小さい頃からずっっっっっっと今まで...僕はジャーナリストに焦がれていた」





「...」





「編集局長に伝えてくれないか」


「____今日でここ辞めるって____」






_______________________



______翌日 ぺズの家 午前3時36分______






プルルルルッ_______プルルルル_____





「ん"...ゔぅ...」





「うん...誰でしょうか...こんな夜中に...」





「...悪い。睡眠モードを解除してた」


「レーナは寝ててくれ...」





_______ピッ





「...はい。クロズコップです」





「...私だ」






「...お前...もう夜更けだぞ」


「裁定者。何の用だ」





「この通話が終わればそのスマホを破壊しろ」


「盗聴されてる」





「...」


「...は?」





「...1時間前首相が旧東ドイツ領全域に掃討作戦を仕掛けると発表した。反社会的勢力絶滅に踏み切ったということだ。マフィア共の行動は著しく制限されるだろう」


「だがまだこれは序章だ。直近で起こった事件を覚えているか?」





「それは...私のあれか?」





「ああ。お前が単身で乗り込み犯罪組織を壊滅させた事件。あれが最も新しい」


「そしてあのビルの人間をお前は全員殺したはずだ」






「それが...なんだ。私は構成員を殺しただけだぞ」






「...あの中には、犯罪組織と知らず委託を受けていた一般の民間企業の社員も居たそうだ」






「...」






「つまり今回の軍事作戦はお前の殺害がトリガーとなって政府を怒らせたことで生じた。よっては...」


「真っ先にお前が狙われる。これは間違いないだろう」






「...」


「...お前はどうなる。その場にいた猫は、あの少年は________」






「▅▅▅全員殺される▅▅間違いなく▅▅▅」






「...」





「首相が銃殺を許可した以上、警察のリストに乗ったドイツの悪人共は絶滅するように消える。連邦ができて以来初の頂上作戦だ」


「最早悪人のための法律は崩壊し、取り残された悪人共はお前を呪い何十年何百年も国民から忌み嫌われる存在になる」


「少なくともこの国で生きていくことはできない。お前の愛人もな」





「...」


「なんで盗聴されてまで私にそのことを連絡してきた。私のせいでお前らまで殺されるってのに」





「...」


「私はお前が好きだ。クロズコップ」


「お前は人を拷問し殺すクズ野郎だが畜生ではない。拷問し殺されるのは未成年を性奴隷にしたり金に目が眩んで人をぶっ刺す乞食野郎共だ」


「そんな奴らをブチ殺して...お前は皆が密かに感じている不快を取り除く才能を持っている。そう、言うならば...」


「真のアウトローとしての才能」





「...」





「倫理観抜きで言わせてもらう。お前はこの世で最高にロックでぶっ飛んでてイカしたアウトロー。どうせその様子じゃ死に様も伝説的だろう」


「何十年も待ってやっと現れた本物のアウトローの最期を見られるんだ」


「▅▅▅▅私は死んだっていい▅▅▅▅」






「...お前...」


「イカれてるぜ」





「黙れ。タダで死んだら絶対に許さない」


「▅▅▅▅その時は血反吐吐きながらでもテメェを殺しに行くから覚悟しとけ▅▅▅▅」







プツッ






プーッ プーッ プーッ プーッ....






「...」


「...レーナを起こさなくちゃ」








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