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第十四話 終止符






プルルルルル...プルルルルルル...






ピッ






『猫にゃ』






「猫。裁定所に報告してくれ。昨日私の敷地に爆弾を設置したクソ野郎がいた」


「確か裁定結果は、あれだ...マフィアは私と私の家族には手出しできなかったんじゃなかったのか?」


「もしそれを破ってるとしたら...マフィア側は制裁を受ける決まりになってるだろ」






『...ちょっと待つにゃ。それ本当にそのマフィアの一員だったのかにゃ?』






「当然だろ...!今までこんな事はなかったんだ!」






『うーん...分かったにゃ。その男の身元の開示と裁定者への連絡を急ぐにゃ』


『ただ...この間のマフィアと関係なしって言われる可能性も無くはないにゃ』






「は?なんでだよ...ッ!」






『裁定所にバレないように暗殺を行う方法なんていくらでもあるにゃ。例えば10年ほど前のアイリッシュ系ギャングの件がいい例だにゃ』


『奴ら、抗争の一件を裁定所に取り上げられて敵対組織に負けた時敵対組織のボスを暗殺したんだにゃ。もちろん暗殺者はアイリッシュ系とは無関係と裁定者が示したんだにゃ』


『でもこれって、裁定者に裏金渡したとかそういう事じゃないんにゃ。どうやら奴ら、敵対組織の一員を金で買収して自分の意思で親殺ししたって主張させたらしいんにゃね』


『それも自分で主張したら10万とか20万とかのユーロを現金で渡すと約束したらしいのにゃ』






「なんだそれ...結局裁定所も腐敗してんじゃねぇかッ!」





『流石に裁定者もおかしいと感じたけど、当時それを証明するものが何も無かった。証拠がひとつも見つからなかった』


『そして裁定は謎を残したまま終わりを迎えた。結局は証拠がなければ裁定者も無い袖は振れないってことにゃ』






「っはぁ...」


「じゃあ私にどうしろって?」






『...爆弾野郎があの犯罪組織の一員である証拠を洗い出すしかないにゃ。ぺズ、そいつからなにか情報を引き出せそうかにゃ?』





「...無理。奴の持ってた爆弾でバラバラにしちまった」


「唯一残ってた肉片も今頃野生動物に食われちまってるだろうな」


「あとはまぁ...枯葉に染み込んだ昨日の血くらいなら残ってるか?」





『________それにゃあッ!』






「そんなんでいいのか?」






『バカ、うちにはDNA鑑定機器と複合DNAインデックスシステムがあるにゃ!』


『それでそいつがどこのどいつか分かるってわけにゃ!』






「なんでそんなもん持ってんだ?」


「まぁいいか...とりあえず血を採取しに行けるか?正直いつ襲われるか分からないし家を離れたくないんだ」






『お易い御用にゃ。うん...まぁ、ただぁにゃ...』






「はぁ...また時計買ってやるよ。それでこの件はチャラだ」






『んやったにゃ!絶対だからにゃ!』






「あぁ...頼むぞ」




______________________





ピンポーンッ





「...誰だ?」





ガチャッ





「うち訪問販売してないんすけど」





ドアを開けた先にいたものは、白いシャツを着た黒髪の少年だった。





「やぁどうも。ぺズさん、ですよね」





「君...何か用か?」





「あーいえ、別に大したことでは無いんです」


「爆弾野郎の件について、今後話し合いをしたいと思いまして」





「...」


「場所を変えようか」





「では僕の車にご乗車ください。適当な喫茶にでも入店しましょう」


「あぁ安心して。不意打ちなんて無粋な真似はしません。そういうの、嫌いなんですよ」





「...」





私は黒のジャガーXJ12に乗車した。





______________________





______ブロロロロロロッ_________






現代の車に比べて揺れが激しい。


少し古い車だからだ。


前の運転手は慣れているんだろう。表情ひとつ変えようとしない。


何故か隣に座っている少年も依然として微笑んでいるだけだ。こちらも表情を変えない。


...無言の異質な空間だった。





「______あなた____僕の首絞めます_?」





「...」


「...悪ぃ。もう一回言ってくれないか?」





「いやぁ、すいません。僕どうもこういう空気苦手で」


「ここはいっそ快楽に(まみ)れた方が良くないですか?」





少年が私の右手を掴んで自らの首にあてる。





「知ってますか?僕の首って細くて枝みたいらしいんです」


「好きな人はね...ミシミシ音がするくらい、へし折れる寸前まで力を込めるんです」


「滑らかな若い肌を潰して...気持ちよくなってみませんか?」






「...ッ」






一瞬、その恍惚に塗れた少年の笑顔が血で汚れているように見えた。


こいつは...まるで時計じかけのオレンジだ。


見た目は変哲のない果物だが、中身は機械仕掛けっておかしな構造。


この少年を狂わせた何かが、この犯罪組織の中にいる。






「君...今何歳?」






「16歳です。如何ですか?」





「...そうか。まだガキじゃん」


「▅▅▅▅組織潰す時お前だけは見逃してやる▅▅▅」






「...はい...っ?」





「私はさ...どうしようも無い殺人鬼だし、人の皮を剥がすキチガイだって言うやつもいる。全部正しい。間違ってねぇよ」


「でも子供を。ガキを慰みものにするクズを全てこの手でぶち殺してきたことだけは私の誇りだ。勲章もんだぜ」


「お前をそうやって扱ってきたチンカス野郎の皮を剥ぐことを今決めた。お前に拒否権はない」






「な...は...ははっ!」


「あなたに何が分かるんですか?これは僕にとっての愛の証なんですよ」


「より強ければ僕を愛してくれている...そういう証なんです...!」





「...そうしてきた人間はお前を愛していない」






「はぁ!?何を勝手なこと_______ッッ」






「無償の愛なんか私がくれてやる」






「_________」






「だから少し黙ってろ。割とムカついてんだよ、こっちは」






「...ぇ...」






カチョッ






「運転手。このまま本拠地まで突っ走れよ」


「少しでも妙な真似したら脳みそぶちまけるぞ。テメェも所詮...」


「これみて見ぬフリしてたんだろ?カス野郎」






「か、勝手なことはやめろ!おいセルター!絶対に本部に行くんじゃないぞ!」






グイッ






「ガキは座ってろ。シートベルトしてな」






「(こいつ...片手だけで...動けない...!)」






「▅▅▅おい...本気で殺すぞ。さっさとスピード上げろ▅▅▅」






「_________ッ!」






ガォ______ォオオオオン_____ッ






「よし...そのままだ」


「ガキも大人しくしてろ。手を離すぞ」





プルルルルルッ________プルルルルル___





スマホを取りだし連絡先を開いた。


猫宛てだ。





ピッ






『なんにゃ。今解析中にゃ』






「よぉ猫。いいニュース」


「こいつらガキのチンポしゃぶってたらしいぜ。それって確か、児童虐待で合ってるよな?」





『...ったく...一体なんの話にゃ?』





「いやいや...丁度組織に拉致って名のご招待を受けてさ」


「"逃げる為"に組織全部ぶっ潰しても裁定結果は無罪だよな?」





『あー...なんか嫌な予感するにゃ。何する気にゃ』






「決まってんだろ」


「浮世でも殺して裁定でも殺してやるのさ」





_______________________





ガチャッ





「お前はここで座ってろ。あと、念の為携帯電話とかは預かっとくから」





「...こんなことして...直ぐに派生組織があなたを殺しに行きますよ...ッ」





「...」


「問題ない。どうせそいつらは」


「裁定者をビビる雑魚だからな」





バタンッ





「さて...」





チャカッ






目標、4階建てのビル。


建物の大きさから予想して....40人ってとこか。





「寝ぼけた爺さんのカマでも掘りに行くか」





ドガァッ





ドアを思い切り蹴りで開け、中の護衛らしき奴2人に銃口を据える。





「あ、んだテメェはッ!!」






「Say hello to my little friends(私の小さな友達に挨拶しな)」





バシュッ バシュッ






「ゔっげ...ッ」






「弾足りねぇし、銃借りてくぜ」





そいつの袖からマカロフを抜いて腰に刺した。





カツ...カツ...カツ...カツ____________





「ふん...ふふんふんふ〜ん」





ドガッ





ドアを蹴破り金を数えている構成員の頭部を狂わず貫通する。






バシュッ バシュッ バシュッ_________






「正義を盾に人を殺すのは楽しいにぁ〜ッ!!!」


「ってかぁ?」





バズッバズッ_______バシュッ______






カツ カツ カツ カツ________






2階へ上がる。


別に特段変わったことは無かったよ。


暴力団員が暴力団員らしい仕事をしてるだけだ。


金数えて、椅子に座ってる兄貴分のタバコに火つけて、若い衆は組織のためにただ"消費"される。


挙句将来の出世を約束させた上で罪を被って刑務所行き。


そしてそいつは見事幹部の座や自分の組を持つことを許されるってそれ...





「新人は本当に信じちゃうんだねぇ...」





バシュッバシュッ______バシュッ____






3階へ上がる。


話を戻そうか。


ボケが騙されるその約束は一体どれだけの人間が果たされるのだろうか。


少なくとも一組織一割の人間が限界だろう。


限られた組織の中で、そんなポンポン幹部が生まれたらヤクザ屋は潰れる。


所詮犯罪組織も会社と似た一介の"組織"であり、そんなジェンガのように今にも崩れそうな構造をしているだけなのだ。





4階のボスの部屋の前の護衛2人の胸を撃ち抜く。


防弾チョッキを着ている場合を想定して倒れた後も眉間に1発ずつぶち込んだ。





ガチャッ





「どうもー、あのぉボスのカマ掘りに来たクロズコップですけどぉ」






「あ...ぉあ...ッ」






ボスのオッサンは正面のでかいデスクを後ずさりするように汗まみれで息を荒くしていた。


ほら。これだよ。


結局のところ、こういう世界で上り詰める奴ってのはこういうタイプさ。


よくある任侠や義理なんてものはまやかしで。


今はゴマすりと運だけで成り上がれる腐敗しきった世界よ。





チャキッ





「ま...だからって昔のヤクザがそんな良い奴だったとは思わねぇけどな」


「息を止めろ。念仏唱える余裕も与えず殺してやる」






...と。


何か右の方から視線を感じた。


その正体は、椅子に座ってじっと腕を組んでいる裁定者シルベニアの姿であった。





「これはこれは。あれ、もしかして私を差し置いて秘密の取引ですか?裁定者のシルベニアさん」





「おい、全部聞いてたぞ。お前裁定もなしに襲撃仕掛けてどうなるか分かってるんだろうな」


「それと、私は裏取引なんて腐敗はしない。今回は事情聴取のために立ち寄っただけだ」





「事情聴取?ならいいこと教えてやるよ裁定者」


「この野郎。16のガキに手出したって知ってるか?」






「...あ?なんだそれ」






「あ...っち、違うッ!!俺はそんな事してねぇぞッ!!」


「言いがかりだ...ッ!!裁定者、このキチガイの言うこと信じるんですか!?」





「...クロズコップ。証拠はあるんだろうな」






「まぁ証拠っていうより...証人?」


「丁度下の車に乗ってるよ。その運転手にも聞けば事情がよく分かるはずさ」


「可哀想だよなぁ。性加害が自分を愛してくれる唯一の方法なんだってさ」






「おい...確かお前んとこ未成年っぽい奴が居たよな」


「クロズコップ。その証人をこの場に連れてこい」





「あぁ、いいよ」






プルルルルル________プルルルル____






「猫。車の少年を4階まで頼む」





_______電話を切り4分ほど待つ______





ガチャッ






カツ カツ カツ カツ...





そして少年を連れた猫が歩いて扉から入ってきた。





「あ?なんでここに猫がいんだよ」





「念の為近くに呼んでおいたのさ」






「またあったにゃ。裁定者」







「...」






「...で、ボス。こいつに見覚えあるよな?」






「は...は、づっ、知らねぇよこんなガキッ!!」


「そもそもこれが一体なんの証拠になるってんだ?あぁ!?テメェ妄想ばっか言ってんじゃねぇぞボケッッ!!」





「...え?」






少年から出た声は想像よりか細いものだった。


それこそ彼の言った小枝が軋んで折れるような音。


自信の存在すら否定された彼の心情は想像に難くない。





「嘘だ...ヨルクさん嘘ですよね?」


「は、はは...僕を家族って言ってくれた...僕ですよ、ローレンツですよ!」





「だから知らねぇって言ってんだろッ!!お前少し黙れよ!!」






「あーあー、ちょっと黙ってろオッサン」


「裁定者。これを見ろ」





ガバッ





少年のシャツをたくし上げ、その痣の数々を晒した。


すなわち性加害、または虐待の決定的な証拠となるものを裁定者に認知させたのである。






「私はこれより前に所有する孤児院に爆弾を仕掛けられた。無論こいつの息がかかっている暗殺者にだ」


「ガキの寝てる家にだぞ?私の今やってる行為が襲撃だっていうならこいつはジェノサイドそのもの。違うのか?」


「▅▅▅違うならなんとか言ってみろよ裁判官気取りが▅▅▅」






「...」


「今のはクソ癇に障るが、許してやるクソ野郎」


「おい。たった今裁定結果を出してやるぺドフィリアのクソ野郎」


「テメェは裁定者の私に嘘ついてこの少年に性的暴行及び虐待を行い、挙句もう裁定結果が出たのにクロズコップへ暗殺を企てた。その上孤児院を狙った爆弾テロは限りなく悪質だ」





「な...ッ!マジにこいつの言うこと信じるんですか裁定者ッ!?」





「黙れ。もう猫が爆弾野郎のDNA解析してテメェんとこの構成員ってバレてんだよ」


「テメェほど裁定をコケにした奴はいねぇ。そんなお前にこの刑罰をくれてやるよ」


「▅▅▅"クロズコップによる私刑"の後に"死刑だ"▅▅▅」





「え...え?」






シャキッ






「やっと合法的にぶっ殺せるよ。なぁ?」


「まずはその薄汚ぇ尿道にささくれた棒でも刺そっか。意識飛ばねぇように歯食いしばってくれ」





丁度デスクの上に乗っていた鉛筆をナイフで細くし、荒削りしていく。


腰を抜かし震える野郎のズボンとパンツを脱がしてやり、男性器の先端の割れ目に狙いを定めてそのささくれた鉛筆を勢いよく押し込んだ。






ブヅッ__________






「ゔッッづぃぎやぁあ"ぁぁ"ああ"あッッ!!!!!」






「あ...勢いつけすぎて横に貫通しちまった。やっぱ勃起してねぇと無理かぁ...」






「(...相変わらず凄惨極めてるにゃあ...こいつ本当に人間かにゃ?)」






「おい、ついでに去勢してやったらどうだ?デスクに年季の入ったハサミも用意されてるぞ」





「づははっ!それいいや。去勢された猫も大人しくなるって言うもんな」






「(じょ、冗談じゃないにゃ...)」






デスクに乗ったいい具合に錆びれたハサミを手に取り奴の(しな)びた精巣に向けて刃を向かわせる。






「はぁ"...ッ!ぎゃっ、ぎゃめで...やめ...ずみまぜんッ!!ずみまぜんでじだぁぁ"ああ"ああ"ッッ!!!」






「「▅▅▅地獄で詫びろ▅▅▅」」







ヂョギヂョギ_______ヂャギッ_____











[第十四話 終止符 ー完ー]




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