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第十二話 She has come to (彼女は目覚めた)





チャララー チャララー ラララァラー






ドゥドゥッ ドゥン






チャララー ラララーラララァー






ドゥドゥッ ドゥン






チャララー ラララァ ラー





ドゥパッ__________________






「__________」






ラジオから流れるシンセサイザーのザラついた音で初めて息を吸った。


目が覚めたんだ。


未だ朦朧とした意識の中私が最後に見た光景が...あぁ、全身に一斉射撃を受ける夢だっけ。


うっすらだが霞む視界越しにある白い壁紙を見る限り、多分私は救われた。


ギリギリで頭への射撃を避けられた代償に失ったのは全身の感覚。


...そうだ。私の四肢って_____________






ピッ____ピッ____ピッ_____ピッ____






『目が...覚めましたか』






「ぐっ...ゔぅ...」


「...だれ...だ」






『あぁ、まだ動ける状態ではありません。動かないで』






目の前に気配を感じる。


人間の生暖かさだ。


白衣...医者か。


段々と視界が回復してきた。





『いいですか、クロズコップさん。落ち着いて聞いてください』


『あなたは...9年間、昏睡(コーマ) 状態にありました』






「...」


「..........は」


「...は...あ.......はっ...がぁ...ッッ!!」






ガッ_______ガタッ______






『_____アコイズミー!アコイズミー!!』






...嘘だ...きっと悪い夢だ。


それじゃレーナは...レーナはどこに行ったって言うんだ?


9年だと?


ふざけてるのか...?







『実を言うと...右腕も』


『...えぇ。最早使い物にならなかったため、"切除"しました』






「ひ...がぁ...ッ!!ばっ...は...はぁ...ッ!!!」






右...右腕...ッ


言われてみれば、さっきから感覚がなかった。


嘘だろ、嘘だろ嘘だろ嘘だろ。


嫌だ、見たくない。


それじゃ私は、もう芋虫人間になって_______ッッ






『...っは』


『___________なんてにゃ』






「...」


「...はっ...はは...」


「...あ"ぁ?」






あの喋り方。あの茶髪。


見れば見るほどクソ猫にそっくりだ。






猫はベッドの先の机まで歩いてそのラジカセを止めた。





___________カチッ






「はぁ...やっと起きたにゃぁ...君の愛人撒いてメタルギアごっこするまで骨が折れたにゃんね」





「お前マジで〇すぞッッ!!」






「落ち着いて聞くにゃ。なんで私がこんな真似したかわかるにゃ?」






猫は私のベッドのすぐ右側に置いてある丸椅子に項垂れるようにして座った。






「チッ...はっ...?知らねぇよ...っ」






「それはにゃあ...」


「未だにメタルギアⅤが未完成の状態で発売されたことにクソほどキレてるからにゃ...ッッ!!!」






「知らねぇよクソ猫がッッ!!!」






「序章のストーリーは真の意味で完璧だったにゃ...洋画テイストに脳が焼けるような衝撃と興味深さ、これから何が起こるのだろうという無限の興味が引き寄せられる。そんな映画とゲームを濃密にブレンドしたような、小島節炸裂の正に神ゲーだったにゃ」


「ただッッ!!!なんにゃあの後半の予告詐欺はッッ!?!?ヴェノムが仲間の遺灰を手に、これから復讐するってところで物語はブツ切りにゃッッ!!!子供の頃のリキッドとか、第三章の続きはどこいったんだにゃッッ!?」


「...最終的に...サヘラントロプス(今作のメタルギア)は破壊したし、宿敵スカルフェイスにも引導を渡したにゃ。ヴェノムが何者で、ラストシーンで鏡をブチ破ってその中に消えてエンディングが流れる演出は小便漏らす程震えたにゃ」


「...そういうの見る度つくづく思うのにゃ。コ〇ミは最後まで監督にゲームを作らせるべきだったって。両者にいくら亀裂が入ってたって、せめて完成させてからゲームを発売させるべきだったって。期待してたユーザーを裏切るマネはするべきじゃなかったんにゃ...」


「...もちろんfoxエンジンを使用した映像や操作性は期待以上にゃ。素晴らしかった。ただ...メタルギアシリーズが一番大事にしてたシナリオという財産だけは守って欲しかったんだにゃ」






沈黙が流れる。


猫は椅子に項垂れながら、私の掛け布団を強く握りしめ、泣いた。


その光景を見て私は思ったんだ。


_____こいつイカレすぎだろ______って。


人の病室勝手に入ってきてゲームがどうとかこうとか言って最終的に本気で泣いてるの頭おかしすぎるって。


こっちは銃弾全身に浴びて意識不明だったんだよ。





「...」





まぁ...でも


猫には世話になったし、病院で治療を受けられたのも彼女がここに搬送してくれたおかげだったのは確かで。


本気で邪険にはしたくなかった。






「...」


「...猫」





_________でも。






ビキビキビキッ






「とっとと出てってくれ」





やっぱり怒りを抑えることが出来なかった。


笑顔で取り繕うと笑ってみたが流石に無理だ。


私がナースコールを押すと猫は屈強な看護師2人に外に引きずられていった。






「まだだ...まだ終わっていない!!」


「やめ、離すにゃぁああああッッッ!!!」






ズルズルズル...






「...」


「...さっさと体治すか」





______________________






______プルルルル_____プルルルル_____





猫は車に乗り次第電話をかけ始める。


アルピナB12にエンジンはかけていない。





_______プッ






『もしもし』






「私にゃ。ぺズの状態を確認、よって容態を裁定所に口頭で提出するにゃ」


「全身に7.62×39mm弾を受けてなお正常に回復。依然として手も足も機能してるにゃ」


「弾丸も全て摘出、後遺症もなし。まぁあと1ヶ月で退院ってとこかにゃあ...」






『...馬鹿か?後遺症もなく無事って、そんなわけないだろ』






「にゃはは。残念ながらそんな訳にゃ」


「私が製造してお前らに売ったそのAKMも高性能間違いないにゃ。じゃあなんで無傷にまで回復してるのか」


「単純にぺズの生命力が尋常じゃないってことにゃ。ほら、ラスプーチンってやつも生命エネルギー多すぎて何発撃たれても中々死ななかったにゃろ?それと同義にゃ」


「確かあいつメキシコの紛争地帯で顔面を撃たれても死んでなかったはずにゃ」






『...っ』






「ま、これに懲りたらあんまぺズと関わらない方がいいにゃ。言わばあいつは、歩く厄災にゃ」


「特にゴロツキ共の蔓延(はびこ)るこの裏社会では、バカが手出してもっと犠牲が出るかもしれんにゃ。裁定者としてはそんなの避けたいにゃろ?」







『...』


『...チッ....クソが...』






ブツっ






つー つー つー つー...






「...」


「...さて...これにて一件落着にゃあ...もうこれでぺズの愛人も、ぺズの友達も裏社会から関わりが消えたと言ってもいいにゃ」


「...」


「久しぶりにバーガーキングでドカ食いでもしてくるかにゃ。にゃはは...っ!!」






そして猫はキーを回し、エンジンをかけた。






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