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第十一話 法の死滅




タッタッタッタッ__________







「_____裁定者_____裁定者ちょっと待ってくださいよッ!!」


「なんなんですかさっきのあれッ!あんなん許されていいんですか!?」






裁定終了後から6分。


シルベニアが執務室へ向かう蛍光灯の下で、裁定結果を見届けた補助役が彼女に向かって走ってくる。


同じく法服を着た黒髪オールバックの男だ。






カツ カツ カツ カツ...






「...」






「マフィア側は確かに懸賞金かけて殺そうとしましたけど、実際その家族や友人には手をかけていない」


「乞食もクロズコップを刺しましたが、ヤク漬けにして生きたまま生皮剥がれるのはやりすぎだ...ッ!!」


「それで裁定結果5対5...?おかしいでしょそもそもッ!!」






カツ カッ...






彼女は足を止めた。


ある羽の生えた黒い人型の像の前で。







「...おい。あれが見えるか?」






シルベニアが指を指す。






「あれっ...って、審判の女神マアトの像...」






「じゃあなんでここに像が置いてあるんだ?」







「それは...ここは裁判所とは違って、悪人を裁く場所だから___________」






ブッグォォア_________ッッ






「グギョおッ_________ッ!!」






「違ぇだろボケ。殺されてぇのか?」






瞬間、補助役の鼻先目掛けて空を切る肘鉄が飛ぶ。


鼻筋がジグザグに折れ曲がり、穴からこぼれた大量の血液が真っ白な廊下を赤く汚した。






ボタボタ...ボタ...ッ






「は、はにゃが...ッッ!!!」






ガシッ






シルベニアは男の髪を掴み、その像に視線を向けさせる。






「ここに法の女神がいないのは、ここは結果だけを見て罪を判断する場所だからだ」


「女神マアトは死んだ人間の心臓を秤で計算し、その重さで罪を決めるそうだ。つまりこの裁定所において死んだ人間、もとい結果だけが残る。過程や道中などマアトの前ではどうだっていい」


「クロズコップが人の皮剥ごうが拷問しようが悪人の罪を(はか)るのは我々じゃない。測ってもらう生贄を決めんのが我々の職務なんだ。わかるか?」


「わかったら...とっとと消えろカスがッ!」






「ぶっ...ふぅ...ッ、ぬぅ...ッ!!」






タッタッタッタッ...






「...」






「あーあー。随分と酷いことするにゃ」


「そんなんで裁定者務まるのかにゃ?」






いつの間にか、壁に寄りかかっていた猫がシルベニアに声をかける。


その猫なで声を聞いてシルベニアは眉間に皺を寄せた。






「...どうした?裁定は終わりだ」


「帰って砂に小便する時間だろ。第28代目」


「"猫"」






「...」


「...中々ご挨拶だにゃあ...シルベニア」


「そう。私は第28代目"猫"。おめーらがケツの青いガキの頃よりずっと昔から武器を作って売ってきた一族にゃ」


「第二次世界大戦なんて全くの最近にゃ」






「...気色悪いな。容姿まで子供の頃から"整形"し初代に似せ、生まれたままの性格すらもねじ曲げ初代へ"形成"する」


「それを28回も繰り返してきた一族だ。その後継者であるお前がまともなはずがないだろ」






「まとも?ここにまともな人間なんていないにゃ」


「お前もにゃ。周りの空気を読めず罷免された裁判官が裁定者なんてやって、裁判所の真似事なんて落ちぶれたものにゃ」


「おままごとも程々の方がいいにゃ」






そう言って猫は乾いた笑い声を上げる。


益々シルベニアの血圧が脈々と上昇していく。






「お前さ...何?なんで着いてきてんの?そういうのも組み込まれてるわけ?」


「さっさと帰ってくれよ。死にかけのクロズコップのお見舞いでも行きにさ」







「...」


「...はぁ...やれやれだにゃ。お疲れ様とお礼を言いに来ただけなのに。やっぱガキは扱いづらくて大変だにゃ」






「チッ...ガチで要らねぇって...そういうのムカつくんだよ」


「お前らに味方したわけじゃねぇんだよ。早く消えろ。早く」






「ん、そうかにゃ。じゃ、帰るとするかにゃ」


「所詮生きるか死ぬかは運次第。女神とやらの目も節穴だにゃあ」


「にゃっはっはっは__________!」






「...」

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