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20xx年9月10日
退屈しのぎに動画を観ていた。
特段笑うことは無く、悲しむことも無い。
ただ、ぼんやりと液晶画面に映る人々の行動を見つめる。
それだけで時間は過ぎていく━━━━━━━
食べる姿や、危険を冒す姿、雑談する姿に、コメディをし、笑いを誘う姿まで多種の姿が映し出される。
だが、関心がないのか全ての尺を観ることなく、指で画面をスワイプさせ、次の動画を観る。
何分、何時間経っただろうか。
繰り返していると、ある動画が目に入った。
再生回数は0回、誰の目にも入ることのなかった動画だ
背景は白く、真ん中には黒い文字で
「欲しい力を選べ」
と、淡白に書かれていた。
数秒経って文字が消え、替わりに別の文字に置き換えられる。
異能力
空間歪曲
に選ばれました。
「……ふ…はは!」
馬鹿馬鹿しい
なんて馬鹿馬鹿しい
そう思った
だが、それと同時に子供心の擽られる内容に心が踊る
それに加え
"選ばれました"
今まで必要とされてこなかった者にとって、喉から手が出るほど欲しい言葉だった。
選ばれる、それは誰かを蹴落して成立する言葉だ。
複数の者の中から自分だけが選ばれたという高揚感が男を占めた。
だが、それも束の間、我に返り興味を失った男はまたスワイプしようと指に力を入れたその時━━━━━━━━
瞼が急に重くなる
「なん…だ……こ…」
そこで男の意識は途切れた