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特来  作者: 今木照
守り切れ!主人公の純ケツ!!
40/46

追われる恋も思ったほど楽じゃない。

前回のあらすじィ!!


大説教に続く悪夢の減給処分!!

疲れ果てた主人公、特人トクト達は英気を養うため、一旦現代の我が家に帰ることに!

西暦2324年

特課オフィス内にて...




自分の意思で時空を超えるのもこれで三回目。流石に馴れてきたもんだ。

俺とナノハとサキちゃんはもう一度お互いに目くばせをし、同時に心の中で叫ぶ。


(元居た現代、西暦2024年の8月1日に戻れッ!!)


そう、過去に戻るときも未来に行くときも条件は同じ。

この銀色の指輪を装着し、行きたい時代、日付を心の中で強く願うだけ。


(ほら、きたきた!)


俺の足元から徐々に床が消えたような浮遊感が込み上がり、やがてそれが体を包んでいく。

そして1秒経つか経たないかくらいのタイミングで、俺は完全に時空のトンネルへと転送される。


時空のトンネルは相変わらず無機質な数字が羅列された青一色の筒形の空間で、俺達はその直径20メートル程の筒の中を、ただ重力に従って落ちていくだけだ。

ふと下を見ると、ナノハが退屈そうに、サキちゃんがそんなナノハを眺めて楽し気に落下していた。まぁ二人も俺と同じ日付に戻るわけだから、結局帰りは三人一緒になるわけだ。


俺は少し慣れた動きで降下していき、先に落ちていた二人に追いつく。


「お~い、お疲れちゃ~ん!いや~、それにしても初仕事がこんな激務になるとはなぁ~...」


俺の声が聞こえたのか、サキちゃんは上を見上げて俺と目を合わせる。

一方ナノハはコチラを見ないまま、深い溜息と共にグチグチ小言を溢す。


「まったくじゃ。未来の世界も仕事のことも何にも分からんワシらに、フツーあんな仕事押し付けるもんかのう?及川の奴、ワシらに過度な期待をしているか、相当な鬼上司かのどっちかじゃな。」


俺は珍しくナノハの意見に賛同し、ついつい彼女に続いて声を荒げてしまう。


「ほんとだよなぁ!俺の給料を秋田県の最低賃金にするとか、鬼も鬼!上弦の鬼くらい鬼だわ、あの上弦上司がッ!」


と、俺が一通り及川への鬱憤を発散した所で、横目にサキちゃんの表情が映り込んだ。


彼女は目を丸くして、何かを見ている。

最初は俺の美貌にようやく気付き、俺の顔面に目を奪われているだけかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。彼女の視線は俺のさらに奥に向いていたのだ。


(...サキちゃんは何見てんだ?こんな無機質な空間で、そんなにも目を引くようなもの_____!!)


と、サキちゃんの視線に釣られて俺も振り返った、その時。

たしかに、俺の瞳に、見覚えのある赤色が映った。


それは...



「な、なんで江口がここに居るんだァァァーーー!!??」



そう。

そこにはさっきまで会話していた、上司であり、命の恩人であり、そして、過去に行く必要のない未来人である、”江口・裏側守備表示・日平”がいた。



「あ~ん!バレちゃったっ!」



___________________________________________________________________________________________



西暦2024年 8月1日  午後17時15分

千葉県某所にて...



「で、どうして江口さんまで一緒に現代に来ちゃったんですか?何か理由が?」


サキちゃんはオレンジ色になった夕日に照らされながら、至って冷静に江口に向かって質問をぶつける。

辺りの景色は見慣れた現代のもので、未来の世界で見るような輝くビルや変な材質の木々と違って、目と心に優しい。

俺、ナノハ、サキちゃん、江口の四人は、人目のつかなそうな路地に足を運び、そこで江口がついて来た理由について質問をしていた。


別に江口が俺達と一緒に現代に来たところでこちらに不都合は無いのだが、純粋に彼が何故、現代にまでついて来たのかが気になってしまう。

すると、江口が何故か恥じらうような素振りを見せながら、小さく口を開いた。


「だってぇ~、まだトクちんと絆を深めてないからぁ~、少し二人っきりでお話したいなぁ~、って思って?」


俺は江口がチラリとこちらに目を向けてきたことに気づき、咄嗟に目を逸らす。

そして脳裏に浮かぶ、一抹の不安。


(お、俺、江口(オカマ)に狙われてるゥゥーーーッ!!!)


そう。それは肉食獣に目をつけられた草食獣のような、被食側の絶望。

一抹(いちまつ)の不安どころじゃない、『イチモツの不安』!!


今までの人生、俺が一方的に容姿端麗な女子諸君に対してハイエナの如き肉食獣の視線を光らせてきた事はあった。

しかし!この俺がライオンに狙われるなんて事は、絶対になかった!

この、いつ捕食されるか分からない緊張感...、耐えられない!!


俺は怯え切った瞳をナノハの方に向け、何とか助け船を出してもらおうとSOSを要請する。

俺の縋るような視線に気づいたのか、ナノハがふと目を合わせてきた。


しかし、彼女の表情は徐々にあくどい笑顔に変貌していった。

そして、まるで俺の運命を嘲笑するかのようなニヤケ顔で、こう言い放つ。


「...ほう、絆を深めるとな!それは良い心意気ではないか!どうやって絆を深めるかはワシには皆目見当もつかんが、特人と()()()()()で、存分に絆を深めてくるんじゃぞ!明日の朝には、絆レベルがUP(アップ)しとるといいのう?フフッ。」


(クソガキィー!!こいつ、俺が江口に狙われていることを勘づいた上で、この後の行いを助長するような事を言いやがったッ!しかもなんだ絆レベルって!!明日レベルUPしてるのは、俺のケツ穴レベルだけだァーッ!!)


俺は怒りに身をワナワナと震わせたが、ここでもう一人の存在を思い出す。

そう、サキちゃんだ。


彼女は基本的に俺の事をゴキブリの卵と同レベルくらいにしか見てないので望みは薄いが、彼女は特課の課長である!

俺のSOSに気づいて救いの手を差し伸べてくれる可能性が0.3%くらいはあると信じて、彼女に声をかけてみよう...!


「さ、サキちゃん!サキちゃんって特課の課長なんだよね!?だったら俺と江口と一緒に来て、三人で絆を深めようよ!これから先、同じ職場で働く仲間として、お互いの事を知っておくことは大事だと思うんだ!」


するとサキちゃんはスンとした真顔でこちらに向き直り、淡々と言葉を並べ始めた。


「申し訳ないのですが、私は自身より年下の女の子以外にはあまり興味がないので結構です。私はこれから(住所を特定するために)ナノハちゃんと一緒に帰宅しますので。」


(クソッ!サキちゃんの完璧な外見に騙されて、彼女が重度のロリコンであることを忘れてしまっていた!この状況でサキちゃんがナノハを捨てて俺達と一緒に来るはずがない...!)


と、ここで江口がトドメを指すように口を開ける。


「じゃあ今日の所は解散にしちゃいましょ!ほら、早く行きましょトクちん?」


江口はクネクネと身をくねらせながら俺に擦り寄ってくる。


(クソッ、このままじゃ俺の貞操が危うい!!この際、サキちゃんを裏切る形になったとしても、多少強引にこの場を切り抜けなくては...!!)


俺は意を決して大きく口を開ける!

そしてキリっと見開いた目をナノハの方に向け、そのまま彼女に訴える!!


「おいナノハァ!テメェはサキちゃんと二人っきりになった後、無事で居られると本気で思ってんのか!?言いたくはなかったが、サキちゃんは美少女に生まれてきたから笑い話で済んでいるだけの、ネジが飛んだロリコン女だッ!だから自分の純潔を守りたかったら俺と一緒に___ングゥ!?」


ここで、俺の口が何者かに無理矢理塞がれる。

俺の横目に映ったのは、鮮明な赤色の髪の毛。

そう、俺の口を塞いだのは江口だった。


俺は江口から逃れようとジタバタと抵抗するが、彼の腕はビクともしない。何事もないような涼しい顔で俺の身動きを封じている。...どうやら彼はただのオカマではないらしい。


(このオカマ...!意地でも俺と二人きりの状況を作り出したいのかッ!!ナノハよ、頼むからサキちゃんの危険性に気づいて俺と一緒に来てくれ...!)


俺は自分の力で彼から逃れる事を諦め、唯一の希望であるナノハにありったけの感情を込めた視線を送る。

一方、俺の視線の先に居るナノハは先程の俺の説得に少し心動かされたようで、さっきよりも不安げな表情をしていた。


「た、たしかにサキはワシの事をそういう目で見てくることが多々あったが、...ワシは守備力がカンストしておるんだぞ!そ、それに!いざとなればアイスウォールで四方を囲って自分の身は守る!!」


「そうそう!ナノハちゃんはアイスウォールがありますからね~!私には指一本出せませんよ~!(...まぁ、アイスウォールを出される前に抱き着いちゃいますが。)」


ナノハは自分を安心させるように自分の特能を自信ありげに語るが、その虚栄の奥に不安が見え隠れしている。

しかし、それを覆い隠すようにサキちゃんがナノハを肯定することで、ナノハがもう後戻りできないように仕向けているのだ。......ホント、この異常なまでの年下女子への執着がなければ、サキちゃんはパーフェクトJKとして世に名を轟かせていたことであろうに。


俺は最後の希望までも失い、この場で危機を脱することを諦めた。...諦めざるを得なかった。

完全に抵抗しなくなった俺に気づいたのか、江口はそそくさと腕を解く。

そしてそのまま、彼はスムーズに別れの言葉を告げ始めた。


「ってことで!みんな、お疲レイニーブルー!また明日、よろシコー!!」


「はーい!特人さんも江口さんも今日はゆっくり休んでくださいね~!...さぁ、行きましょうか、ナノハちゃん?」


「さ、サキ...?その眼、ちょっと怖いんじゃが、本当に一緒に帰るだけじゃよな...?それ以外の事は何もしないよな...?______な、何とか言ってくれ!!」


ナノハは多少強引にサキちゃんに手を引かれ、そのまま二人は夕日の沈む千葉の閑静な街中へと消えていった。

そんな二人の背中をただ漠然と眺めてた俺の肩に、江口の右手が乗せられた。


「じゃあ、アタシ達も行こうかしら?」


俺は半分江口の腕力に引きずられながら、さっきの二人とは逆方向に歩みを進める。

渋々足を動かす俺は、ぶっきらぼうに江口に問いかける。

それはずっと気になっていたことであり、この先の俺の命運を分けると言ってもいい一番重要な事。



「なぁ江口、さっきから『行こう行こう』って、一体どこに行くつもりなんだ?...頼むから、常識的な場所にしてくれよ?」



すると俺の質問を受けた江口はコチラに目を向け、さも当然かのように口を開く。

サングラスの隅から覗いた彼の真紅の瞳が、悪魔的に俺の緊張感を弄ぶ。



「どこって、そんなの当然、『トクちんの家』に決まってるでしょう?」



俺は、足が止まった。

あまりに想定外な単語に、目の前の景色が白黒と点滅した気さえする。

彼が口にしたその場所は、戦慄と言うには生温い程の恐怖を俺に与えた。


なんとこのオカマは、俺ん家に、来るらしい。




続くッ!!!

最後まで読んでくれてありがとうゥ!評価、感想、ビシバシよろしくゥ!!

追われる恋なんてしたことありません。

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