人に見せられる走馬灯を見たい。
前回のあらすじィ!!
ナノハに檻の中から二人で脱出できると豪語した特人!
しかし!案の定脱出には失敗してしまう!
ナノハを置いて一人で逃げようとする特人だったが、ナノハはそんな特人を見逃すはずもなく、二人は醜くお互いの足を引っ張り合うことに!!
そんなこんなをしている間に、最後の砦であった檻も破壊されてしまい...!?
果たして特人とナノハは生きて帰れるのか!?
西暦2324年
和田組アジトにて...
バッギィィィィィィンッッ!!!
「あ。」
「え。」
遂に、その時は来た。
俺達が振り返った先には、粉々に打ち砕かれた檻の破片がキラキラと飛び散っていた。
そして、檻の壁には大きな穴ができている。
その穴の奥から、鼻息を荒くしたブルーが恐ろしい形相でコチラを睨んでいた。
遂に俺達は、最後の防衛ラインであったこの檻の中に、破壊神の侵入を許してしまったのだ。
攻撃力カンスト越えのブルーの猛攻に、これだけの時間耐えてくれたこの檻は本当に凄いと思うが、生憎、俺の体は彼のパンチ一発で風穴が開いてしまう事だろう。
俺は悟った。
自分の人生が、ここで終了する事を。
目の前の穴から侵入したブルーが、ドシン、ドシンと大きな足音を響かせ、こちらに近づいてくる。
彼の特能は『狂犬』。その特能が一度発動してしまえば、彼の攻撃力ステータスはカンストを超えるが、知力ステータスは驚異のマイナス域に突入し、敵味方の判別ができない状態になってしまう。
つまり特能を発動中の彼は、敵も味方も一切なく、ただ目に映った物を破壊するだけの、文字通り狂犬になってしまうのだ。
そんな、歩く大量破壊兵器に一歩、また一歩と迫られる俺の気持ちが、皆さんに計り知れるだろうか?
否、分かるわけがない。
死が歩み寄ってくるこの恐怖を。
俺はナノハを振り解こうとするのを諦め、今度は一転、こちらからナノハに抱き着いた。
...死を前にして怖くなったから?
いいや、違う。
では何故俺はナノハに抱き着いたか?
それは...
「せめて死ぬ時くらい、女子にくっついて死にたぁぁぁい!!!」
「!?」
俺からの突然の抱擁、そしてこの魂の叫び。
ものの数秒で、ナノハの顔はみるみる引き攣っていった。
そして顔を引き攣らせたまま、今度は彼女が俺を引き剥がそうとしだした。
....つまり、立場が10秒前と入れ替わったのだ。
ナノハは必死に俺の顔を押しのける。
「や、やめろ!そんな不純な理由でこのワシにくっつくんじゃない!!」
「うるさい!俺は生涯童貞で死ぬの!!だからせめて死ぬ瞬間くらいは女子と0距離で接していたいの!!こんな中二病野郎相手だけど、この際女子なら何でもイイ!!」
俺は有終の美を飾るべく、意地でもナノハの体から離れなかった。
それでもナノハは俺を引き剥がそうとジタバタ抵抗しやがる。
と、そうやって人生最後の小競り合いを繰り広げていた俺達の上に、黒い影が覆いかぶさった。
遂に、俺達の目の前にブルーが到達したのだ。
俺は自分の鼓動と同じように、抱き着いているナノハの心拍も徐々に早くなっている事に気が付いていた。
俺は怯えながら、目の前のブルーを見上げる。
彼の巨体は3メートル近くあり、これだけ間近に見ると、神々しさすら感じてしまう。
そんな破壊神の巨大な右腕が、何の前触れもなく不意に振り上げられた。
それが俺には、死刑囚の前に上げられたギロチンの刃のようにも見える。
きっとこの拳が振り下ろされたその時が、俺とナノハの終わりなのだろう。
俺はナノハに抱き着き、力いっぱい目を瞑る。
さっきまで俺を引き剥がそうとしていたナノハも、今になって俺の腕にしがみついて来ている。
彼女ももう、終わりを覚悟しているのだろう。
俺は息を止め、最後に脳内で家族への謝罪と感謝を述べることにした。
(お袋...今まで沢山迷惑かけてごめんなさい。...けど、棚の奥にしまったはずのエロ本が机の上に並べられていたあの時の衝撃は、今も忘れていません。親父...実は僕の持っていたエロ本の三分の一は、元々貴方から盗んだ物でした。ごめんなさい。...けど、やっぱり血は争えないと言うか、全部人妻物で、凄い良かったです。.......今までありがとう。そして、ごめんなさい___)
俺はギュッと目を瞑ったまま身を硬直させ、いつでも衝撃に襲われてもいいように覚悟を決めていた。
ナノハの小さくて暖かい体が、天国への入り口に思える程心地いい。
(これで俺の人生で抱き着いたことのある女は2人目か...。1人目は及川だった。あの時もたしか、電車に轢かれる寸前で、死を覚悟してたっけな...。まぁ、女とハグしながら死ねれば、御の字か____)
俺はそんな低俗な幸福感に浸りながら、死を待った。
「............」
________そろそろか?
「.............」
_________まだ来ない。
「.............」
_________え?何?焦らされてんの?
「..........ぅおぉぉいッ!!!いつになったら俺は死___」
と俺が痺れを切らしてブルーに向かって叫んだ直後。
ドッシィィィィンッッ!!
この狭い檻の中で、唐突に轟音が反響した。
まるで何か巨大なものが床に衝突したようなその音の正体は、残念ながら、ブルーの拳が振り下ろされた音ではなかった。
では音の正体は何か?
突然の轟音に思わず目を開けたナノハと俺は、衝撃の光景を目にする。
「な、なんで...」
「ぶ、ブルーが、倒れている....!!」
そう。先程俺達の目の前で拳を振りかざしていたあのブルーが、今は目の前で床に突っ伏しているのだ。
彼の体を見ても、狂犬モードが自然に解除されたようには思えない。
俺は摩訶不思議なこの奇跡を前に、ただ立ち尽くして浅い呼吸を繰り返すことしかできなかった。
しかしその時。
今度は、また別の方向から、俺とナノハを驚愕させる音が聞こえてきた。
「二人共、生きてるゥ~??」
それは聞き覚えのない、男性の声。
その声はブルーを挟んで反対側から、つまり、檻の外から聞えてきた。
ブルーによって壊滅させられた、あの檻の外側から。
俺は急いで眼鏡を掛け直し、奥の方を目を凝らして眺める。
するとそこに、とても目立つ赤い髪の人物を発見した。
俺はその赤髪の人物の顔をよく見ようと、更に目を細める。
しかし、そんな俺の視線を、ナノハの驚愕したような声が遮った。
「あ、あやつは、...まさか!!」
どうやら、ナノハはこの人物を知っているらしい。
ナノハの驚きの声を受けた赤髪の人物は、こちらにスタスタと歩み寄って来た。
ある程度距離が近くなって分かったが、彼の手には未来チックな二丁拳銃が構えられている。
服装は業務中の及川と同じ警察官の制服、更に顔には、やや薄めのサングラスが掛けられていることが分かった。
そして正体不明の彼は檻の穴のそばまで歩くと、動きを止め、のんびりと檻の壁にもたれかかった。
その後彼は一呼吸置くと、サングラス越しに俺の目を見つめ、ねっとりと口を開いた。
「初めまして、特人クン。アタシの名前は、『さんずい』に『エロ』で、江口よ~。ヨロシク!...何を隠そう、アタシもアナタと同じ、特課の人間だからねん!」
彼は真っ赤な前髪をサッと払って、自己紹介を終えた。
(アタシ......?)
続くッ!!!
最後まで読んでくれてありがとうゥ!!評価、感想、ビシバシよろしくゥ!
走馬灯に自信がない。




