想定内に行くことが想定外。
前回のあらすじィ!!
狂犬モードのまま暴走してしまったブルーは、仲間であった特人とナノハを潰そうと檻に攻撃を始めてしまう!
檻の中に居る二人はこの絶体絶命の状況に絶望していたが、ふと、特人が何かを閃く。
ナノハは特人の言う通りに動いたが、それはただレオンの物真似をするだけという、とんでもない茶番であった!
怒るナノハだったが、特人はそれでも余裕を漂わせていて...?
西暦2324年
和田組アジト、檻の中にて...
俺とナノハは今、気絶している組長と共に檻の中に閉じ込められている。
...もっとも、この檻の外には、破壊の権化とも呼べる狂犬モードのブルーが居るため、閉じ込められている方が安全ではあるのだが。しかし、そんな俺達の最後の砦も、ブルーの猛攻により1分と持ちそうにない。
つまり、俺とナノハは檻の外にも出れないし、外にはブルーが居るしで、絶体絶命としか形容できない状況に身を置かれているのだ。
それでも、ここまで危機的状況でも、俺に焦りはない。
なぜかって?
そう。俺にはこの状況から助かる”術”が、あるからだ。
俺は、先程の茶番により顔を真っ赤にして怒っているナノハの方に向き直る。
そして至って冷静に、そしてゆっくりと、口を開いた。
「なぁナノハ、お前のさっきのいちゃもんに”answer”を添えてやるよ。何故俺がマチルダ役で、お前がレオン役だったか。そりゃあ簡単な問題だ。逃げることができる奴が、マチルダ役を演じるに決まってる。」
ナノハは追い詰められたような、それでいて俺の言っている言葉の意味を理解できていないような、そんな顔をした。
「なに...?まるで、お主が逃げようと思えば逃げることができるみたいな物言いじゃな?」
彼女の疑問は正しい。
俺たちが今居るのは、未来のこの世界で最高硬度を誇る檻の中だ。
普通の人間なら、出たくとも出られない。
...普通の人間ならな。
俺はニヤリと微笑むと、ナノハの黒い瞳に語り掛ける。
「お前は何か忘れちゃいないか?...例えば、俺の『特能』の事とかな!!」
ここでナノハも何かに気づいたのか、俺の目を輝く目で見返してきた。
「そ、そうか!!お主の特能なら、ワシと二人でここではないどこかにワープできるということか!!」
俺は目を細めて静かに笑みを溢すと、小さな囁き声で「ズァッツ ルァイト」と付け加えた。
きっと今の俺は、さながらエディ・レッドメインのような、爽やかなイケメンに見えている事だろう。
しかし、そんな俺の贅沢なイケメンシーンをナノハは無視し、急かすように俺にしがみついてくる。
「そういう事なら早く特能を使うんじゃ!ほら!こんな小便まみれの男にくっついてやってんだから、早くワープ!!」
俺は自分に抱き着いてくるこの女子中学生を鬱陶しく感じたが、それと同時にこんな経験なかなか無いと思い、堪能してやった。
しかし、今こうしている間にも、ブルーは檻にひたすら攻撃を浴びせ続けている。
所々檻の壁が彼の攻撃に耐えられなくなり、ポロポロと砕け落ち始めている。
流石に女子中学生の感触を味わうのもここまでだと思った俺は、仕方がなく『特能』を発動する準備へと入った。
「よし、じゃーしっかり掴まっとけよナノハ!とりあえず、特課に居るであろう及川を対象にして、特能を発動する!」
「うむ!正直、この現状を及川に報告しなければいけないと思うと胃が痛いが、仕方ない!それでは頼んだぞ特人よ!」
ナノハの俺の腰を掴む手が、より一層力強くなったのを感じた。
俺は目を瞑り、頭の中に及川に関する全てを想像する。
彼女の居るであろう俺達の仕事場、特課のオフィス。そして彼女がいつも座っている安っぽいデスク。そして彼女の、肩上まで切りそろえられた銀に艶めくあの後ろ髪。
それらを想起し、俺は声に出して念ずる。
「いくぞ!気づいたらそこに!!」
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「......」
「......」
俺はふと、違和感を覚えた。
今まで自分の特能を使ってきた時は、毎回足の裏に何かしらの変化を感じ取っていた。
それは勿論、ワープすることによって足場の素材や踏み心地が変わるから、感じていた変化なのだが。
...しかし、今回はそれがなかった。
俺は猛烈に嫌な予感を抱えながら、ゆっくりと目を開く。
......するとそこには、
「嘘だろ......」
つい10秒前と何ら変わり映えのない景色が映し出されていた。
透明の檻越しに見える、荒れ果てた内装。そしてその透明の檻を叩き壊そうとしているブルー。
つまり俺達は、ワープができていなかった。
俺の今の声に反応したのか、いつの間にか俺にしがみついていたナノハも目を開いていた。
そして俺と同様、想定外のこの事態を目にしてしまい、口をわなわなと震わせる。
「...ぅ、うおぉぉぉい!!!ちょ、え!?どういうことじゃ特人!!お主、及川を対象にして特能を使ったんじゃなかったのか!?な、何故ワシらは、一ミリも動かずにこの死地に留まっているんじゃ!!」
彼女は現状を理解できないと言った顔で、俺の顔を見上げる。
しかし、現状を理解できない顔をしているのは、俺も同じだ。
俺は自分の顔から血の気が引いている事を直感し、ナノハの目を見れぬまま口を開ける。
「ど、どうしてだ....。今まではこれで発動してたのに...!」
俺は、何とか脳みそを強引に稼働させ、何故今このような事態に陥っているのかを考えた。
このFラン大学が誇る奇跡の頭脳を駆使し、俺は考えたのだ。
「...そうか!!」
そして俺は、閃いた。
その間わずか0.7秒。
俺はその0.7秒の間に、ある一つの仮説を立ててみせた。
となれば後はその仮説を検証し、それが真実なのか探るだけだ。
という事で俺は、ゆっくりと手を伸ばした。
手を伸ばした先に居るのは、未だ俺の腰にしがみついて涙目になっているナノハだ。
...そう。俺の仮説とは、『一人じゃなかったから成功しなかった説』だ。
と、ここでナノハは俺の心の内を察したのか、思い切り俺の手をはねのけた。
そして俺を罵倒するような眼で問いかける。
「まさかとは思うがお主、ワシを切り離せば特能が発動して、自分一人は生き伸びられるとか思ってるんじゃないじゃろうな!?」
「......」
俺はズレかけた眼鏡を、人差し指で掛け直した。
そして至って冷静に、彼女の問いかけに答えるために口を開く。
「そ、ソンナワケ、ナイジャ~ン?」
一瞬、この空間を嫌な静寂が包んだ。
しかし2秒後、この静寂はナノハの怒号によって打ち破られる。
「...こんのゴミ大学生がァァ!!絶対にワシは離さんからな!!たとえこのまま死ぬにしても、お主だけ生き永らえることは絶対に許さんッ!!」
俺の腰に巻き付いていたナノハは、より一層強い力で俺の腹部を圧迫し、俺を道連れにしようとしてきやがる。
しかし、俺もこんな所でのうのうと死ぬわけにはいかない。
俺は何とかこの女子中学生を引き剥がそうと四苦八苦する。
「ちょ!離せやクソ中二病!!お前、たしか三話前のエピソードで、『お主が居たおかげで、初仕事がこんなにも楽しいものになった(裏声)』とか赤面しながら言ってただろ!!俺のこと好きなら大人しくこの手を離しやがれ!!」
「ハァ!?誰がこんなアンモニア臭い大学生好きになるんじゃ!!ってか、それ出すんならオメェも三話前、『....ずっと横に居てくれて...あ、ありがとうな///』とか言ってたじゃろ!フツーにあの時赤面してる特人キモ過ぎて、胃液が喉まで来てたからな!!」
「だっる!この中二病メスガキ、チョーダルいんですけど!!あーもうお前知らね!ワンチャンまだ助けてやろうかなとか思ってたけど本気で助けないっすわ!!」
「最初から助ける気なんてない癖によくそんなこと言えるのう!けど、ワシは絶対にこの手を離さないからな!!ワシがここで死ぬんならお主もここで死ね!!」
俺とナノハはこの絶体絶命の状況で、お互いの足を引っ張り合って時間を浪費した。
そして当然、時間が経てば俺達の最後の砦も徐々に壊されていく訳で...
バッギィィィィィィンッッ!!!
「あ。」
「え。」
遂に、その時は来た。
俺達が振り返った先には、粉々に打ち砕かれた檻の破片がキラキラと飛び散っていた。
そして、檻の壁には大きな穴ができている。
その穴の奥から、鼻息を荒くしたブルーが恐ろしい形相でコチラを睨んでいた。
遂に俺達は、最後の防衛ラインであったこの檻の中に、破壊神の侵入を許してしまったのだ。
続くッ!
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