男には必殺技やら奥義やらが必要な時がある。
前回のあらすじィ!
遂に始動した、ヤクザ壊滅作戦!!
ブルーは狂犬モードになり大暴れ、ナノハはアイスウォールでブルーの援護!
後は特人が組長を檻の中に連れ去るだけ!!
...だけなのだが......
西暦2324年
和田組アジトにて...
俺は右手を振りかざすと、組長に向かってキメゼリフを言い放つ。
「さぁ、お休みの時間だ...。暫く眠っておくんだな、組長...!」
「!?...お、お前、どうやって檻から出た...!?」
俺は背後から一閃、よく漫画とかで見る首筋にトンッってやつ(手刀)を、組長にお見舞いする!
「トンッ」
見事、組長の年老いた首筋に俺の「トンッ」は直撃した。
よし、後はこの気絶したジジイと一緒に檻の中にもどるだけ____
「いって。...え?何?」
「え?...いや、気絶...」
「.......」
「.......」
(___気絶しないんですけど___)
俺の目の前の組長は、気絶をしなかった!!
それどころか、多少痛いマッサージ器を喰らったようなリアクションで首筋を摩っているではないか!!
「ば、馬鹿な!!この俺の、首筋にトンッが効かない...!?い、いや、そんなはずは...!」
俺はきっと当てる場所を間違えたんだと思い、繰り返し組長のしわだらけの首筋にトンッを繰り返す。
「トンッ!トンッ!トンッ!トンッ!」
しかし...
「ちょ、痛い痛い。え、何でずっと俺の首筋ばっか集中攻撃してんの?」
「い、いや、だってほら、漫画とかでは大抵、相手の首筋にトンッて手刀したら気絶してるだろ!」
俺は、気絶するどころか、未だハキハキと喋ってくる目の前のハゲジジイに嫌気が差しながら、コイツが気絶しない理由を考えた。
その時だった。
この悲鳴と雄叫びで喧騒を極める部屋に、俺の名前を呼ぶくぐもった声が響いた。
「おい特人!何をしておる!そんな手刀で人が気絶するわけないじゃろ!アイーンの練習してるのかと思ったわ!!」
そのくぐもった声の正体は、檻の壁越しに語り掛けてきたナノハの声だった。
「て、テメェ!人の手刀をアイーンとか言うんじゃねぇ!もっとこう...『ワシじゃなきゃ見逃しちゃうね。』くらい言えよな!!」
「はぁ!?あんな鈍間な手刀、金曜ロードショーの方がまだ見逃すわ!」
俺はナノハの悪意ある例えに怒りを露わにしたが、どうやら彼女が俺に声をかけてきた理由は、手刀を小馬鹿にする為ではなかったらしい。
ナノハは俺の反論を軽く一蹴すると、少し焦ったように言葉を続けた。
「って、そんな事より!ブルーの攻撃範囲がお主達の方に近づいておる!早く組長を連れて檻の中にワープするんじゃ!!」
俺はハッとしてブルーの方を見る。
「シュレーゲルアオガエルゥッッ!!!!!」
ブルーは相変わらず、理性なんか感じさせない暴れっぷりで、目の前にある物が物だろうと人だろうと躊躇なく吹き飛ばしていた。やっぱり動物の標準和名を叫びながら。
そしてその狂犬のような男が、徐々にこちらへと近づいているのだ。
(あーーークソっ!こうなったら仕方がない!!あまり使いたくはなかったが、奥の手だ!)
俺は目の前の禿げ頭を見定める。
組長も組長で、背後には俺、前方にはブルーでなかなか身動きを取れずに固まっていた。
俺は最終奥義をお見舞いするべく、冷や汗で光るツルピカ頭に照準を合わせる。
右腕を振りかざし、上半身は後ろに大きく捻る。
拳は岩のように固く握りしめ、右腕に全ての神経を集中させる。
後は一呼吸置き、精神を安定させるだけ。
俺は息を吐き終えると、目を見開き、目の前の禿げ頭に勢いよく叫んだ。
「奥義!!オールドマン・デストロイ・・パンチッ!!!」
「え?」
ガチコーーン!!!
俺は組長の後頭部に、ありったけの力で拳を振り下ろした。
そう。現役男子大学生が持てる全ての力で、老人にパンチを繰り出したのだ。
これは、非人道的かつ倫理的にかなり問題のある奥義なので、あまり人前では使いたくなかった。(※良い子は高齢者にオールドマン・デストロイ・パンチを繰り出さないでね!)
そして俺の奥義、『オールドマン・デストロイ・パンチ』を喰らった組長は、当然のように意識を失い、その場に倒れ込む。
俺はその組長を急いで抱きかかえる。
本当はこんなタンスの奥みたいな匂いのするジジイを抱えたくはないが、今は刻一刻を争っている。我儘は言ってられないのだ。
ブルーが暴れているせいで、壁の破片や、殴り飛ばされた組員などがコチラに飛んできていた。
まるで、小さな竜巻がすぐそこにあるのかと思うくらいの迫力だ。
俺は、およそ5メートル先にまで及んでいるブルーの暴走を見ながら、心の中で(気づいたらそこに!)と唱える。
もちろんワープ先は、檻の中に留まっているナノハだ。
(頼む、間に合ってくれ!!)
と、目を瞑って願った次の瞬間。
俺の鼻に、まるでお花畑のような香りが届いた。
...念のため言っておくが、これは俺が運悪く死んでしまったからではない。
俺の特能が上手く発動し、無事ナノハの背後にワープできたからだ。
そう。もはや説明は必要は無いだろうが、お花畑の香りの正体は、ナノハの髪の毛の香りだった。
彼女の、少し癖のある黒髪が、俺の目線のやや下に垂れ下がっている。
「うぅん、ナノハちゃぁん。良いシャンプー使ってるねェ?」
ナノハは突如自分の背後に現れた俺に相当驚いたのか、それとも俺の台詞に相当引いたのか、顔を真っ青にして振り返った。
「うわぁ!!って、お、おい!いきなりキモイことを言うんではない!!セクハラの中でもかなり上位の部類じゃぞ!!早くワシの背後から離れるんじゃあ!!」
ナノハは息を荒げながら、必死に背後の俺を振り解こうとジタバタしている。
「おいおいナノハちゃぁん?あのね、サキちゃんもね、及川もね、一回は俺に髪の毛の匂い嗅がれてんだよ?俺の特能は絶対背後にワープしちゃうんだから、こんなんで一々セクハラとか言われても困るんだよねぇ~。これだからZ世代は...」
「21歳のお前もバリバリZ世代だからな?」
俺はやれやれと肩をすくめ、仕方がなくナノハの背後から少しだけ距離を取ってやった。
何やらナノハの方から軽蔑と非難に満ちた視線が向けられている気がするが、そんなものはどうでもいい。
俺は足元を確認する。
そこにはしっかりと、さっきオールドマン・デストロイ・パンチで気絶させた組長が横たわっていた。
つまり、俺の、『自分に触れている物は一緒にワープ可能』という仮説は正しかったことになり、作戦は最早8割方完遂したと言っても差し支えないということだ。
俺は足元に転がる組長を、何とか檻の奥の方に引っ張ってやる。
ナノハはブルーの事をアイスウォールで守りながら、横目で組長をジィっと見つめていた。
「な、なぁ特人よ。組長を檻の中に連れてこれたのは良かったが、...それさ、死んでないのか...?」
まぁ確かに、彼女の懸念も理解はできる。
常識的に考えて、老人が顔面蒼白で床に突っ伏していたら、死んでるか死にかけているかの二択だ。
「あぁ、ダイジョーブダイジョーブ。ちょっと俺の『オールドマン・デストロイ・パンチ』って奥義で気絶させてるだけだから。」
「いや絶対ダイジョーブではないじゃろ。なんだオールドマン・デストロイ・パンチって。なんだ高齢者破壊拳って。そこまで人道を踏み外した名称の奥義、初めて聞いたわ。」
ナノハの俺に対する蔑みの視線が、一際冷たくなったような気がしたが、まぁそれはいいだろう。
本当に組長は気絶しただけだし、呼吸もちゃんとしている。
俺は組長を檻の奥の方の壁にもたれかからせ、ナノハの方へと戻る。
ナノハは相変わらず檻の中からアイスウォールを展開し、ブルーを麻酔銃から守っていた。
「それにしても、大分組員も減ってきたな。こりゃもうそろそろ決着か~?」
檻の外ではブルーが相変わらず盛大に暴れまわっており、目に入った物全てに破壊の限りを尽くしている。ブルーに吹っ飛ばされた組員達は、床のそこかしこに這いつくばっており、もはや戦うことなどできそうにない。
組長が俺に攫われた今、まだ生き残っていた組員達も、1人、また1人と逃走をしだしている。
俺達の勝利は、もはや時間の問題だ。
続く!!
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