回想長すぎて本編忘れがち。
前回のあらすじィ!!
やっと作戦会議の回想が終わり、時間は現在に戻ってきたが...
この小説の主人公、特人さんは何やらご不満なようで...?
西暦2324年
作戦会議(前話)から三十分後。
『和田組』オフィス内にて...
今、俺とナノハは透明の檻のような立方体に閉じ込められ、まるで動物園でのベビーパンダの如く大勢の人間に囲まれている。
ただ、動物園と決定的に違うのは、周りを囲っている人間が仲睦まじい家族連れなどではなく、戦々恐々としたヤクザの皆さんだという事だ。
およそ40人程と言ったところだろうか。俺達を囲むスーツ姿のヤーさん達は、恐らく遥か未来でも銃刀法違反であろう拳銃を所持している。
そして俺達を囲むヤクザ達の中に、一際目立つ人物が二人。
一人は、如何にも悪そうな顔をしたハゲのサングラスをかけたジジイ、正体は『和田組』組長。
そしてもう一人は、この和田組の秘密兵器でもあり、実は裏で俺達と手を組んでいるスパイ、ブルーだ。
組長のジジイとその右腕であるブルーは、下っ端ヤクザ達を整列させたまま、檻の中の俺達を自由に観察している。相手が美女ならまだしも、ジジイにジロジロと観察されるのは心底気分が悪い。
しかし何故、俺とナノハがこのような状態に置かれているのか?
そう。前話までを読んだ方なら分かるであろう、作戦だ。
作戦では、俺とナノハがブルーに捕まった体で、組長の元まで連行されるというのが最初の段階であった。
つまり、俺達は順調に作戦を推し進めることができているという訳だ。
しかし俺は今、腕を組みながら足を小刻みに無機質な床に叩きつけて、ソワソワとしている。
そんな俺を見て心境を察したのか、後ろの方に座っていたナノハが声をかけてきた。
「おい特人よ。お主、本番を目の前にして緊張しているのか?まぁ焦る気持ちも分かるが、今は心を落ち着けるべきじゃぞ。」
しかし、俺のソワソワは止まらない。
俺に対する彼女のアドバイスは、的外れもいい所だったからだ。
俺はナノハに小さく愚痴を溢す。
「別に俺は緊張してるわけじゃねぇんだよ...!」
今度はそんな俺の反応を見たナノハが、不思議そうな声色で俺に尋ねてくる。
「では一体、何がそんなに落ち着かないんじゃ?......まさかお主、トイレかぁ?...はぁ~。だからここに乗り込む前、最後のトイレ確認したのに~。お主が『俺は小学生の頃、一時間目から我慢して、五時間目まで耐えたことがあるから余裕。』とか言って強がったせいじゃぞ!せいぜい作戦が終わるまで我慢するんじゃな!」
ナノハは俺が黙っているのを良い事に、勝手に俺のソワソワの原因を、尿意によるものだと決めつけやがった。
流石のこの俺でも、そのノンデリカシーな発言にはピキッときてしまう。
「おいクソ中二病...!別に俺は漏れそうでソワソワしてるわけじゃねぇし、仮に漏れそうだったとしても、俺の膀胱は黒部ダムより貯水できるから大丈夫なんだよ...!!...そんなんじゃなくて、俺がソワソワしてる真の理由はなァ..........」
そして俺は身に任せて、言うつもりではなかったソワソワの原因まで思わず叫んでしまった。
「回想が長すぎるからじゃボケェェエ!!!!」
ナノハは唐突かつ予想外の俺の大声に驚いたのか、ビクッと肩を動かした。
しかし、一度怒りのスイッチが入ったらもう止まらない。
俺は腹の中に溜まっていた全ての不満を吐露する。
「だってよォ!俺達が今捕まってるっていう状況説明、二回目じゃん!!何話か前に一通りしたじゃんこの下り!!回想長すぎて皆忘れてるからもう一回改めてしてるじゃん!!」
「ま、まぁ落ち着くんじゃ!どうせこの小説を続けて読んでる人間なんて、極度の暇人か変人しか居らんのじゃから、話のテンポが多少悪いくらいどうでも...」
と、ナノハが俺を落ち着かせようと、フォロー(?)を入れてきたが、そんなものは焼け石に小便だ。
「シャラップクソガキ!そんなネガティブな発言で、うちのイリオモテヤマネコよりも数が少ない読者を減らすんじゃない!!...というか!お前も作戦会議の回想に何話使ったのか数えてみろよ!」
「えーと、ep.23の冒頭からだから、....丸々四話かの?」
ナノハは右手の指を折りながら、少し不安な眼差しで俺の問いかけに答えた。
答えを聞いた俺は深い溜息を吐き、一呼吸おいて再びナノハに畳みかけるように不満を漏らす。
「四話だぞ!四話!キン〇ダムだったらもう河了貂でてきてるからなオイ!」
「うぅむ...。まぁ確かに長い気もするな...。」
「だろ!?そもそも回想に入るときなんか、『時間は少しだけ遡り...』って感じで凄いあっさりした入りだったのに、それで結局___」
と、俺はやっと事の重大さに気づき始めてきたメスガキに、更なる問題点を教えてやろうとした。
その時だった。
「コンコンッ!」
俺の真横の壁から聞えた、重さを感じない少し籠もった畳音が、俺の言葉を遮った。
俺とナノハはその音に反応し、反射的に音のした方を振り返る。
そこには、透明の壁越しにこちらを眺めるグラサンジジイが居た。
そのグラサンジジイ、...つまり組長は、俺とナノハを交互に見ると、二ィっと笑って口を開いた。
「お前ら、この状況で呑気におしゃべりか~?まぁ良いんだけどよ、この後も、いっぱいお話してもらうからなぁ~?ガッハッハ!!」
俺はこの悪趣味で下品な笑い声を聞き、最早さっきまでのメタメタしい話は忘れかけていた。
俺とナノハは固唾を飲み、透明の壁越しに質問を投げかけた。
「この後って、何だよ...?」
「んー?...そりゃあもちろん、拷問の事に決まってんだろ~?」
『拷問』。
その単語に、俺とナノハは思わず背筋を伸ばす。
いや、大丈夫だ。俺は今、作戦としてここに来ている。
だから拷問される前にどうにかなるはずだ。
と、自分に言い聞かせているが、恐怖という色は一度心に付くと中々落ちない物だ。
そして、そんな恐怖色を心に抱えた人間はどうやら俺一人ではなかったらしい。
さっきまで後ろに座っていたナノハが俺に近づき、小声で俺に耳打ちをする。
「な、なぁ特人。やっぱりワシら、今この状況って冷静に考えると、相当にヤバいんじゃないか...?」
「や、ヤバいって、な、何が?別に作戦は順調ですけど!?」
俺はナノハに煽られた恐怖心を誤魔化すように、組長たちに聞こえない程度に大きな声を出す。
しかし、彼女はそんな俺の真意を見抜く様に不安要素を羅列しだす。
「作戦が順調だからこそマズイんじゃ...!ブルーが提案した作戦はワシらを餌にする作戦...。つまりワシらは今、ワニの群れの中に放り出された生肉状態じゃ!」
「つまり俺らは、男子ラグビー部の部室に放り出されたエロ本状態ってことか!!」
「......話を戻すぞ。つまりワシらは、ワニ達がその気にさえなればいつでも簡単に食べられてしまう無抵抗な肉という事じゃ!」
「つまり俺らは、男子ラグビー部員がその気になればいつでも使用することができる無抵抗なエロ本ということか!!」
「オイいい加減その例えやめろ。」
実際、俺達の命運はブルーに握られていると言っても過言ではない。
ブルーが俺に暴力団潰しの話を持ち掛けてきた時は彼が追い詰められている時だったし、口から出まかせを言った可能性だって十分ある。俺は彼の真っすぐな目と報酬の人妻系エロ本を信じてここまで来たが、今になってその信用が揺らぎ始めている。
(クソ!こんな事なら報酬のエロ本を先払いにしておくべきだった!!)などと内心叫びながら、俺は冷や汗を拭う。
今はただ、ブルーが約束通り作戦を始めてくれることを願う他ない。
ブルーと約束した攻撃作戦開始の合図は、ブルーが動物の名前を叫んで特能を発動した時。
俺はブルーが動物の名前を叫ぶその時を待った。
焦りと緊張で速くなる鼓動を感じながらも、彼が約束を果たしてくれるその時を待っていた。
ナノハも俺の背中で、願うように目を瞑っている。
(俺は、仇を取ると言っていたブルーの目を信じる!!)
そう心の中で覚悟を決めた、その時。
遂にその言葉は聞こえた。
「よし、じゃあコイツ等は檻から出して奥の部屋に連れてけ。」
それはブルーの攻撃開始の合図。
......ではなかった。
それは無慈悲に下された組長の命令。
内容は、俺達を別室に移動させろというモノであった。
そして俺は理解してしまった。...いや、せざるを得なかった。
きっと俺達は今から、別室で恐ろしい拷問の数々を受けることになるのだと。
俺は、立ち尽くした。
それと同時に、腹の底から沸き上がる後悔。
ブルーの事なんか信用した俺がバカだった。
きっと親の仇も嘘だし、この作戦も全部、俺とナノハを簡単に和田組に連れてくる為に作った偽物だったんだ。
背後のナノハも目を見開き、その大きな瞳がウルウルと動いていた。
あぁ、俺はここで死ぬんだ。こんな何も知らない、途方もない未来で。
4Dのエロ本なんてくだらない物に釣られて、恐ろしいヤクザに騙され、苦しんで死んでいくんだ。
さっきの組長の指示を受けた下っ端のヤクザ達は、早速俺達を移動させるために、こちらに歩みを進めている。残された時間も多くないと言う事か。
俺は眼鏡を取り、涙を堪えるために目頭を押さえた。
(俺は親不孝者だ。大学に行かせてもらったのにロクに単位も取らないで、パチンコ三昧。挙句の果てには三百年先の未来で誰にも知られることなく死んでいく。...ごめん、お袋、親父____)
「なぁボス。オレの親父は、どういう人デシタ?」
......そんな俺の耳に、聞き覚えのある声が届いた。
その声が俺には、目の前に垂らされた一本の蜘蛛の糸のようにも思えた。
そう、その声は、ブルーの声だった。
続く!!
最後まで読んでくれてありがとゥ!!
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