女の子と埼京線は思ったように動かない。
前回のあらすじィ!!
怪しまれはしたものの、何とか嘘を貫き、約束の場所まで来た特人とナノハ!
そこでしょうもない口論を始める二人の元に、遂に黒人ドレッド指名手配が合流!
彼が話す、暴力団潰しの作戦とは...?
西暦2324年
とあるビルの5階
作戦会議を始めてから30分後...
「がぁー捕まっちまったー(棒)」
「なんてことじゃー(棒)」
俺とナノハは、半透明の鉄のような質感の檻に閉じ込められていた。
これも未来のテクノロジーで生み出された檻なのだろう。
そんな俺達が居る部屋は、暴力団の本拠点となっている5階建てビルの最上階。
この部屋は全体的にギラギラとしており、いかにも悪の親玉が好きそうな、虎柄の絨毯や、未来にも存在していることが驚きの盆栽などがある。
正面にある大理石の大きな机と、その背後に見えるガラス張りの壁が印象的だ。
そんな広々とした部屋の中には、檻に入った俺とナノハ、そしてソレを囲むように配置された数十人もの暴力団員達が居た。
(事前にブルーに聞いていたが、確かにそこそこの規模の暴力団だな...)
俺はブルーから聞いていた、この暴力団の情報を思い出した。
そんな肝心のブルーは、今は檻の外から俺達を眺めているのだが。
そして、ブルーの横で俺達をニヤニヤと笑みを浮かべながら眺める、サングラスをかけた年寄りが1人。
そう。このグラサンジジイこそが、ここの組長だ。
「こんなちっこいネズミ共をよく捕まえたな~、ブルー。」
「イエ、たまたま我らのビルの前でコソコソしていたのを見つけたのデ...。でも、まさかコイツ等も政府の犬だとは驚きましタ。」
「そうだな~!こんなガキ共が警察だなんて、世も末だな~!!まぁ俺達からしてみれば、そっちの方がありがたいんだがな!がっはっはっは!!」
一旦、状況を整理してみよう。
俺とナノハは暴力団に捕まり、協力関係にあったはずのブルーは、ボスと自然な主従関係で会話をしている。
はたから見れば、俺とナノハがブルーに裏切られ、絶体絶命の状況に置かれていると見えるだろう。
.....だが安心してほしい。
これも、作戦だ。
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遡ること30分前.......
路地裏にて.....
「よし、では早速、作戦の話に戻るゾ。」
「あぁ、よろしく頼む。」
ブルーの名前に関するひと悶着を終え、俺たち三人は薄暗い路地裏で作戦会議をしていた。
この、ほの暗さと閉鎖感、そしてそこに反響する水の滴る音がいい感じに合わさり、秘密の会合感を醸し出している。
ブルーは再び真剣な顔に戻ると、俺とナノハに暴力団の情報を共有する。
「今からオレ達が向かう暴力団、...つまり俺の所属している暴力団は、東京で五本指に入る位の規模を誇る組織。名前は『和田組』。暴力団と言ってきたが、早いとこありふれたヤクザダ。」
「ゴクリ...」
俺はブルーの話を聞き、思わず固唾をのんでしまう。
俺は今から本当に、反社を敵に回すのか....。
今までの人生、暴力団どころか、深夜のコンビニにたむろしている高校生でさえなるべく避けてきていた俺が、ヤクザと....。
そんな俺の緊張を見透かしたように、ナノハは俺を見てニチャリと笑った。
「まさかお主....ヤクザという響きにビビったのかァ~?プププ」
「は、はぁ~?別に、ビビってませんけど~?お前こそ、そんな余裕こいてられんのかよ!」
俺はナノハを睨みつけながら指摘する。
正直、俺は少し力を抜いただけであられもなく失禁できるほどビビっているが、それはこのメスガキも同じはずだ。
しかし、ナノハは俺の期待とは裏腹に、平静を保ったような顔を続けた。
「ワシも以前までの、ただのか弱い乙女だったならば、確かにビビってたじゃろう!!」
「お前、自称九尾の生まれ変わりだろ。自分でか弱いって言っちゃってんじゃん。」
「生まれ変わりだけど!今は普通の女子中学生じゃろ!!....ゴホン!話を戻すぞ!」
「ハイハイ。」
ナノハは自分のまな板を自信ありげにポコっと叩くと、大きく口を開いた。
「未来に来たワシは、守備力特化!!この体ならば銃弾も効かないだろうし、どんな窮地に陥ろうと、特人は死んでもワシは助かるじゃろうて!!ふっふっふー!!」
なるほど。
コイツの落ち着きは、この自分の防御力への絶対的な自信からくるものだったのか。
ってかコイツ今、俺は死んでも自分は生き残るとか言ってやがったな。これから身の危険を感じたら、積極的にコイツを盾にしよう。
ここで、俺たちの会話を聞いていたブルーが、ナノハに忠告をするように話しだした。
「えーっと、ナノハと言ったカ。お前は防御力があれば命は助かると思っているかもしれないが、ウチの組はそんな甘くないゾ。ドラム缶に入れられ、そこにコンクリートを流し込まれたらどうスル?鎖でつながれ、餓死するまで放置されタラ?自分の力に自信があるのは良いが、過信しすぎないようにナ。」
ブルーの言っている事は正論以外の何物でもなく、故に冷徹なまでに俺達の恐怖心を煽った。
さっきまで余裕をぶっこいていたナノハも、見る見るうちに笑顔がぎこちなくなっていく。
「ゴクリ.........ちょ、ちょっとお手洗いにでも行ってくるかの~....」
「おい待てや中二病ガール。今更逃げようとしたって遅いぜ~?今から二人で仲良く、命がけの社会見学の時間だからなァ~!」
「反社会的勢力に社会見学しに行く人間が何処におるんじゃ~!!放せっ!ワシは帰りたいぃぃ!!」
今更顔を青くしてジタバタ抵抗するナノハを抑えつけ、俺はブルーに作戦会議の続行を促す。
ブルーも一呼吸置いた後、再び作戦の概要を伝え始めた。
「マズ、今回一番重要なのが、いかに騒動を起こさないでボスの居所に行くという事ダ。」
「正面突破じゃダメってことか?」
なんとかナノハを抑えつけ、俺はブルーに問いかける。
ブルーは指で空中をなぞり、説明を続けた。
「そんな目立つ真似したら、ボスの所に付くまでに感づかれて、逃げられてしまうダロウ?」
「んまぁ~そうか。」
ブルーの説明は続く。
「ソレデ、どうやってオレとお前ら二人がボスの元まで辿り着くかだが、ここはベタに、お前らを捕虜としてボスの部屋まで連行するという事にスル。」
「ベタじゃな。」
「みたらし団子くらいベッタベタ。」
俺とナノハの冷えた視線を受け、ブルーがめんどくさそうな顔をする。
「ごちゃごちゃいうなよナ。コレが一番確実な方法なんだヨ。オレはボスの右腕としての信用があるし、捕虜という体ならオレたち三人が自然にボスの部屋に行けル。」
「しゃーねぇなー。別に俺は、レオン並みのアクションで華麗にヤクザ組織を蹂躙しても良かったんだけどなぁー。まぁ乗ってやるかー。」
「ア?そんな自信あんなら今からレオンやって来いヨ。勿論アレダロ?最後はしっかりリングトリックで、ボス諸共消し炭になってくれんダロ?」
「......冗談ですや~ん!!」
ブルーが呆れたように「ハイハイ。」と流すと、再び説明を続けた。
「そして、オレたち三人がボスの元に着いた後、本格的に攻撃を始めル。ここからがお前らも関わってくる作戦ダ。」
「おぉ、遂にか!それでそれで、どうやってボスを追い詰めるんだ!?」
いよいよ、ちゃんとした作戦らしい話が始まりそうだ。
俺は、緊張と期待を混ぜてペースト状にしたような面持ちで、ブルーの語る策略に聞き入る準備に入った。
ブルーは一呼吸置くと、眉を下げ、真剣な眼差しで口を開いた。
「オレが暴れて、全部ぶっ飛ばス。」
俺とナノハは、瞬きすることなく、ブルーのキリっとした横顔を見つめた。
「よし、ナノハ。帰ろうか。」
「そうじゃな。」
続くッ!!!
評価感想ビシバシよろしくぅ。
足の指の爪の隙間のカスみたいなやつ、マジで臭い。