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6 新宿区西口ダンジョン冒険者局2




「オークションか、そういうのは面倒なんでやめときます。今日自分のカードに入金できる限度額ってどれくらいですかね」


「わ、私の裁量があれば一億円程度はすぐに可能かと」


「ああじゃあこれぐらいか」


 また雄太が無に手を突っ込むと、ひょいと違う魔石を出してきた。先ほどの魔石はいつの間にか魔法のように消えており、局員の二人は狐につままれたような面持ちになった。しばらく放心していた高峰だったが、佐々木係員につつかれて慌てて簡易鑑定する。


「……詳しいことは精査しないといけませんが、私の見立てだと税金分を引いておよそ九千八百万円ほどになると思います。オークションにかければもっと上がると思いますが」


「十分ですよ、それでお願いします。買い物もしたいので今日はこれくらいで帰ろうと思います。待合席で待ってればいいですよね」


「は、はい……あっあの! 最初の鉱石は無理でも先ほどの魔石を当局から出品しては頂けませんか⁉ ぜひお願いします!」


「さ、佐々木君!」


「はは、仕事熱心ですね。残念ながらいくら匿名のオーディションでも目立つのは避けられませんからね。自分はもう隠居の身なのでぼちぼちやりたいんです」


「そうですか、ではカードのナンバーでお呼びするのでお待ち下さい……」


「どうも。さ、戻るぞ」


「うん! お姉ちゃん! バイバイ!」


「ば、バイバイ」


 呆然としながら親子を見送った後、高峰は佐々木にぽつりと呟いた。


「見た目は鍛えてあるのに全く強者の気配を感じさせなかった。それにノータイムで無造作に空間収納を使えるのは異常だし全くスキル発動の感知ができなかった」


「異世界から帰って来たって本当なんでしょうか?」


「ダンジョンが誕生してから今まで隠れていた宇宙人からも接触があったように、もうなにが起きても驚くまいと思ってたんだけどね。異世界云々はともかく彼は間違いなく僕が見て来た冒険者の中で世界トップクラスだ、信じられない。今はとにかく精算手続きをお願いするよ、今後とも決して不興を買ってはいけないよ」


「は、はい! 今すぐに!」


 佐々木が慌てて局長室から出ていくと、高峰は今後のことに思いを馳せながら胃薬を水で流し込んだ。


 冒険者局での用事が済んでから新宿西口を歩いていた雄太とクロエは、大金が入金された冒険者カードで当面の衣服を大量に買い、人目に付かない所で収納した。都心では雄太が知っているファミリー向けアパレルショップがユニシロしかなかったのでそこで買ったが、クロエは試着室で大層はしゃいでいた。雄太には女児ファッションはわからないので店員さんに聞いて勧められるままに全てを買ったので、とても丁寧に接客されてしまった。


 時期が初夏というのもあるが、クロエにはパンツ系やタイツ、スパッツを多めに買って、スカートの類は少しにした。それは所構わず彼女が雄太に抱きつくからであり、スカートでははしたないことになるからだ。この辺の恥じらいは全くクロエには無いようなので、今後の課題だなと思っている雄太なのであった。


 お昼も新宿でと思ったけれどダンジョン人気からか平日の昼間なのに人出が多くてどこも並んでいるので、田無のメクドナルドでハンバーガーを買うことにした。


 雄太はクロエと手を繋いで人の来ない道の端に立つと、認識阻害の魔法を使ってから田無の駅近くまで瞬間転移した。そして姿を現わしてからメックの店員さんの列に並んだ。


「いらっしゃいませこんにちわー、ご注文はお決まりでしょうか」


「ビックメックセットを三つ、飲み物は全部コーラで。あと持ち帰りで」


 雄太はカードを出すとカードリーダーに触れてピッと音がした。精算が完了したので部屋の脇に逸れてクロエを前に抱いてユラユラしながらしばし待つ。


「ねぇねぇパパ、クロエもピッてしたいよ?」


「んーこのカードは本人以外は使えないんだよ。でも後でお願いしようかな」


「うん!」


 やがていい香りがする大きな袋を店員さんから受け取ると、ついで近くにあるリビン地下一階のスーパーマーケット、西有食料品売り場でも沢山買い物をしてセルフレジの列に並んだ。


「こちら空いてます」


「はい!」


 元気よく返事したクロエに店員さんもニッコリしながら八番の精算機を案内してくれたのでそこに入って買い物籠かごを置く。そして最初に何回かバーコードの通し方を見せてやり説明して、ゆっくり体験させてやった。


「パパ、ピッってするの楽しいね!」


「ん、そうだな」


 買い物が終わるとクロエがレジ袋を持ちたがったので、小さいレジ袋も買って持たせてやると大喜びで振り回した。でも大丈夫、中身は卵などの壊れものではなく菓子の袋詰めだ。駅から自宅までは大した距離でもないので一緒に歩いて帰ると、クロエは終始ご機嫌だった。


 

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