表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/171

嘘でしょう? 殿下が遠征に同行ですか

 腰を据えて話したい方のために小間を開放するのは、基本らしい。誰でも利用できるけれど、廊下に殿下の護衛が立てば皆立ち入りは遠慮する。


待つほどもなくブレンダン殿下がお越しになった。


 水泳実習は、私の都合もあって終了したが、殿下にも別のお仕事があったはず。なぜ今夜ここにいらっしゃるのだろう。


「君に一日会わなかったら、虚しさに耐えられなくなったから」


 そんなはずはない。私が疑いの眼を向けると、

「贈ったドレスを着たところが見たくて」

と「白状」した。


「リボンに隠しボタンをつけるべきだね。危うく恥ずかしい思いをさせるところだった」



 恥ずかしいでは済まない。そんなことになったら、即刻日本へ逃げ戻る。私が決意を漲らせていると、ケント伯が入ってきた。


「ケント、遠征の日程が決まったと聞いた」

「はい」

「凶暴化した獣が増加しているという報告もある」


 表情を険しくしたブレンダン殿下に、ケント伯が無言で同意しかしこまる。


「衛兵隊は獣相手は専門外だ。現地の猟師だけでは足りないかもしれない、他からも集め連れて行く事を一考しては?」



 「毒霧毒沼について外部には伏せたまま」を維持しようと思うなら、猟師を増やすといっても簡単にはいかない。


 ブレンダン殿下の御提案に頷くにとどめる伯は、そう考えているのだろう。

殿下が、うっすらと笑みを浮かべた。


「そこで、だ。私も同行しようと思う」


 そこでって、どこで。私とケント伯は顔を見合わせ同時に目をむいた。


「私の狩りの腕前はケントも知るところだ。そこらの猟師より役に立つ」

「ですが」

「危険です」


ケント伯と私の制止の声が被る。


 殿下の、理解ができないといった類の表情は、あえてのものだと思う。


「女の子を行かせるくらいだ、危険と言っても知れている。男の私が行ってなんの問題もない。それとも、前回の報告にあがっていないだけで、実は危険な事態に遭遇していたのかな?」

「それは……」

「自領だ、同行は当然だろう」


 口ぶりは穏やかながら一歩も引かない構えに、私とケント伯は言葉が継げなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ