情報を制する者は戦いを制す・3
「そう言うことになっているわね、表向きは」
ラドクリフ様の言い方に引っ掛かりを覚えた。
「表向き?」
「あなたが信頼するに値する方かどうか分からないから、賭けのようなものだけれど」
値踏みする視線を隠さずに、
「協力を約束して下さるなら、お話しするわ」
聖女ミナミを見たままの少女だと思われているのだろうが、実は同世代。気圧されるとまではいかない。
「話も聞かないうちから約束できると思われますか」
言い返した私の笑みは、感じが悪いと思う。
「ずいぶん失礼ね」
「任された仕事がありますので、余計な用を増やしたくないのが本音です」
伯爵令嬢に対して無礼極まりない物言いだ。聖女の位付けを聞いていないし、現代日本では身分制度が廃止されている。わきまえのない態度で当然と考える。
空気は張りつめていても、ラドクリフ様も私も社交的な表情を維持しているから、傍目には談笑していると見えることだろう。
「結構。約束はいらない、協力的な姿勢でいてくだされば」
落とし所はここでどう? と美しい眉が弧を描く。
「承知しました。ラドクリフ様、私もいくつかお尋ねしたいことがあります。教えていただけませんか」
「知っていることなら」
ラドクリフ様がゆったりと歩き出す後を、散策に同行するようについて行く。
「私はブレンダン殿下の婚約者候補という事になっているの。数年前までは『殿下のお取り巻き』と呼ばれる令嬢が沢山いたのよ。今は皆さん、別の相手を見つけて結婚なさったわ。実を言えば、私も待たせている相手がいるの。でもそろそろ待ってもらうのも限界」
「お相手は、おいくつですか」
「三十ニ」
たしかに、そろそろご結婚なさりたい頃だ。
すれ違うご令嬢が会釈するのに目礼で答えるラドクリフ様の横顔に問いかける。
「婚約者候補のままでいらっしゃるのは、なぜですか」
「私を残しておかないと、祈りの司祭がブレンダン殿下の婚約者に決定してしまうから。この言い方でお分かりになるわね?」
してしまう?
「そう、殿下は祈りの司祭をお好きではないの」
偶然にも聞きたい話と重なるが、込み入ってきた。まず先に確かめなければならないことがある。
「『祈りの司祭』は、女性なんですね? そしてその方はベールをかぶっている?」
ラドクリフ様は「何をいまさら」という顔をなさった。




