情報を制する者は戦いを制す・1
黄花藤は、字の通りまるで黄色の藤だった。金鎖とも言うらしい。バージニアによれば、紫色の藤とはまったく別のものだ。
王宮の夏の庭と呼ばれる場所でトンネル仕立てにしてあり、殿下が勧めてくださるだけあって、その美しさは圧巻だった。
バージニアの桜色の髪ととり合わせが良い。
「ちょっとした集まり」が何であるのか、ケント伯に聞いていたけれど、華やかさは想像以上だった。
庭に天幕を張り、テラスを開放してのガーデンパーティーに集うはご令嬢ばかり。なぜなら主旨が「独身の王族に独身のご令嬢を引き合わせるため」だから。
ダニエル殿下は既婚者、独身はブレンダン殿下と十代のお従兄弟が数人。
結婚は家格のつり合いが重視されるので「パーティーで見初められて婚約が相整う」なんて無いことくらい、どなたも承知している。
同性の目だけを意識する分、ドレスはより華美になる。
「では、ミナミ。本日は別行動で」
ブレンダン殿下の口にした「祈りの力の強い者」と「ベールの司祭」の事を話すと、バージニアは「とても気になるわ」と呟いた。
きっかけがなく、ケント伯やライリーさんからは聞かないだけか。でも、何か理由があるのだとしたら。
教会関係者に尋ねる前に、他から情報収集することにした。
幸い、本日男性は入れないので、ライリーさんやケント伯もいない。私達にとっては都合がよかった。
「私はあちらから」
お茶会などで顔見知りとなった令嬢に話を聞くために、二手に分かれる。
私がもうひとつ引っかかっているのは、ケント伯とブレンダン殿下の距離感だった。学友というには、よそよそしいと感じる。
不本意ながらも始まった私とケント伯の「偽装恋人関係」は今も継続中。親しくなると、厳しいばかりに見えたケント伯の印象は、ずいぶん変わった。
先日も屋敷の廊下で行きあい、
「厨房で何やら作ったと聞いたから待っていたのだが、俺には?」
良い笑顔で聞かれた。
そこまでご存知なら、見目も味も人様に差し上げるような出来ではなかったとお耳に入っていると思うのに。
「あれは試作です。次に作ったらお持ちします」
バージニアとふたりで、せっせとお腹に片付けた。そして次はない。言葉とは裏腹の決意「二度と作るか」が目に宿ったらしい。
「いつになることやら。気長に待つとしよう」
ケント伯の笑みが大きくなった。
思い出しつつ、やはり私の考え過ぎで、学友といえども王族との適切な距離を保っているだけかもしれないと考え直す。
「あなた、髪に虫が」




