狙われる聖女を守る方法・3
ケント伯は否定しなかった。
バージニアは「ミナミが脱ごうが脱ぐまいが、私達が狙われるのは同じ」と擁護してくれたけれど。
脱ぎっぷりのいい女と思われた私は、バージニアより軽く扱われるだろう。
したことに後悔はないけれど、余計な面倒を招いたことにため息のひとつもつきたくなる。
「今回の旅は近場だからいいとしても、次の遠征は長旅。張り番をおふたりで担うのは、無理なお話ではありませんこと? それに扉から入るとは限りませんでしょう」
ライリーさんが言葉に合わせて窓の外に目をやった。ここは二階で、少し体力のある男性なら壁を登るのは難しいとは思わない。
では、どうしろと? と誰かが言う前にバージニアがよい笑顔を作った。
「わたくし達が『隊長と副隊長とお付き合いを始める』というのは、いかがでしょう」
呆気にとられる私達に、続ける。
「この国は聖女に純潔を求めないと聞きました。求めてくれれば、お役目が済むまでは抑止力になったかもしれませんけれど」
――純潔。少なくとも私は使わない言葉だ。バージニアは日本にひ孫までいて、私も過去にした男女交際は清くはなかった。
現在推定十七歳の私ミナミとバージニアは「清らか」だろうけれど。
「ミナミは聖女としての務めが済めば元の場所へ戻る予定です。私はお認めくだされば、聖職者としてこの国に留まるつもりです。つまり将来性のないお付き合いをしても問題はございません。なにも実際にそういった関係にならなくても、いいのです」
思いがけない意見に、それぞれで考えこむ。
「ミナミとケント伯、わたくしと副隊長で部屋を使えば、みんな寝台で休めますわ」
今後、宿のないところで寝泊まりすることもあると聞いている。テントの外に隊長か副隊長を立たせる、それはいかがなものか。疲れもたまることだろう。
「賛成です。私は熟睡すると多少のことでは目が覚めないので、誰か忍び込んでも気がつくのが遅れます。同じ部屋にいてくだされば安心です」
ケント伯とライリーさんが視線を交わす。
「おふたりは、隣に女性が寝ているからといって、ついでのように手を伸ばしたりはなさいませんよね」
バージニアが何気ないことのように言う。
「神に誓って、無い」
「私も誓えます」
「ならば決まりね」
決まってしまった。
バージニアの提案そのままに、部屋割りは私とケント伯、バージニアとライリーさんとなった。
「ライリーと話してくる。よければ先に寝てくれ」と言われたのを「頼むから先に寝てくれ」と解釈して、私はすぐに横になった。
ひさしぶりに本気で泳いだせいもあり、目を閉じた瞬間に眠りに落ちた。




