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現実の恋人は異世界より押せ押せです・2

最終回です

固まった私に後輩が冷静に告げる。


「年寄りは気が早いですからね、土曜日は『新しく来た先生と受付の右の人が付き合っているらしい』が、今日には『この土日に結婚したらしい。新婚さんだ』になってますよ」 


 そんなに人前でイチャイチャしてたらね。と含みがあるように感じるのは、スルーしておく。


 彼女も地元育ちだから、地域の特性をよく知っている。

午前の『新婚さんのようだ』は、午後には断定『新婚さんだ』に変わる、絶対に。


「仕事! 仕事しましょう! 仕事」


 叫び強引に乗り切りを図る私に、呆れ混じりながらも後輩は「はいはい」と付き合ってくれた。







 衆人環視のもと、階段を降りてきたケント伯は、当然のように私を夕食に誘った。


「今日は術前の面談だけで、オペは入ってない。何ごともなければ定時で上がれる」


 理由を語るのを、待合室にいるお年寄りまでもが「そうか、そうか」と聞いている。受付でする会話はラジオ放送のように、いる人全員が聞いているものだ。


 ここでおかしな話をされたら、地元で生きていけない。

速やかに「はい」とお受けした。






 食べてすぐまた同じ部屋のベッドに連れこまれた。通して借りていませんか、これ。


「何でも上達過程は楽しいな」と同意を求めるのは、止めて欲しい。

そして「これはどう? 少し左よりのここは?」などと、本気で私の反応を探るのも控えて欲しい。


――どちらも恥ずかしくて、言えない。



 腰にバスタオルだけ巻くというスタイルで、見事に発達した背筋を惜しげもなく披露しながら、ケント伯がトートバッグから紙を取り出した。


 雑に片手で受け取ったのに、思わず両手で拝むように持ち直したのは、証人欄に院長と副院長の署名があったから。


「え、結婚!? これ婚姻届ですか?」


 頭のてっぺんから出たような高い声に、ケント伯が顔をしかめる。


「まさか、結婚する気もないのに寝たのか?」


 いやいやいや、あっち世界のご令嬢でもあるまいし「したら結婚」なんて、迫るつもりは……


 顔色を窺うと、信じられないものを見る目つきを向けられた。私に騙され傷ついた的な顔をされては、後ろめたい。ケント伯も瀬名健人さんも生真面目な本質は同じなんですね。



 伯の記入欄も埋まっている、あとは私だけ。皆様揃って達筆で、ここに私が書くのも嫌だけど……

「藤堂書道教室」は、なかったから許されたい、と言い訳などして。


「ケント伯、万年筆はお持ちですか」




 こうして私は「医療事務員と付き合う医者はいない」という持論を、身をもって覆すこととなりました。



 これにて「異世界でプロ聖女とご一緒のダブルヒロインかと思えば、戻ってからも愛されヒロインになってしまったアリスでミナミだったほのかのお話」は、おしまい。


 バージニアがどうしているか?

それは私ではなく、アリスにお問い合わせください☆



これにてミナミの物語は完結です。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。


ご感想・ブックマーク・いいね・評価等々、励みになっております。この後もお待ちしております。


評価をくださろうという読者さま。ぜひとも甘めでお願いいたします☆

もちろん私から皆様への気持は★★★★★です!


続きましては「花売り娘」で番外編を投稿予定です。

その後の「エドモンドとリリーそして仲間達」をお楽しみください。

こちらのご感想・評価もいつでもお待ちしております☆

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