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あなたの笑顔を守りたい

 明日が挙式という日、殿下がご機嫌伺いと称して私のいるコール邸を訪れた。


「明日が待ちきれなくて」


 心持ち緊張気味なのは、私より殿下のほう。おっしゃらなくてもわかる。私が姿を消してしまうのではないかと、不安に思っていらっしゃるのだ。


 どこへも行かないと信じられるようになるまで、どれだけの年数が必要なのだろうと申し訳ない気持ちになる。



「そう言えば、昔私におっしゃった『君にもいいこと』は、絵ではなかったのではありませんか」


疑問に思っていたことを尋ねる。


「そうだね。本当は『幻の恋人〜禁断の情熱』の作者にアリスを主人公にした掌編を依頼していた」


 え! なんですって。それは読みたい。思わずじっと殿下を見つめれば、なぜか苦笑なさる。


「よく考えたら、物語とはいえアリスの衣服を乱し肌を(あらわ)にして『あんな事やこんな事』をさせるのはどうかと思って。それを本人に読ませるのもね」


聞いてぎょっとする。そして新たな疑問が湧いた。


「それ、出来てきたんですか。殿下はお読みに?」

「内容を健全なものに変えてもらった。そうしたら、作者の特徴がなくなって、アリスの読みたがるようなものとは違ってしまった」


私の読みたがるって。なんだか誤解がある。



「それでそのお話は?」

「どこへやったかな。君が戻って必要がなくなったから」

「読みたかったのに……」


申し訳なさそうにされてもまだ残念がっていると。


「お詫びに、明日から早速本に書かれていた事を再現しようか。前は読んであげるだけだったけど、もう実行しても誰にも咎められない」


言って、私の唇を思わせぶりになぞる。



 再現って。あの本は最後まで読めていないですが後半は『濡れ場』続きになるんですよね、きっとね。 


「読み聞かせも実演も、ご辞退申し上げますっ」


 普通、普通でいいんです。言い張る私を見て、殿下が明るい笑い声をあげる。私のせいで曇らせたことがあったのなら、これからの笑顔は私が守ろうと心に決めたのだった。



ひとまずここでアリスのハッピーエンドとなりますが、お話はまだ続きます。

ぜひともブックマークなどして頂きまして、さらに甘めの評価などもお願い致したく。


私から、ここまでお付き合いくださった皆様への気持はもちろん★★★★★です!

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