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異世界への適応適性、見極めは幼稚園で・2

「推薦。この世界に? 聖女として」

「殿下、まだ聖女ではありません。『聖女に成長する可能性を秘めた人材』です」

「あなたの経営する園は、将来有望な聖女候補を輩出する立派な教育機関であったわけだ。それでその人物は、期待に応えたのだろうか」


 ブレンダンの皮肉めいた笑みを眺めて、バージニアが紅茶を一口飲む。


「率直に申し上げまして、見込み違いでした。自己愛が強すぎたのと、急に手に入れた持ち慣れない力に舞い上がり自分を見失ったのでしょうね、笑里さんは。世界が自分に都合のよいものだと思ってしまった」

「実際は『世界』の都合で自分が使われているだけとも知らずに」


 言葉を継いだブレンダンに、バージニアはにこりとした。


「しかし、その後の彼女に目立つ功績はないが国の秩序は保たれている」

「送り出した人材が害になるなんて、あってはならないことです。異変を察知してすぐに、殿下のおっしゃるところの『世界』が動いた。人を見る目のない私に、挽回の機会をくれたのです。それで今度は、真っ直ぐで聡い人物を推薦しました」


紅茶で唇を湿らせるバージニアにブレンダンが問う。


「その子供の名は」

「ご両親は人格者でいらして。とびきり優秀なお子さんでしたよ、健人(けんと)さんは」



「――ケント。それでその人物は何をした」

「私もこちらへ来て知ったことですが、笑里さんに近い場所で、本人はそれと知らずに様々な災厄から国を守護していました。同じ祭壇に向かって祈っていれば、色がついているわけでもなし、誰の力かなんてわかりませんでしょ」 


ブレンダンは身じろぎひとつしなかった。



「これは、私が遠征に来て『ではないか』と推測したことですが。……他者の為に使うべき力を自分の為に使った笑里さんからは、かなりの力が失わました。実感があったはずなのに、彼女は納得しなかった。そこで考えついたのが、大地から活力を吸い上げ失われた力のかわりにすることだった」


「あなたは、詳しく知らずにこの世界へ来たと?」

「その通りです。笑里さんの不始末には責任を感じておりました。それで、寿命のつきるタイミングで、世界を渡ることを志願いたしました」



張り付いた微笑はお互いだ。


「アリスがいきなり消えたのは、誰の仕業?」

「笑里さんの暴走によるものか、ウォルター家を存在させないことで記憶操作が容易くなると『世界』が判断したか。どちらにせよ、私にはわかりかねます」


窓から差す光の加減で、少し日が傾いたと知れる。


「殿下、私からもひとつお尋ねしてよろしいでしょうか」

 

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