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特別な力は正しく使用しましょう・2

「そして、覚醒するという確信のあった祈りの力を利用して私欲を満たそうとした」


バージニアの言葉に部屋が静まり返る。


「結局、得たばかりの力は扱いきれず、竜巻をおさえるだけにとどまったそうです」


 ブレンダン殿下は表情を変えずに黙したまま。ケント伯が口を開いた。


「その『私欲』とは?」

「しかとは存じません。私が質問するというより、司祭が話したい事を話すという感じでしたから」


 とは言うものの、バージニアはかなりのことを上手く聞き出し、取捨選択して話しているのだろうと、私には思われた――多少の改変もして。



 エミリーさんが「体乗っ取り」を図るのは二度目。アリス・ウォルターで失敗し、ミナミ・ミソカイチでの成功を目論んだ。同一人物であるとは知らなかったわけだけれど、なんというか……これもご縁か。


 前回はエミリーさんの不手際で私が異世界へ飛ばされ、今回は殿下の手により阻止された。



 ケント伯によれば、祈りの司祭を記憶している者はひとりも見つからなかったらしい。

 それを聞いた殿下が「やはり、その瞬間にトラバス嬢の事を考えている事が条件」と呟いた。


「私達四人くらいでしょうね。あの時、祈りの司祭、ミナミそして私の事を真剣に考えていたのは」


 バージニアはエミリーさんだけでなく、対峙する私達まで含めて考えているようだった。



「なぜ、人の体を乗っ取る必要が?」


 ブレンダン殿下と違いケント伯はエミリーさんの顔を目撃していない。袋を被せられていたバージニアもだ。


「揉み合ううちにエミリーさんのベールが取れたのですが、お顔は見事に紫色でした。毒沼の泥そっくりの」


 ちょっと思い出すのも怖いくらい。お化粧でも隠れないから、かなりの濃さだと思う。

ケント伯の困惑が深まる。


「それは、どのように考えればいいのだろうか」



 ブレンダン殿下は無言のまま。私にはさっぱりだと、バージニアに任せる。


「推測の域を出ませんが、授かった力を私欲の為に使ったペナルティと考えるのは、いかがでしょうか。階段をあがる時、司祭は早い段階で息切れを起こしていました。内側から蝕まれ内臓がかなり弱っていたのではないかと」


 そう言われてみれば、頚を絞める指の力も弱かった。それで助かったのだけれど。

頚に手をやりネッカチーフに触れると、ちらりとこちらを見た殿下と目が合う。


咎められた気がして、すぐに手を膝へ戻した。


「ご本人がいらっしゃらない今、正解は永遠の謎となりましたわね。これから何を考えても、全ては推測に過ぎません」


バージニアはそう締めくくった。


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