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3.2話「時速5帰路メートル」




僕は、家路につくと、徐ろに、(あおい)(あかね)を見た。

僕の視界は、茜と葵で埋め尽くされていた。

僕の胸は、鼓動を打っていた。ドクドクと、おそらく成長した二人を見て、緊張していた。さっきはあんなに気楽に話せたと言うのに。不思議だ。異性を意識することが、こんなにも不甲斐無いなんて、自分でも自分が可笑しいとさえ思えた。けれど、僕は、葵と茜と話したいんだ。声をかけなければ、気まずい雰囲気のままじゃないか。僕は、意気地なしなんかじゃない。って、僕は誰に言ってるんだ。誰も聞いていやしないのに。自己嫌悪したって仕方がないよね。ここは心を決めて、声をかけるとするか。


「ねえ、葵、茜、今は一緒に住んでるの?」


「そうだよ〜!」


葵が応える。葵はいつも元気ハツラツだ。そんな明るい葵に、僕はいつも力を、勇気を分け与えてもらえていた。懐かしい。あの頃が懐かしい。葵は変わっていないんだ。僕は、本当に幸せものなんだな。


「…そうだよ。」


茜も応えた。茜は、囁き声のような、ヒソヒソとした声で喋ることが多いのだが、音楽が好きで、猫が好きだ。歌を歌うとまるで別人のようで、プロの歌手みたいなんだ。僕は、茜には心から歌手になってほしいと願っている。叶うといいな。


「そっか。僕もいつか行きたいな。サイショウちゃんにも会いたいからさ。」


茜が僕の目を見つめて、少しばかり瞳を潤わせた。


「サイショウちゃんも青空君が来てくれたら喜ぶよ。うふふ…。」


「僕も、猫は好きだけど、ふふ。猫がもし、人型だったら驚くよね。ケモナーって言うのかな。ありえないけど。今度、そんな絵描こうかな。」


「え…青空君、絵描けるようになったの…?」


「すごーい!私も見たいな!今度見せてよ!私の絵とか描ける?」


「えっ、いいけど、僕プロじゃないから特別上手くはないよ。あんまり期待しないでね。」


あれこれ話しているうちに、僕の家、三好家へと辿り着いた。今日は、両親は留守だ。旅行で出掛けている。


「ただいま。」


誰もいないのに、ただいまだなんて僕らしくないよな。三角屋根に僕は住んでいる。僕の家なのにさ、まるで僕の家じゃないみたいだ。肩の力を抜いて、二人と話すだけじゃないか。

おっと、そうだ。絵を見せるんだっけ、最近ライオンの絵を書いたんだけど、これがどうも我ながら傑作で、格好よく描けた気がする。これをまずは、二人に見せたいな。


「お邪魔しまーす!」


「御免下さい…。」


2人は、挨拶すると、僕の家へと上がった。葵は、楽しげだったけど、茜は物怖じとしていた。

僕の家に、三人で居る。僕は3が好きだ。それに、僕の誕生日は3月3日。三好家は、三月生まれが多い。

お父さんもお母さんも3月生まれだ。偶然だろうけど、必然じみてる。まあ、それはいいとして、早速二人に僕の気に入っている。ライオンの絵を見せた。


二人は驚いていた。葵は、速く私の絵を描いてほしいとせがんできたけれど、茜は、サイショウちゃんを書いてほしかったらしい。頼み事を請け負うのは嫌いじゃないけど、二人が、僕の趣味に興味を持ってくれた事が凄く嬉しかった。で、葵が、どうしてもと言うので、試しに葵の絵を書いてみた。たいして時間は掛からなかったけれど、出来はどうなんだろう。自分では、判断しかねた。葵に聞いてみた。


「葵、どうかな?」


「えっ!嘘!きゃは!これ私なの?別人みたいじゃん!青空君!美化しすぎ!もう〜」


葵は、照れ隠し、してるのかな。僕の絵に喜んでくれて、本当に嬉しかった。なんだか、絵を描くモチベーションが上がった気がした。僕は葵に一言告げる。


「喜んでもらえてよかったよ。」


「サイショウちゃんは?青空君…。」


「あぁ、そうだったね…ちょっと待ってね。」


描こうとは思ったんだけれど、モデルがいない。僕の想像力では補えきれないかもしれない。そう実感した僕は、今度、早乙女家に行きたいと思ったので、茜に聞いてみた。


「サイショウちゃん。描きたいんだけど、見ないとかけないから、今度早乙女家にお邪魔していいかな?」


「え…いいよ。来てね。」


「ありがとね。そうだ。葵、茜。今日はどうする。泊まってく?」


「は~い!」


「うん。」


夜を迎えた僕らは、安息の時間を楽しんだ。一緒にご飯を食べ、談話をし、僕は、二人を饗した。そうこうしているうちに、就寝時間が迫っていた。


「もう、寝よっか。」


「私も寝る〜。」


「うん…。」


僕は、二人におやすみと声をかけ床についた。けれど、なかなか眠れなかった。葵と茜は、疲れていたのか、グッスリだった。僕は、またしても二人に見惚れていた。


「綺麗な寝相だなー。」


僕は、思わず一言漏らしてしまった。その、音に気づいたのか茜が起きてしまった。


「う~ん。どうしたの?青空君。眠れないの?」


「茜、一緒に寝よっか。」


「恥ずかしい。う~ん。」


「そっか。おやすみ。」


茜は、寝ぼけているのか、目が半開きだった。そんな彼女を僕は美しいと思えた。綺麗だ。と、言いたくなったけれど、言えなかった。僕は、意気地なしかもしれない。いつか、いつか、再び、気持ちを伝えたい。僕は目を閉じた………。



次回まで、どうぞよしなに。

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