表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は異能で溢れているが、それがどうした  作者: 猫も犬も猫目である
8/34

舞の正体?

そうして放課後を迎えた。

俺は自分のカバンを持ち、早足で教室から出て行く。どうにか無事に放課後まで何のハプニングもなく、終えることができた。

どうやって、あの窮地を切り抜けたのかと言うと――。

扉の前で舞に追い詰められたとき、背後にいた圭と萌花が部長を押し倒し、どうにか逃がしてくれた。

そして俺は、授業中だということも気にせず一目散に廊下を走り、教室へと避難していた。

そして教室で舞の恐怖でガタガタ震えていると、携帯に芹からメールが届いた。

『探索部所属の芹です。

部長はこっちで押さえておくので今日はできるだけ早くきたくしてくださ――』

 メールは急いで打ったのだろう。

最後まで打てておらず、途中で送られたようだ。

しかしアドレスを教えてないに、いったいどこで知ったんだよ……。 

詳しくは考えないようにしよう!

それよりも今日は忠告通りさっさと帰った方が良さそうだな。


そう思っていると、また芹からメールが届いた。

『六時からのアニメ録画お願いします。PS.明日の放課後、部室へ来てください』

それには部員たちのアドレスが添付されていた。

アニメはともかく、明日も行かなきゃならないのか。

今日逃がしてもらったこともあるけど、勝手に入部させられてるみたいだし部長の舞が教室に突撃することも考えられるな。……大人しく行ったほうがいいか。

その日は明日への活力を奪われながら家路についた。


翌日の放課後。

部室の前まで来ていた。

扉の向こうから、とてつもないプレッシャーが押し寄せてくる

。しかしここで帰ったら、また昨日みたいに強制連行されかねない。

意を決して扉を二度ノックし声をかける。

「失礼します、二年の九重です」

すると勢いよく扉が開かれた。

「ここはトレイじゃありません!!」

無い胸を張りながら舞が吠えた。

「いきなりなんですか?」

「今どきの子はノックのマナーも知らないとは嘆かわしいかぎりです!」

そう言う舞は腰に手を当てプンスカと怒っている。

「マナーですか?」

「そうですよ。ノック二回はトイレ用なんですからね。そして三回が親しい相手、四回が国際標準マナーなのです!」

マナーってそんな種類の意味があることすら知らなかった。

一般常識みたいに言ってるけど、これって雑学の部類に入るんじゃないかな。

「ビジネスの場では三回になることもありますが、二回は絶対ダメですよ」

言いたいことは言い終えたのか、舞は俺の顔をジッと見上げた。

「て、そんなことより岸部太陽君」

「……なんでしょうか、部長さん」

見られているだけなのに何とも言えない威圧感を感じて、体が震えそうになる。

見られているだけなのに得体の知れない恐怖が起きてくる。

まるで生きるのを放棄してしまいたくなるほどの圧倒的な生き物が目の前の獲物を観察しているような……。

「さっさと席に座ってください。萌花が来たら部活始めますから」

「え、あ、はい。了解です」

舞はスタスタ自分の席へ歩いていった。

舞が離れてから胸を撫で下ろし、俺は空いていた圭の隣の席に腰を下した。


さっきの俺の反応が面白かったのか、圭が苦笑しつつ話しかけてきた。

「お疲れ様。大丈夫か? なんだか部長の機嫌が悪いみたいで八つ当たりされてたけど」

「本能的に意識を手放したい衝動に駆られた……」

「はは、手放さないで正解だな。変に無抵抗だと遠くへ捨てられかねん……。それはもう本当に遠くへな……」

どこか遠くを見る圭の瞳には、悲壮感じみたものが漂っていた。

捨てられた経験でもあるのだろうか。

しかし圭の悲壮感より気になることがある。

昨日からずっと感じていることだ。

つまりそれは、

「部長って何者なんですか?」

愛くるしい外見とは裏腹に圧力というかオーラじみたものがある。それもありえないくらい凶悪なのが。

この学校の生徒は全員、何かしら異質に感じる。

けれど舞はそんなのとは比較にならないほど圧倒的なのだ。

蟻と像どころじゃない。

「舞か。まぁ別に隠してることじゃないしな」

そう呟き、圭は真面目な顔で口を開いた。

「お前、魔人って知ってるか?」

「確か産まれながらにして極端に魔力が強い人だったよな」

産まれながらに強い魔力を持っている人は魔人と呼ばれている。

魔力の量は産まれながらに、ある程度は決まっている。

成長すれば自然に多くなり、鍛えれば増えもする。

しかし強大な魔力を持って産まれる魔人はその多すぎる魔力に体が耐えられ無いことがほとんどです。

成人まで生きられる人は世界で数える程しかいないそうだ。

「そうそう。そんで舞はその魔人の中でも、さらに特殊な存在なんだよ」

「特殊な存在って?」

「昔、幼少の舞が強大な魔力を抑えるために研究施設に通っていたときのことだ」

その研究施設は様々な研究をしていたらしい。


ある日、幼かった舞は研究による長い検査に飽きて探検と称して研究室を抜け出した。

そしてある部屋に入ったそうだ。

そこは錬金術等の研究施設でエリクサーや賢者の石といった霊薬、万能薬が研究開発されていた。


幼かった舞は、そこにあった賢者の石をお菓子と思い食べてしまったらしい……。

賢者の石は黄金を生み出す魔法の石であり不老不死の霊石である。


それを体に取り込んだ舞は強大な魔力に耐えられるようになった。

さらに不死身に近い肉体の手に入れたそうだ……。


なんとも食い意地の張ったお子様だ。

子供はなんでも口に入れると言うが度を越している。

それが結果的に自分を良かったのかは置いておいて。


「そのおかげで魔力に負けない肉体、つまり超回復する体を手に入れたってわけだ」

「魔人の魔力に不死の肉体ってとこか……」

唖然とする俺を他所に圭があっけらかんとした顔で言う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ